戌にまつわる昔話

◯花咲じいさん

むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。  二人は子どもがいなかったので、シロというイヌをとても可愛がっていました。  ある日、シロが畑でほえました。
「ここほれワンワン、ここほれワンワン」
「おや? ここをほれと言っているのか。よしよし、ほってやろう」
 おじいさんがほってみると、
「ややっ、これはすごい!」
 なんと、地面の中から大判小判がザクザクと出てきたのです。  この話を聞いた、となりの欲張りじいさんが、
「わしも、大判小判を手に入れる。おめえのシロを、わしに貸してくれや」
 欲張りじいさんは、シロを無理矢理畑に連れて行きました。  そして、嫌がるシロがキャンキャンないたところをほってみると、くさいゴミがたくさん出てきました。
「この役立たずのイヌめ!」
 怒った欲張りじいさんは、なんと、シロを殴り殺してしまったのです。  シロを殺されたおじいさんとおばあさんは、なくなくシロを畑にうめてやると、棒(ぼう)を立ててお墓を作りました。
 次の日、おじいさんとおばあさんがシロのお墓参りに畑へ行ってみると、シロのお墓の棒が一晩のうちに大木になっていたのです。  おじいさんとおばあさんは、その木で臼(うす)を作って、おもちをつきました。  すると不思議な事に、もちの中から宝物がたくさん出てきました。  それを聞いた、欲張りじいさんは、
「わしも、もちをついて宝を手に入れる。おめえの臼を、わしに貸してくれや」
と、臼を無理矢理借りると、自分の家でもちをついてみました。  しかし出てくるのは石ころばかりで、宝物は出てきません。
「いまいましい臼め!」
 怒った欲ばりじいさんは臼をオノでたたき割ると、焼いて灰にしてしまいました。  大切な臼を焼かれたおじいさんは、せめて灰だけでもと、臼を焼いた灰をザルに入れて持ち帰ろうとしました。
 その時、灰が風に飛ばされて、枯れ木にフワリとかかりました。  すると、どうでしょう。  灰のかかった枯れ木に、満開の花が咲いたのです。  おじいさんは、うれしくなって。
「枯れ木に花を咲かせましょう。パアーッ」
と、言いながら次々に灰をまいて、枯れ木に美しい花を咲かせました。

◯ズルタンじいさん

グリム童話 

 むかしむかし、ズルタンという、年取ったイヌがいました。
 ある日、ズルタンは飼い主のお百姓(ひゃくしょう)さん夫婦(ふうふ)が、ヒソヒソ話をしているのを聞きました。
「あのイヌは歯が一本もなくて、泥棒もつかまえられない。  もう役に立たないから、殺してしまおう。  むだな飯を食わせるほど、家は金持ちじゃないからね」
 ズルタンは悲しくなって、仲の良いオオカミに会いに行きました。
 すると、オオカミが言いました。
「良い考えがある。  明日、おれがあんたの飼い主の子どもをさらうから、追いかけてくるんだ。  森の中で、あんたに子どもをわたしてやるよ。  飼い主はあんたがオオカミから子どもの命を救った思って、きっと大事にしてくれるようになるぜ」
 オオカミの計画は、とてもうまくいきました。  お百姓さんもおかみさんもズルタンを死ぬまで可愛がり、大事にするとちかったのです。
 すっかり楽な暮らしになったズルタンに、今度はオオカミがこんな事を言いました。
「あんたの飼い主のヒツジをさらうけど、この前助けてやったんだから見逃してくれるよな」
「それはだめだ。ほかの事ならともかく、ヒツジを守るのはワシの仕事だ」
 オオカミはズルタンに、腹を立てました。
「よし、明日森に来い。決闘(けっとう)だ! 思い知らせてやるぞ!」
 だけどオオカミと年寄りのズルタンでは、オオカミの勝ちに決まっています。  そこでオオカミは、助太刀(すけだち)を一人連れてきてもいいと言いました。
 でもズルタンの助太刀なってくれるのは、同じ家に住んでいる三本足のネコしかいませんでした。  ネコは歩くと足が痛いので、尻尾をピンと高く立てていました。  オオカミはイノシシに助太刀を頼み、森の中で待ちかまえていました。  ところがネコのまっすぐな尻尾が長い剣に見えたので、びっくり。
「あいつを甘く見ていたな!」
「だがネコのやつ、いやにゆっくりだな。きっと石をひろいながら近づいてきているんだ」
 怖くなったオオカミとイノシシは、草のしげみにかくれました。  しかしイノシシの耳がしげみからはみ出て、ピクピクと動いています。
「あっ、ぼくの大好物のネズミだ!」
 ネコが大喜びでイノシシの耳にかみつくと、イノシシはひめいを上げて逃げていきました。  オオカミはビクビクかくれているところを見られて、とてもかっこ悪く思いました。
「歯が一本もなくても、あんたは強いイヌだ。  もう、あんたの家のヒツジをおそうことはしないよ」
 ズルタンとオオカミは、また仲直りしました。

◯忠犬ハチ公

東京都の感動話

 東京の渋谷駅の待ち合わせ場所の定番として、秋田犬ハチ公の銅像があります。
 台の上に座って、じっと駅の改札口を見ている犬の銅像です。
 このお話しは、その銅像になったハチ公のお話しです。

 むかし、ハチ公は東京大学農学部の教授だった上野英三郎という博士の家の飼い犬で、子犬の時に博士の家にもらわれてきたのでした。
 博士はハチ公を大変可愛がり、ハチ公も博士が大好きです。
 博士が大学に出かける時、ハチ公は家の近くの渋谷の駅まで毎日必ず博士のお供をするのです。
 そして夕方になり博士が帰って来る時間になると、また駅へ博士を迎えに行くのです。
 時々、博士が帰って来るのが遅くなる日がありましたが、ハチ公はどんなに遅くなっても必ず駅の前で待っているのです。
「ハチ公。こんな所にいては邪魔だよ」
 駅の人に怒られる事もありましたが、ハチ公は吠えたり噛みついたりせず、博士が帰って来るのをおとなしく待っているのでした。
 そんな平和な日々は、一年半ほど続きました。
 でも、1925年5月21日、ハチ公に送られて大学へ行った博士が、突然倒れてしまったのです。
 みんなはすぐに博士を手当てをしましたが、博士は助かりませんでした。
 博士は死んでしまったのですが、ハチ公にはその事がわかりません。
 ハチ公は夕方になると博士を迎えに駅までやって来て、そして博士を一晩中待って、朝になると家に帰り、また夕方になると博士を迎えに駅までやって来るのです。
 そのハチ公の姿を見た人たちは、目に涙を浮かべました。
「ハチ公、かわいそうになあ」
「死んだ博士を、毎日待っているなんて」
 こうして帰って来ない博士をハチ公が迎えに行く日々が七年続いた時、ハチ公の事が新聞にのりました。
 するとそれを知った多くの人が、ハチ公を応援しました。
 駅の人も、雨の降る日などは、ハチ公を駅の中で寝かせてあげました。
 そしてとうとう、十年が過ぎました。
 すると駅の人や近くの人が集まって、感心なハチ公の銅像をつくる相談をしました。
 銅像が完成したのは、ハチ公が博士を待つようになってから十二年目の事です。
 その頃ハチ公は、よぼよぼのおじいさんになっていました。
 毎日毎日、弱った体で帰って来ない博士を迎えに行くのは大変な事です。
 でもハチ公は頑張って頑張って、博士を迎えに行きました。
 そして銅像が出来た次の年の1935年3月8日午前6時過ぎ、十三才になったハチ公は帰って来ない博士を待ち続けたまま、自分の銅像の近くで死んでしまったのです。

 でも、悲しむ事はありません。
 天国へ行ったハチ公は、大好きな博士と一緒に暮らしているのですから。

◯欲張りなイヌ

イソップ童話

むかしむかし、ある国に、とても立派な一人の王さまがいました。  その王さまには、三人のお姫さまがいます。  上の二人のお姫さまは、おしゃれ好きでわがままでしたが、一番下のお姫さまはお父さん思いのやさしい娘です。
 肉をくわえたイヌが、橋を渡っていました。
 ふと下を見ると、川の中にも肉をくわえたイヌがいます。
 イヌはそれを見て、思いました。
(あいつの肉の方が、大きそうだ)
 イヌは、くやしくてたまりません。
(そうだ、あいつをおどかして、あの肉を取ってやろう)
 そこでイヌは、川の中のイヌに向かって思いっきり吠えました。
「ウゥー、ワン!!」
 そのとたん、くわえていた肉はポチャンと川の中に落ちてしまいました。
「ああー、ぁぁー」
 川の中には、がっかりしたイヌの顔がうつっています。  さっきの川の中のイヌは、水にうつった自分の顔だったのです。
 同じ物を持っていても、人が持っている物の方が良く見え、また、欲張るとけっきょく損をするというお話しです。



◯犬が片足をあげておしっこをする理由

 むかしむかし、犬には足が三本しかありませんでした。
 三本足では歩きにくいので、犬は神さまにお願いしました。
「神さま、どうか足をもう一本増やしてください」
 すると神さまは、
「確かに、三本足では何かと不自由だな。しかし、お前の足を増やすとなると、その代りに何かの数を減らさなくてはならんのじゃ。世の中に、足の数が減っても良い物とは?」
と、腕組みして考えました。  そして、ふと良い考えを思いついて言ったのです。
「そうじゃ、香炉(こうろ)は歩かなくても良いのに、足が四本あるぞ。よし、香炉から足を一本取って、それをお前にやろう」
 それから香炉は三本足になって、犬は四本足になりました。  でも、いきなり四本足になった犬は、おしっこをするときにおしっこを足にかけてしまいます。
 そこで犬は、
「せっかく神さまからもらった足を、おしっこで汚しては申し訳ない。これからは片足をあげておしっこをしよう」
と、おしっこをする時は、片足をあげるようになったそうです。



◯フランダースのイヌ

ウィーダの童話

ある夏の日の事、お父さんもお母さんもいないネルロは、おじいさんと草むらですてイヌを見つけました。  
かわいそうに思ったネルロはイヌを家へ連れて帰り、パトラッシュと名付けました。
 パトラッシュはすぐにネルロになつき、二人は兄弟のように仲良くなりました。

 ネルロとおじいさんは村のお百姓(ひゃくしょう)さんから牛乳(ぎゅうにゅう)を集めて、十キロ先のアントワープという町まで売りに行く仕事をしていました。
 その仕事はとても大変な上に、あまりお金にはなりません。  だからネルロとおじいさんはスープを一杯飲むのがやっとという、とても貧しい暮らしをしていました。

 ネルロが七歳になった時、おじいさんが病気になりました。
 それからはネルロとパトラッシュで重い牛乳を乗せた荷車を引いて、アントワープまで行くようになりました。
 大変な道のりですが、ネルロにはアントワープの町へ行くのが楽しみでした。
 それというのもアントワープの町にある大きな教会には、ルーベンスという有名な人の絵がかざってあるからです。  でも残念(ざんねん)な事に、その絵にはいつも白い布がかかっていて、お金をはらわないと見る事は出来ません。
 しかしネルロはルーベンスの絵のそばにいられるだけで、うれしかったのです。  ネルロは絵を見たりかいたりするのが大好きで、大人になったら絵かきになろうと心に決めていました。

 ネルロが十五歳になったある日、ネルロはかわいらしくてやさしい友だちのアロアを、ぜひえがきたいと思いました。
 アロアは丘の上の風車(ふうしゃ)のあるお屋敷に住む、お嬢(じょう)さんです。
 アロアのお父さんは貧しい牛乳売りのネルロがアロアと仲良しなのをいやがっており、なんとかして二人を引きはなしたいと思っていました。

 ある日、ネルロがアロアの姿をえがいてくれるというので、アロアはおしゃれをして出かけました。
 けれどネルロが持っていたのは、板きれと黒い木炭(もくたん)だけです。
「ネルロ、絵の具でえがくんじゃないの?」
「うん、ごめん。これしか持っていないんだ」
「・・・そう」
 アロアはちょっぴりざんねんがりましたが、でもパトラッシュといっしょにえがいてもらった絵はとてもすてきで、アロアもとても気に入りました。
(よかった、アロアが気に入ってくれて。でも今度は、ちゃんとした絵の具でえがいてやりたいなあ)
 その日からネルロは、お昼ごはんをがまんして、たまったお金で紙と絵の具を買いました。
 ネルロは、パトラッシュに言いました。
「パトラッシュ、ぼくはね、いつか人の心をつかむ、すばらしい絵かきになるんだ。  その時にはね、ぼくはみんなに言うよ。 『ぼくはパトラッシュに助けられて、絵かきになれました。一番大切な友だちはパトラッシュです』 って」
 パトラッシュは、うれしそうにネルロを見上げました。

 ある日、クリスマスイブの子どもの絵の展覧会(てんらんかい)の事を知ったネルロは、夕ぐれ時に切りかぶにすわって一休みする木こりのおじさんの絵を一生懸命(いっしょうけんめい)にえがきました。
 その展覧会で一等になれば、二百フランという夢のようなお金がもらえるからです。

 クリスマスイブの日、ネルロは心をこめてえがいた絵を荷車(にぐるま)につんで、パトラッシュといっしょにアントワープの展覧会の会場へ出かけました。
 ほかのみんなは絵の上に上等な布をかけて、受付(うけつけ)に渡しています。  でもネルロの絵にはボロボロの布がかかっているので、ネルロははずかしそうに下を向きながら受付の女性にそっと手渡しました。
 ネルロは雪のつもった町ヘ、パトラッシュと出ました。
「パトラッシュ、もし一等になったら、お腹いっぱい、あったかいスープをあげるからね」
 その時、誰が落としたのか、雪の中にお人形が落ちていました。
(誰のかがわかる日まで、アロアにあずかってもらおう)
 ネルロとパトラッシュは、アロアのお屋敷へ行きました。  そしてネルロが、展覧会に出品した事を話すと、
「わあ、ネルロならきっと、一等をとるわ!」
と、アロアは喜んで、そのお人形をあずかってくれました。  けれどその夜、大変な事にアロアのお屋敷が火事になったのです。
「火をつけたのは、ネルロだろう!」
 アロアのお父さんは、きらいなネルロをうたがいました。  そして悲しい事は、まだ続きました。
 新しい牛乳屋が来たので、ネルロの仕事がなくなってしまい、そのうえ、病気のおじいさんが死んでしまったのです。
 おじいさんのおとむらいのすんだ夜、家主(やぬし)がやって来て言いました。
「明日の朝、ここを出て行け!」

 朝が来ると、ネルロとパトラッシュは雪の降る外へ出ました。
 そしてアントワープの町へ、子どもの展覧会の一等の発表(はっぴょう)を見に行きました。
「パトラッシュ、一等を取って二百フランもらったら、ぼくたちの住む家をさがそうね。  それからまきを買って、暖炉(だんろ)にくべて火をつけようね。  そのあとは、お腹いっぱい食べようね」
 ネルロもパトラッシュも、このところ水しか飲んでいなかったのです。 (必ず、一等をとってみせる! 一等を取らないと、ダメなんだ!)
 でもネルロの夢は、すぐ消えてしまいました。
 一等を取ったのはネロではなく、あまり上手ではないけれど色々な色の絵の具をたくさん使ってえがいた、海の絵だったのです。
 ネルロとパトラッシュは、展覧会の会場を重い足どりで出ました。
「ああ、これからどうしたらいいのだろう? もし、お金があったら。うん? どうしたの、パトラッシュ。・・・あっ!」
 なんとパトラッシュが、雪の中にうもれていた財布(さいふ)を見つけたのです。
 ネルロがその財布を開けてみると、中には金貨がたくさん入っていました。  ネルロはまわりを見回しましたが、誰も見ている人はいません。
「これだけあれば家をかりられるし、パンもたくさん買える。たくさんの絵の具も買う事が出来るぞ」
 ネルロはその財布を服の中にかくそうとしましたが、ふと、その財布に見覚えがある事に気づきました。
「これは、アロアのお父さんのお財布だ」
 ネルロは、アロアのお屋敷へ急ぎました。  そしてアロアのお母さんに財布を渡すと、パトラッシュを家の中に押し込んで言いました。
「この財布を見つけたのは、パトラッシュです。
 ごほうびに、何かうんとおいしい物を食べさせてやってください。  そして出来たら、ここでかってやってください」
 ネルロはそう言うととびらをしめて、雪の降る夜の中へかけていきました。
「ああ、待って、ネルロ!」
 アロアとお母さんがネルロを追いかけましたが、ネルロの姿はもう見えませんでした。

 雪の町でずっと財布を探していたお父さんは、アロアからネルロの事を聞いて目に涙をうかべました。
「わしが悪かった。あんなにいい子を、きらったりして」

 お腹がペコペコのネルロには、もう歩く元気もありませんが、最後の力をふりしぼってアントワープの教会のルーベンスの絵の前へ行きました。
 冷たい床に座り込んだネルロは、ふと、肩にあたたかい息(いき)を感じてふりむきました。
「パトラッシュ! 追いかけてきたのかい」
 ネルロは、パトラッシュの首をだきしめました。
「ありがとう、パトラッシュ。  ぼくたちは、ずっといっしょだね。  ごめんよ、置いて行ったりして。  パトラッシュ、もう離れるのはやめようね」
 すると月明かりが教会にさしこみ、あたりが明るくなりました。  雪がやんで、月がかがやき出したのです。
「あっ!」
 ネルロは、思わずさけびました。  ルーベンスの絵が、見えるのです。
 さっきパトラッシュが暗やみの中で、布を引っかけて落としたからでした。
 ルーベンスの絵は、キリストの絵でした。
「パトラッシュ、ぼくはとうとう見たよ! ああ、なんてすばらしいんだろう!」
 ネルロはうれしくてうれしくて、涙をポロポロとこぼし、パトラッシュの首をあたたかくぬらしました。
「パトラッシュ、ぼくはもう疲れたよ。少し眠ってもいいかい?」
「ワン」
 ネルロとパトラッシュは、しっかりと抱きあったまま目を閉じました。

 あくる朝、牧師(ぼくし)さまがネルロとパトラッシュを見つけました。
「もし、どうされました?  こんなところで寝ていては、かぜをひきますよ。  もし、・・・あっ!」
 ネルロとパトラッシュは抱きあったまま冷たくなっており、二度と目を開く事はありませんでした。
 そこへアロアとお父さんとお母さん、それに三人の大人がかけ込んで来ました。
 アロアはネルロにかけよると、ワーッと泣き出しました。
「ネルロ、お父さまが、ネルロの事をわかってくださったのよ。  今日から、いっしょに暮らせるのに。  ・・・どうして、どうして天国へ行ってしまったの」
 三人の大人たちは、子どもの絵の展覧会で審査員(しんさいん)をした人たちでした。
 審査員たちは、ネルロに涙を流してあやまります。
「気の毒な事をしてしまった。ネルロの絵は受付の手違いで、他の場所に置かれていたんだ」
「とてもすばらしい、木こりの絵だったよ。われわれは、もう一度審査をやりなおしたんだ。そしてきみの絵が、一等に選ばれたんだよ」
 天国へめされたネルロとパトラッシュは、その言葉を聞いているかのようにやさしくほほ笑んでいました。



◯犬が寒がらない理由

岡山県の民話

むかしむかしの大むかし、火なし村という、火のない村がありました。
 この火なし村の南には火を使っている村があって、そこでは火が消えないように一日中たき火をしていました。
 そのたき火のまわりには見張りの男が何人もいて、もしよその村人が火を取りにきたら捕まえて殺してしまうのです。

 さて、火なし村には、とても親思いの娘がいました。
 年を取った両親にあたたかい物を食べさせてやりたいと思い、娘は村人が止めるのも聞かずに犬を連れて南の村に向かいました。
 南の村では山の空き地でたき火をしていて、そのまわりには何人もの見張りの男が立っています。
 娘は岩の後ろに隠れて、しばらく様子を見ていました。  するとそのうちに、 「ああ、腹が減ったな。そろそろ飯にしよう」
と、見張りの男たちが近くの小屋に入っていきました。
(今だわ!)  娘は火のついた木の枝を数本つかんで、かけ出しました。
 そしてようやく山の途中まできた時、後ろから男たちの声が聞こえてきました。
「誰かが火を盗んだぞ! 捕まえて殺してしまえ!」
 娘は急ぎましたが、追っ手の声はどんどん近づいてきます。
(もうだめわ。このままでは捕まってしまう)  その時、一緒に走っていた犬が娘の顔を見て、火のついた枝をくわえさせろと口を開けました。
 娘は火のついた枝を一本、犬の口にくわえさせました。
「お願い、これを父母のところへ届けてね」
 でも犬は娘に早く逃げろと首をふり、そのまま追っ手の方へ走っていきました。
 犬は娘を助けるために、自分がぎせいとなったのです。
「ありがとう」
 娘はお礼を言うと、のこりの火のついた枝を持ったまま山道をかけおりていきました。

 やがて見張りの男たちは、火のついた枝をくわえている犬を見つけました。
「何だ、火を盗んだのは犬か。しかし犬とはいえ、火を盗むものは殺す!」
 男たちは、犬をなぐり殺してしまいました。

 娘は走りに走って、やっと自分の村へたどり着きました。
「これが、火というものか」
「ありがたい、ありがたい。これからはわしらの村でも、火を使えるぞ」
 この時から火なし村でも、火を使った生活が始まったのです。

 さて次の日、娘が山道へもどってみると、そこには殺されて冷たくなっている犬が転がっていました。
「ごめんね、ごめんね」
 娘はその犬を抱きかかえて村へ戻ると、犬のお墓を作りました。
 そして手を合わせながら、神さまにお祈りしました。
「この犬のおかげで、わたしたちの村でも火のある生活が始まりました。どうか神さま、犬の冷たくなったからだを温めてください。そして天国へお送りください」
 するとその願いが神さまに通じたのか、その犬は無事に天国へむかえられた上に、地上にいる全ての犬のからだがポカポカと温かくなり、どんなに寒い日でも平気になったという事です。



◯鈴をつけたイヌ

イソップ童話

あるイヌが、いきなり人に噛み付く癖があったので、飼い主は人々が注意する様に、そのイヌの首に鈴(すず)を付けました。
 ところがそのイヌは、鈴を付けて得意になり、鈴を鳴らしながら広場を飛び回りました。
 それを見て、一匹の年取ったイヌが言いました。
「なんでそんなに得意になっているのだ?  鈴を付けているのは、あんたが偉いからじゃあなくて、あんたが悪い奴だって事を、みんなに知らせる為なのに」

 乱暴な人が着飾っても、心の汚さをひけらかす様なものです。



◯字の読めぬ犬

犬の大嫌いな男が、友だちに聞きました。
「なあ、犬がいても平気で通れる方法はないだろうか?」
「そいつは、簡単な事さ。  手の平にトラという字を書いておいて、犬がいたらそいつを見せるんだ。  すると犬は、おっかながって逃げるから」
「ふむふむ。そいつは、良い事を聞いた」
 男はさっそく、手の平にトラという字を書いて出かけました。
 しばらく行くと、向こうから大きな犬がやってきます。
(よし、さっそく試してやろう)  男は手の平を、犬の前に突き出しました。
 すると犬は一瞬びっくりしたものの、大きな口を開けてその手をガブリと噛んだんです。

 次の日、手を噛まれた男が友だちに文句を言いました。
「やい、お前の言う様に、手にトラという字を書いて犬に見せたが、ほれこの様に、食いつかれてしまったわ」
 すると友だちは、こう言いました。
「やれやれ、それは不運な事だ。おそらくその犬は、字の読めぬ犬だろう」



◯ごちそうに招かれたイヌ

イソップ童話

ある人が、友だちをもてなすつもりで、ごちそうのしたくをしていました。
 その人の飼っているイヌは、自分も友だちのイヌに、
「きみ、ぼくのところへ、ごちそうを食べにきたまえ」 と、いって、招待しました。
 招かれたイヌは、ほくほくしてやってきました。
 そして、いっぱいに並んだごちそうを見て、心の中で、
(すごいなあ。ぼくの為に、こんなうまそうな物が出てる。夢の様だなあ。よーし、腹いっぱいどんどん食べて、あしたは一日中、腹がへらないようにしてやろう)
と、考えながら、しきりに尻尾を振っていました。
 友だちのイヌを信用しきっているので、全部、自分の為のごちそうだと思っていたのです。

 その家のコックさんは、さかんに尻尾を振っているイヌを見つけたとたん、足をつかまえて窓の外にポンと放り出してしまいました。
 イヌはキャンキャン鳴きながら、逃げ帰りました。
 その途中で、ほかのイヌたちに会いました。
 中の一匹が、 「きみ、ごちそうはどうだったの?」
と、聞きますと、このイヌは本当の事をいうのが恥ずかしいので、
「いやあ、お酒を飲み過ぎて、すっかり酔っぱらってしまってね。どこからどうやって出てきたか、覚えていないくらいなんだ」
 このお話しは、自分にはお金がないのに、ほかの人をあてにして、気前の良い事をいう人を信用してはいけないと教えています。



◯犬ぼえの森

秋田県の民話

むかしむかし、サダ六という腕の良い猟師がいました。
 猟師たちはそれぞれ自分たちの狩り場を持っていて、他人の狩り場で猟をする事はありませんでした。
 しかしサダ六はとても腕が良かったので、特別によその土地で猟をしてもよいと言う許可書を、将軍さまからもらっていたのです。
 ある春の事、サダ六は犬のシロを連れて猟に出ました。  シロはとても勇敢な犬で、相手がクマであっても果敢に立ち向かっていきます。
 サダ六は、あっちの山、こっちの山へと獲物を探し回りましたが、今日はまだ一匹も獲物が見つかっていません。
「まあ、そんな日もあるさ」
 サダ六が帰りかけようとすると、突然シロが、  ワンワンワンワン! と、吠えたてて、やぶの中からカモシカを追い出しました。
「おおっ、これは大物だ!」
 サダ六とシロはカモシカを追いかけましたが、カモシカもなかなか手強く、いつの間にかサダ六たちは、隣りの国の南部領に入っていたのです。
「よし、やっと追い詰めたぞ!」
 サダ六は鉄砲のかまえると、  ズドーン! と、一発でカモシカを仕留めました。
 するとその音を聞きつけた南部の猟師たちが、怖い顔でやってきました。
「おい、見かけねえ奴だが、お前はこの国の者じゃねぇな」
「ああ。わしは、サダ六という猟師だ。獲物を追ってここまで来てしまったが、将軍さまから、どこの国で猟をしてもよいというお許しをもらっておるぞ」
 サダ六はそう言って腰に手をやりましたが、お許しの巻物がありません。
「しまった。家に忘れてきた」
 そこでサダ六は捕まって役人の取り調べを受けた結果、明日の夜明けに処刑と決まったのです。
「くそー! あの巻物さえあれば」
 サダ六が悔し涙を流していると、どこから入ってきたのか、シロが牢屋に現われました。
「おおっ、シロー! 頼む、夜明けまでに家から巻物を持ってきてくれー!」
 サダ六が言うと、シロはその言葉が分かったのか、すぐさま牢屋を飛び出して行きました。
「シロー、頼むぞ!」
 それからシロは雪道をひた走りに走り、山を越え、谷を越え、十里の山道を走り続けました。
 一方、サダ六の家では、女房が帰ってこないサダ六の身を案じて、眠らずにじっと待っていました。
 そこへシロのワンワンほえる声が聞こえたので、女房があわてて戸を開けると、シロが飛び込んで来ました。
「シロー、何があったの? あの人は?」
 シロは神棚の上にある巻物に向かって、狂ったようにほえ続けます。
 それを見て、ハッと気がついた女房は、すぐに巻物を取るとシロにくわえさせました。
「シロ、お願いね!」
 シロは再び隣りの国へ、休むことなく走り続けました。
 だんだん空が白んできて、サダ六が処刑される時間が近づいてきます。
 シロの足から血が出てきましたが、シロはかまわず走り続けました。
 そしてついに、サダ六の牢屋へとやってきたのですが、もうサダ六はいません。
 でもシロはあきらめず、サダ六のにおいをたよりに処刑場へと急ぎました。
 そして処刑場を見つけると、シロは処刑場へと飛び込みました。
 しかしそこにいたのは生きたサダ六ではなく、もう冷たくなったサダ六でした。
 シロはサダ六のなきがらを引きずって、処刑場を出て行きました。
 役人がそれを止めようとしましたが、牙をむくシロの迫力に、手を出すことが出来ません。
 やがてシロはサダ六の亡きがらを峠の森まで運ぶと、南部の国の方を向いて、
 ウワォーン! ウワォーン!  ウワォーン! ウワォーン!
と、何度も何度も、遠ぼえを続けました。
 それからというもの、村人たちはこの森を『犬ぼえの森』と呼ぶようになったのです。



◯イヌの家

イソップ童話

冬の間、寒さの為に身を縮めて丸くなっていたイヌが、家を作ろうと思いました。
 そのうち春になって、長々と大の字になって寝る事が出来る様になりますと、自分の体が予想以上に大きい事が分かったので、これほど大きい家を作るのはめんどうだし、今は寒くない為、家を作るのを止めてしまいました。

 このお話しのイヌの様に、めんどくさがり屋のなまけ者は人間にも多くいます。

◯犬娘

岐阜県

山犬の乳を飲んで育った娘たちの話
昔、飛騨の山奥に、子供のいないキコリの夫婦が住んでいました。ある時、山の神様に子供が恵まれるようにお願いすると、ちょうど一年後に双子の女の赤ん坊が産まれました。
しかし、産後の日立ちが悪く、母親はしばらくすると死んでしまいました。赤ん坊に飲ませる乳が無く困った父親がふと、森の藪の中で子犬に乳を与えている山犬を見つけました。
父親が「娘達が大きくなったら嫁にやるから乳を分けてくれ」と山犬にお願いすると、双子の娘達にも乳を吸わせてくれました。山犬の乳を飲んだ娘達は、病気もしないですくすくと育ち、二匹の子犬たちと仲良く暮らしました。

しかし犬の寿命は短く、娘達が年頃に育った頃には年をとって死んでしまいました。やがて、婦たちの娘達は美しく育ち、良縁に恵まれそれぞれ嫁に行きました。しかし嫁ぎ先では、山犬の幻影が見え隠れするという理由で、すぐに暇を出されてしまいました。
二人とも実家に帰って、そこで初めて父親から山犬との約束の話を聞きました。娘達は「約束をやぶってはいけない」と、山犬の子犬たちの墓の前で、仮祝言をあげました。



◯不思議なコマ犬

石川県

ある山奥の伝燈寺(でんとうじ)という寺に、活道和尚(かつどうおしょう)という坊さまがいました。
ある吹雪の夜、じいさまが小さな孫を連れて逃げ込んできました。孫がオオカミに襲われて怪我をした、このままではオオカミに血の匂いをかぎつけられて狙われてしまう、と言う。じいさまと孫は、コマ犬様が守ってくれるという言い伝えを信じ、ここへ逃げ込んだという。
和尚様は言い伝えにしかすぎないと思っていたが、ひとまず孫を預かってじいさまを家に帰した。その夜、血の匂いを嗅ぎ付けたオオカミの群れが神社をぐるりと取り囲んでいた。そして先頭の叫び声を合図に、オオカミの群れはすさまじい唸り声をあげ、神社に向かって襲い掛かってきた。

和尚様は小さな孫と一緒にお経を唱えはじめた。もはやこれまでかと覚悟を決めた時、小さな孫が「こまいぬさま〜〜〜!」と叫んだ。その時、狛犬に積もっていた雪が崩れ落ち、狛犬が獅子のごとくオオカミの群れに飛び込み、次々に噛み殺していった。
やがて夜明けが訪れ、和尚様が恐る恐る外に出てみると、そこにはおびただしい数のオオカミの死骸が散らばっていた。そして、口を血で真っ赤に染めた狛犬が朝陽に照らされておりました。



◯しっぺいたろう

静岡県

昔、ある村にお民という女の子が住んでいた。お民は両親と早くに死に別れたが、猟犬のしっぺい太郎という頼もしい連れがいた。
しっぺい太郎の牙は鋭く、熊をも一撃で仕留め、またその足は素晴らしく、空中に飛び上がったかと思えば、もう空を飛ぶ小鳥を口にくわえていた。
ところが、この話を聞いた欲深い長者は、どうしてもしっぺい太郎が欲しくなった。長者は、お民の両親が自分に借金を残して死んだことを口実に、3日間だけしっぺい太郎を貸してくれと言う。長者にこう言われては断る訳にもいかず、お民は泣く泣くしっぺい太郎を屋敷に置いて帰った。
しかし、長者は3日経ってもしっぺい太郎を返してくれない。お民は仕方なく1人で山へ猟に出た。ところが、お民は山で野犬に襲われそうになってしまう。窮地に陥ったお民がしっぺい太郎の名を叫ぶと、長者の屋敷からしっぺい太郎が飛び出し、お民を助けにやって来た。

こうしてお民は事なきを得たが、長者はしっぺい太郎が勝手に屋敷から飛び出たことに腹を立て、お民を村から追い出してしまった。村を追われたお民としっぺい太郎は、海辺の村にやって来た。ところがこの海辺の村では、村を津波から守るため、毎年人身御供を捧げていた。そして村にもう娘がいないので、村人はお民を人身御供として祠に閉じ込めてしまったのだ。
村人が去ると、しっぺい太郎はお民の代わりに自分が祠の中に入った。やがて雷鳴が轟き、風が激しくなると、海の方から巨大な化け物が祠に迫って来る。しっぺい太郎は、化け物が祠に近づくと、ここぞとばかり祠を飛び出し、化け物の喉笛に噛みついた。
すると化け物の影は消え失せ、そこにはしっぺい太郎に追われる古狸の姿があった。そう、化け物の正体はこの古狸だったのだ。そして古狸を退治したしっぺい太郎は、いつの間にか人間の若者になっていた。神様がしっぺい太郎を人間に変えて下さったのだ。こうして人間になったしっぺい太郎は、以後、大好きなお民と末永く暮らしたそうだ。



◯山犬物語

長野県

昔、ある山奥の水車小屋に、与作とおっかあと生まれたばかりの女の赤ん坊が住んでいました。女の子は元気でおっぱいも沢山飲みましたが、それでもおっかあのおっぱいの出が良く、乳を余らせていました。
ある夜のこと、与作の家の前に山犬の子がちょこんと座っていました。きっと母犬が、乳のあまっている与作のところへ子供を預けに来たのだろう、と思い、おっかあは分け隔てなくおっぱいを飲ませました。女の子は小雪、子犬は次郎と名づけられ、本当の兄弟のように元気にすくすくと仲良く育っていきました。

何年かたち、里のニワトリ小屋が何かに襲われ、その犯人として犬の次郎が疑われました。必死で次郎をかばう小雪でしたが、里人たちは「次郎を山に帰さないと水車小屋へ仕事を頼まない」と責めました。次郎はこの話がわかったのか、その晩のうちに姿を消してしまいました。やがて、里のニワトリを殺した犯人はイタチであったことも判明しましたが、次郎は見つかりませんでした。

三年たったある夜の事、夜盗たちが与作の家を襲い三人を縛り上げました。小雪が「次郎!助けてー」と思わず叫ぶと、すっかりたくましくなっていた次郎が飛び込んできました。夜盗たちをはじき飛ばし一歩もひけをとらない次郎に、恐れをなした夜盗たちは逃げていきました。
その後、次郎はばったりと倒れ、そのまま死んでいきました。里人たちはこの山犬の事をすえながく忘れることはなかったそうです。



◯白べん黒べん

高知県

昔、高知県宿毛(すくも)の山奥に、一人暮らしの猟師が住んでいました。猟師は、白べんと黒べんという優秀な猟犬を飼っていました。
いつものように2匹の犬を連れて、山へ出かけましたが、どういうわけか一匹のウサギもとれませんでした。猟師は、横瀬川へ沿ってどんどん山奥へ入っていきました。
猟師が淵のところで一休みしていると、小さな蛇が足に噛みつきました。猟師は山刀を蛇に向かって振り下ろしましたが、小さい蛇は身をかわして淵へ逃げていきました。すると、淵はごうごう渦を巻き始め、気味が悪いと思った猟師は家へ帰ることにしました。
帰る途中、松の大木のような巨大な大蛇と遭遇しました。猟師は、鉄砲を撃ちまくりましたが大蛇はびくともしませんでした。猟師は運を天に任せて、特別な弾である命玉をぶっ放しました。
すると、命玉が効いたのか、大蛇は横手川へ落ちていきました。猟師は「二度と大蛇が生き返らないように」と、うろこを剥いで家に持ち帰りました。

その夜、猟師が眠りについていると、メスの大蛇が猟師の家ごとキリキリと締め上げ始めました。猟師ははね起きて、あらん限りの弾を撃ちまくりましたが、メスの大蛇は夫の敵とばかり家を破壊し始めました。
猟師は崩れた家の下敷きになり、「白べん、黒べん、頼むぞ」と言いながら意識を失いました。白べんと黒べんは、狂ったように吠えながら大蛇にとびかかりました。
やがて夜が明け、猟師がようやく家から這い出してみると、大蛇の姿も犬の姿もありませんでした。猟師は「白べーん、黒べーん」と叫びながら、山へ入って行き、そのまま帰ってきませんでした。



◯弥九郎の犬

三重県

昔、紀州の山奥に弥九郎という名の猟師が母親と二人で暮していた。ある春の朝、弥九郎が家の戸を開けると、そこには一匹の子犬がいた。
あれは昨年の秋のことだった。弥九郎が夜中に山を歩いていると、深手を負ったオオカミに出くわしのだ。
弥九郎はこのオオカミに傷の手当をして、
「もしこれで助かったなら、今度の春生まれた子を一匹くれろ。」と笑いながら言った。
オオカミはこの約束を果たしたのだ。
弥九郎はこの子犬をマンと名付け、厳しく狩の技を仕込んだ。
その甲斐があってか、マンは並みの猟犬をはるかにしのぐ優秀な猟犬に成長した。

次の年の初夏のこと。弥九郎は狩の途中、熊の気配を察知して岩陰に隠れていた。
ところが、マンはかまわず飛出し大熊の後ろ足に噛みつく。
弥九郎はすかさず槍で大熊にとどめを刺した。何と、マンは一撃で大熊の後ろ足の筋を噛み切っていたのだ。
このことがあってから、弥九郎とマンの名は紀州一帯に知れ渡った。

その年の冬、殿様にご覧にいれる大掛かりな狩が催された。
マンはこの場でも見事に猪を仕留め、弥九郎は殿様からたくさん褒美をもらった。弥九郎は意気揚々と家に帰った。
ところがどうだろう。弥九郎のおっかさんはマンを山に帰せと言うのだ。
「人間に飼われたオオカミは、千匹生き物を殺すと、次にはその主人を食い殺す。」
弥九郎が家を出掛ける時、読経を頼んだ旅の坊さんが、マンの素性を見抜きこんな恐ろしいことを言ったのだ。
そんな話は弥九郎には到底受け入れられない。
弥九郎は言う。「マンは俺の犬。マンあっての弥九郎なんや!!」
外にいたマンは人間の言葉を理解したのだろうか。
「ウォーン」と一声鳴くと、山の方へと走り去って行く。
「マン、帰ってくれー!!」弥九郎は雪の降る中、裸足で家を飛び出しマンの後を追う。
マンは振り返り、一度弥九郎の方を見ると、悲しそうにまた山の方へ歩き出した。
それ以降、マンが弥九郎のもとに帰ることは二度となかった。
優秀な猟犬として知られる紀州犬は、このお話のマンが祖先だと伝えられている。



◯犬頭絲

島根県

むかし、むかし、あるところに一人の娘が住んでおった。
 娘はお蚕(かいこ)さんを飼(か)って、糸を取って暮らしを立てていたと。
 ある年のこと。お蚕さんが思うように育たなかったと。沢山(たくさん)飼っていたのに、ひとつ死にふたつ死にして、とうとうたった一匹になったと。
 一匹ばかりではしょうがないと思ったが、娘は、残った一匹がむしょうに可愛いくなって、それを大切に大切に育てたと。
 そしたら、それがよく桑(くわ)の葉を食べ、日毎(ひごと)日毎に育って、今まで見たこともないほど大っきなお蚕さんになった。 

 ある日、その大(おお)お蚕さんを表に出していたら、家に飼っている白犬がそれを呑み込んでしまった。  
娘がお蚕さんに桑の葉をやろうと、ちょっと目を離したすきの出来事で、止めるひまもなかった。
 娘は、たんせい込めた、たった一匹のお蚕さんを失って暮らしの張(は)りが無くなってしまった。来る日も来る日も泣いてばかりいたと。 

 そんなある日、白い犬がしきりにくしゃみをしている。
娘が犬のそばへ行き、犬の鼻が乾(かわ)いていないかどうかみようとしたら、その鼻の両穴から白い糸が少し垂(た)れていた。
まるで繭(まゆ)の糸のように見える。不思議に思って、糸のはしを引いてみたら、二筋(ふたすじ)ともどこまでも長く続いて出てきた。
およそ四、五貫(かん)ほども巻きとったらようやく終(しま)いになって、そのとたんに、犬はパタッと倒れて死んでしまった。
 娘は、先にお蚕さんをみんな失(な)くし、今度は飼い犬を亡くして、泣いて泣いて泣き疲れてその場で寝てしまった。
 そしたら夢の中に飼い犬が現れて、
 「悲しまなくていい。わたしを裏の桑の木の下へ埋(う)めて下さい。そしたら来年、きっといいことがあります」 という。
 目を覚(さ)ました娘は、夢で告げられた通りに犬を家の裏の桑の木の下に埋めてやったと。
 翌年(よくとし)、桑の木の下から、お蚕さんが自然に生まれて、桑の葉にたくさんとりついていたと。 
 娘はたんせい込めて育てたので、やがて繭をつくり、よい糸がとれて、くらしに困らなくなったと。



◯ひがしみの昔話

こうもり岩の白い犬〈中津川市下野〉

 昔、付知川に面したこうもりが住んでいる大きな岩の洞窟がありました。
激しい夕立に会って、びしょ濡れになったりっぱな武士とその家来が、白いりっぱな武士とその家来が、白い一匹の犬を連れてやって来て、この洞窟に入って、火を焚いて衣服を乾かしました。
 旅の疲れでぐっすりと眠り、犬の鳴き声で起き上がると、外はもう夜明けでした。
持って来た食料も少しになって、近くの農家へ食料をもらいに行きました。


お米と鍋、野菜をもらって、武士は短刀をお礼に渡し、戦さに負けて逃げ隠れている事情を話し、黙っていてくれるように頼みました。  初めのうちは警戒して夜しか火を焚かなかったのに、だんだん馴れて来ると昼間でも火を使うようになって、こうもり岩に落武者がいるという噂は人々の間に広がっていきました。

 秋の初め頃、朝から犬が吠えるので、よろいかぶとを身につけて、武士が洞窟から出てみると、付知川の対岸から鉄砲で射たれ、ばったりと倒れ、家来の男も射たれて死にました。
 「これは、はちがね城の城主だ。首をはねてやれ」追手たちは死屍をほうむり、悠々と引き上げて行きました。
 白い犬は主人の塚の前でやせ細って死んでしまったので、村人たちたが葬ってやりました。

 その後、白い犬を飼っていた家の主人が若死にしたり、白い壁の家が火事になったり、この村では白いものは祟ると言われるようになりました。
 やぎ、うさぎ、にわとりなどは勿論、着物も、白米も祟るから玄米に近いものを食べる家もあります。お尻の所が少し白い馬が急に暴れ出して死んだそうです。



イヌのキャラクター

◯スヌーピー

スヌーピーは、言わずと知れた有名人ですよね。二足歩行するビーグル犬です。
犬と聞いて、誰もが思い浮かべるキャラクターと言えば、やはりスヌーピーなのではないでしょうか?
スヌーピーのグッズは今日でも多く販売されており、小さい子供や若い女性に人気があります。
USJにはスヌーピーのエリアだってありますね。
しゃべらないけど、ほとんどことができて、小説を執筆してしまうすごい犬です。

◯クレヨンしんちゃんのシロ

クレヨンしんちゃんのシロは、しんちゃんに拾われてきたことから野原家で飼われるようになった白い犬です。名前もそのままですね。
来た当初はやんちゃな面もあったようですが、今現在のシロはとっても利口なワンちゃんですよね。
しんちゃんやひまわりのお世話をする場面も良くあります。
また、映画やアニメの中では、しんちゃんに日本語で話しかけてくるシーンもありますね。
ちなみに、シロの声優さんは、トオルくんと同じ方なんですよ。

◯チーズ

アンパンマンに登場する犬のキャラクターと言えば、チーズですよね。
子供の時にアンパンマンが大好きだった人は多いことでしょう。今の子供にも大人気ですよね。
元々は、バイキンマンの手下としてパン工場に現れたチーズでしたが、すっかり今はパン工場の一員ですね。
しゃべらないけど、車を運転したり、ジェスチャーでバタコさんと会話をするシーンが印象的です。
裏設定で、チーズは実はしゃべれるけど、必要ないから話さないのだそうですよ。

◯ソフトバンクお父さん

白い犬を見れば、お父さんと言いたくなるほど、フィーバーしていた時期がありましたね。
ソフトバンクがお父さんを起用した当初はとっても人気があったキャラクターです。
今でも、ソフトバンクでは、お父さんグッズを多数扱っていますね。
最近は、すでに家族内でのやりとりの域を超えており、ちょっと何の話かわけわからないですが、やはり可愛いですよね。
おとうさんも実写ですが、れっきとしたキャラクターだと思います。

◯グルミット

「ウォレスとグルミット」と言えば、クレイアニメの代表格であり、イングランド生まれのアニメーションですよね。
この中でおとぼけの発明家であるウォレスの良きパートナーとして登場するのが、しっかり者のビーグル犬・グルミットです。
世界的に有名なクレイアニメのキャラクターなので、よく知っている人も多いことでしょう。
まだよく知らない人は、ぜひ映画をみてみてくださいね。
スヌーピーのように、しゃべらないけど、字が読めて何でもこなせるすごい犬です。

◯ハリー(1956-)

「ハリーはくろいぶちのあるしろいいぬ。おふろがだいきらいです」。
そんな彼をおふろにいれるかどうか、家族のみんなが話し合っているすきに、当のハリーは裏庭におふろブラシを隠し、おうちを飛び出してしまう。
道路で遊び、線路ではしゃぎ、ほかの犬のお友だちと鬼ごっこをしているあいだに、ハリーはどんどんまっ黒に。きわめつけは、石炭シュートから一気に滑りおちたとき。
なんと、ハリーは「しろいぶちのあるくろいいぬ」に変身してしまったのだ!

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