馬のお話し

◯スーホの白い馬

モンゴルの草原に、スーホという心の優しい少年が、おぱあさんと二人で住んでいました。羊を追って暮らしていましたが、ある春の夜、生まれたぱかりの白い子馬を見つけて持ち帰り、大事に育てました。 朝起きてから夜寝るまでスーホと白馬はいつも一緒です。 人間と馬というより、兄弟のようにそれはそれは大変仲の良いスーホと白馬に、まわりの人々もびっくりするほどでした。 やがて月日がたち、自い子馬は立派な、たくましい馬に成長しました。そんなある日、モンゴルの殿様の前で馬の競争が行われることになりました。モンゴルの各地から、脚に自身のある馬たちが集まって来ました。もちろん、スーホも白馬に乗って参加しました。  「用意、ドン!!」家来の合図でスタートです。でもスーホの白馬にかなう馬はありません。スーホは見事に一着になり、殿様が約束したとおり、段様の娘、オノン様と結婚し素晴らしい商品をもらうはずだったのですが、あまりにも自馬の素晴らしさに目を奪われた殿様は、何かと理由をつけて、約束を破り、あげくのはてに、白馬をむりやりスーホか ら奪いとってしまったのです。  白馬と別れたスーホは、毎日まいにち白馬のことを思い出しては、悲しみの涙にくれていました。友達も心配して、いろいろと元気づけるのですが、スーホの悲しみは深くなるぱかりです。カタカタと戸を鳴らす秋風にも、「白馬!白馬が帰って来たんだ」と表に飛び出して、さがし廻るスーホの姿に、おぱあさんも涙がとまりませんでした。  その頃、スーホから奪った白馬を、殿様はお客様を呼んで自慢することにしました。しかし、スーホに会いたい気持ちは白馬とて同じです.白馬は殿様を振り落とし、家来を地面にたたきつけて、スーホに会いたくて逃げ出しました。  おこった殿様は、弓矢で白馬を うってしまったのです。体に何本もの矢傷を受けながら、それでも白馬はスーホのゲル (家)に帰って来ました。「白馬!!逃げて来たんだね。ぼくに会うために、矢でうたれながら・・こんな遠くまで走って来てくれたんだね」・・・スーホに抱かれながら白馬は死んでしまいました。  なげき、悲しむスーホに、白馬のたましいが現れて、「スーホ、元気を出して下さい、そして、わたしの尾やすじを使って楽器をつくって下さい。そうすれぱスーホがうたをう たう時は、私も一緒にうたえますし、スーホが休む時は、あなたのそぱにいられます」と話かけて消えていきました。  スーホは、いわれた通りに白馬の体から楽器をつくりました.この楽器が現在でもモンゴルにつたわっている、馬頭琴という楽器です。  やがて冬が去り、モンゴルの草原に再び、光り揮く春がやってきました。


◯白い馬(アワの長者)

静岡県の民話
むかしむかし、あるところに、働き者ですがとても貧しい男がいました。 「あーっ、腹へったなあー」
 腹を空かせた男の見る夢といったら、いつも食べ物の夢ばかりです。  そんなある夜の事、男は不思議な夢を見ました。 広い荒れ地に白いウマが現れて、金色にかがやくアワの穂(ほ)を食べている夢です。 「ああ、夢か。しかし、あの場所は・・・」
 夢から覚めた男は、夢に出てきた場所に見覚えがある事に気がつきました。 そこで次の日、夢に出てきた場所に行ってみると、何と夢で見た白いウマが金色のアワの穂を口にくわえていたのです。 「ああ、ありがたや。きっとこれは、ここをたがやせという神さまのおぼしめしにちげえねえ」  男は夢中で荒地をたがやして、 白いウマがくわえていた金色のアワの穂をうえました。  さて秋になると男のうえたアワの穂はみごとに実り、金色にかがやくアワで目もくらむばかりの大豊作となりました。 こうして男は、アワの長者とよばれる大金持ちになりました。  男はありあまる金色のアワを家の屋根からかべまで、あらゆるところにぬりこめて、ピカピカの家を建てました。  それから何年かたったある年のこと、村はひどいききんにみまわれました。 食べる物がなくなった村人たちは、みんなであわの長者の家にやってきて言いました。 「アワの長者さま、アワをめぐんでくだせえ」  ですが、金持ちになってすっかり心の変わってしまったアワの長者は、 「ふん、アワはわしの物じゃ。お前らには、一粒たりともやらんわい」
と、村人たちを追いかえしたのです。  ですが空腹の村人たちは長者が寝ているすきに、長者の家のかべにぬりこめてあったアワをむしり取り始めました。  次の朝、アワをむしり取れたかべを見た長者は、 「まったく、なんてやつらだ!」
と、かべのアワをとられないように、かべというかべにあつくドロをぬりつけたのです。  その夜、長者が寝ていると、カリカリ、カリカリと音がするのに気づきました。 「おや? あの音は何じゃ?」  それは、アワをたくわえている倉の方から聞こえてきます。  長者がねむい目をこすりながら、倉へ来てみると。 「ネ、ネズミじゃあ!」
 何千、何万というネズミが、カリカリ、カリカリとアワを食べていたのです。  そしてネズミたちは倉の中のアワを全て食べつくすと、  やがてひとかたまりになって外へ飛び出し、  白いウマに姿をかえて空にかけのぼっていったのです。 「あっ、あの白いウマは、わしが夢の中でみた神さまのウマ!」
 そのとき長者は、自分が貧しい生活を送っていたことを思い出しました。 「貧しいわしは神さまによって長者にさせてもろうたのに、貧しい人にアワの一粒もめぐんでやらんかった。 だから神さまが、怒ったのだな。  神さま、ゆるしてくだせえ」
 こうして心を入れ替えた長者はもとの百姓(ひゃくしょう)にもどって、また畑をたがやしはじめたという事です。


◯ウマのふん

むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。  この頃吉四六さんは、妙な事を始めました。  毎朝、ざるにウマのふんを入れて、川にさらして洗っているのです。  そして洗い流すと、ざるの中にいくらかのお金が入っているのです。 「今朝も、もうかったわい」
 吉四六さんは、ざるにお金を入れたまま、見せびらかす様に帰って行きました。  それを見ていた近所の人が、吉四六さんに尋ねました。 「吉四六さん。そのお金、まさかウマのふんから出たのではないだろうな」 「はい、確かにふんから出た物じゃ」
「するとお前さんのウマは、お金のふんをするのかね?」
「そうだが、それが何か?」

 さあ、それを聞いた村の人たちは、みんな吉四六さんのウマが欲しくなりました。 「吉四六さん。そのウマを売ってはくれんか?」
「いや、売らんぞ。このまま持っていれば、金持ちになれるもんな」
 売らないと言えば、よけいに欲しくなるものです。 「五十両出すから、売ってくれ」
「いや、おれは七十両だ」
「わしなら、百両出すぞ」
 でも、吉四六さんは、 「そんな金、毎日ふんを洗っておれば、すぐに貯まるわい」
と、ウマを売ろうとはしないのです。  そしてとうとう、噂を聞いた町一番のウマ買いがやって来ました。  すると吉四六さんは、 「仕方ねえな。村の人ならともかく、わざわざ町から来たんじゃ断れねえ。ただし、毎日上等なえさをやってくれよ」
と、とうとうウマを手放したのです。  ウマ買いは大金を置いて、喜んでウマを引いて行きました。  ところがウマ買いは毎日特別上等なえさをやって、大事大事にしているのですが、ウマはお金のふんを出さないのです。  最初の二、三日は、数枚のお金が出て来たのですが、それからはまるで出てきません。 「吉四六め! だましやがったな!」
 怒ったウマ買いは村にやって来ると、 「やい、吉四六。あのウマは金を出さんぞ!」
と、怒鳴り込みました。  すると吉四六さんは、 「はて? そんなはずは。・・・えさが悪いんじゃないのか?」
「何を言うか。ムギやらニンジンやら、毎日上等なえさをやって、大事にしているんだ!」
「ムギやニンジンねえ。まあ、確かにそれも上等なえさだが。・・・で、そのえさには、お金は入っているかい?」
「金?」
「そうさ、どんなにいいえさでも、お金入りのえさほど上等じゃねえ。この世で一番上等なえさは、お金入りのえさだ。それさえやれば、ウマはお金の入ったふんをするよ」


◯馬とロバ

あるところに、馬とロバを飼っている男の人がいました。  ある日の事、男の人は2匹を連れて旅に出かけました。  途中で、ロバは馬に言いました。 「あの、ぼくの荷物を少し持ってくれませんか? 重たくて、死にそうなんです」
「・・・・・・」
 でも、馬はしんどいのが嫌いで、聞こえないふりをしました。  ロバはもう一度、馬に頼みましたが、馬はまた聞こえないふりです。  すると疲れ切ったロバはバタリと倒れて、そのまま死んでしまいました。  それを見た男の人は、ロバの荷物を馬の背中に乗せました。  そればかりか死んだロバの皮をはいで、その皮まで馬の背中に乗せたのです。 「ああーぁ」
 馬は、ため息をつきました。 「おれは、バカだな。ちょっとの荷物を持つのを嫌がった為に友だちのロバくんは死んでしまうし、ロバくんの荷物だけでなく、ロバくんの皮までしょわされてしまったよ」
 これは、強い者が弱い者を手伝ってあげれば、どっちも助かったというお話しです。  みんなも困っている人がいたら、助けてあげてくださいね。


◯馬に乗る

むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。  さて、今日は朝から良い天気なので、吉四六さんはウマを引いて山をテクテク登って行きました。  たきぎを取りに来たのです。 「ほう、良いたきぎがあるわ」
 吉四六さんは、オノでポンポンと枯れ木の枝を切っていきます。  しばらくして、たきぎがいっぱいたまりました。 「よしよし、今日は思ったよりも、たくさん取れたぞ」
 吉四六さんは喜んで、それらを縄で結んでいくつものたきぎの束(たば)を作りました。 「さあ、これを背負っておくれ」
と、そのたきぎの束をみんな、ウマの背中へ積み上げました。  やせたウマはたくさんのたきぎを背負って重いので、まるで地面をはいずるような格好になりました。  でも、のんきな吉四六さんは、そんな事を気にもしないで、 「では、帰るとしようかな」
と、ウマの腰を、ポンポンと叩きました。  ウマは仕方なく、ヨタヨタしながら山の坂を下りて行きます。  そしてその坂の途中まで来た時、吉四六さんはやっと、ウマの歩き方がノロノロしている事に気がつきました。 「おや、何だかヨタヨタしているなあ。おおっ、そうか、そうか。これは気がつかなくて悪かった。こんなにたくさん荷物を背負っては、さぞ重かったろうなあ」  そして、ウマの首をなでながら、 「だが、もう安心しろよ。わたしも手伝ってやる。そのたきぎを少し背負ってやるからな」
と、吉四六さんはウマの背中から、たきぎを二束ほど下ろしてやりました。  そしてそれを、 「うんとこしょ!」
と、自分の背中に背負いました。  それからウマと一緒に歩いて行くのかと思いきや、そうではありません。  たきぎを背負った吉四六さんは、そのまま自分もウマの背中の上に乗ったのです。 「たきぎを二束も背負うと、なかなか重いものだわい」
 吉四六さんは汗をかきながら、ウマの背中に乗っています。 「だが、わたしがこれだけでも手伝ってやれば、ウマも助かるだろう」
 吉四六さんは、安心した様な顔をして言いますが、でもウマは、そんな吉四六さんとたきぎを乗せて、前よりも、もっとヨタヨタしながら歩いて行きました。


◯アトリの鐘

イタリアの昔話
むかしむかし、イタリアのアトリという町のお話です。
ある日、王さまの命令で町の広場の塔(とう)に、 大きな鐘(かね)がつるされました。  鐘からは、長いつなが下がっています。 「どんな音がするのだろう?」
 町の人たちは塔をとりかこんで、胸をわくわくさせながら王さまが来るのを待ちました。  やがて馬車(ばしゃ)でやって来た王さまが、集まった人々にこう言いました。 「この鐘は、ただ時刻を知らせたり、音を聞くだけのものではない。『正しさの鐘』として、ここにつるしたのじゃ」
「正しさの鐘?」
 人々は、不思議そうに王さまを見つめました。 「そうじゃ『正しさの鐘』じゃ。  お前たちのうちの誰でも、もし人にいじめられたり、つらいめにあわされたりしたら、ここへ来て鐘をならせばよい。  鐘がなれば裁判官がすぐに来て、お前たちの言い分を聞いてくれる。  そして何が正しいかを、決めてくれるであろう」
「誰が鐘をならしても、よろしいのですか?」
「誰がならしてもよい。  子どもでもよいぞ。  見よ、そのためにつなは、このように長くしてあるのじゃ」
 こうしてアトリの町では、その日から人につらいめにあわされた人や、争い事のある人は塔の下に来て、鐘をならすようになりました。  そして王さまのおっしゃった通り鐘がなると裁判官がやって来て、誰が正しいか、何が真実(しんじつ)かを決めてくれるのです。  鐘のおかげで町のみんなは、楽しく毎日を過ごせるようになりました。  そして長い年月の間に大勢の人がつなを引っ張ったので、つなが切れて新しいつなが出来るまでブドウのつるがさげられることになりました。  さて、アトリの町はずれに、一人の金持ちの男が住んでいました。  この男は若い頃はウマに乗って悪者をたくさんやっつけた、いさましく正しい人でした。  でも年を取るにしたがって、だんだんと意地悪のけちん坊になってしまったのです。  ある日、金持ちは考えました。 「もっと、お金をためる方法はないだろうか?  ・・・そうだ。ウマにエサをやらなければいいんだ」
 こうしてむかしは一緒に活躍したウマなのに、エサをやるのをやめてしまったのです。  やせほそったウマはヨロヨロしながら、  やっとアトリの町へたどりつきました。  そして広場の塔の下まで来ると、つなのかわりに下がっていたブドウのつるの葉をムシャムシャ食べ始めたのです。 ♪ガラン、ガラン。  ウマが食べるたびに、鐘がガランガランとなりました。  町の人たちも裁判官も広場に飛んで来て、そのウマを見ました。 「かわいそうに、こんなにやせている」
「ウマは口がきけないから、鐘をならして、つらいことをうったえているのだ」  すぐに飼い主だった金持ちが、広場に呼ばれました。  裁判官は、金持ちに言いました。 「このウマは、今までとてもあなたの役に立ってきたはず。  あなたのためたお金の半分は、このウマの物ではありませんか?」
 金持ちの男の人はブドウの葉を食べているウマを見ているうちに、胸がいっぱいになりました。  自分がどんなにひどい事をしたか、ようやくわかったのです。  そしてそれからはウマを大切にして、いつまでも仲良く暮らしました。  アトリの鐘は、ウマにとっても『正しさの鐘』だったのです。


◯絵から抜け出した子馬

香川県の民話
むかしむかし、ある村のお寺に、絵をかくのが何よりも好きな小僧さんがいました。  お経も覚えずに、ひまさえあれば絵ばかりかいていました。 「仏さまに仕える者が、そんな事でどうする。絵をやめないのなら、寺を追い出してしまうぞ」  和尚さんからきびしくしかられても、やっぱり絵をやめる事が出来ません。  そこで夜中にこっそり起きて、絵をかくことにしました。

 ある日の事、小僧さんは子馬の絵をかきあげました。  まるで生きているみたいで、自分でも見とれるほどです。  小僧さんはうれしくなって、和尚さんに見つからないように自分の部屋にかくしておきました。  ところがしばらくたってこの村に、困った事が起きました。  すっかり黄色くなった麦の穂(ほ)を、食い荒らすものが現れたのです。  豊作だと喜んでいたお百姓さんたちは、とてもくやしがりました。 「こんな悪さをする奴は、とっ捕まえて殺してやる」
 お百姓さんたちは畑に小屋をつくって、一日中見張る事にしました。  するとその晩、どこからともなく一頭の子馬が現れて麦畑の中へ消えていくではありませんか。 「さては、あの子馬が麦を食べているんだな」
 見張りのお百姓さんたちは、こっそり子馬のあとをつけました。  そんな事とは知らない子馬は、うれしそうに麦畑を駆け回ると、立ち止まってはおいしそうに麦の穂を食べました。 「やっぱり、あいつだ」
「もう、ゆるせない」
 お百姓さんたちは飛び出して、子馬を取り囲みました。 「逃がすんじゃないぞ」
「それ、追うんだ」
 お百姓さんたちが必死で追いかけて行くと、馬はお寺の中にかけ込んでいきました。 「なんだ? お寺で馬を飼うわけないし、あずかったという話も聞いていないが」
 不思議に思いながらも、お寺に行ってみるとどうでしょう。  馬の足あとが、てんてんと小僧さんの部屋まで続いているのです。 「まさか」
 お百姓さんたちから話を聞いて、和尚さんが急いで小僧さんの部屋に行ってみました。  するとそこには、子馬の絵を抱いた小僧さんがすわっていました。  子馬は今にも絵から飛び出そうと、じっとこっちを見ています。 「こ、こ、この馬です」
 あとからやってきたお百姓さんたちも、その絵を見て思わず息を飲みました。  泣き出しそうになっている小僧さんを見て、和尚さんが言いました。 「絵の馬が抜け出すとは、大した腕前だ。これからは、自由に絵をかいてもいいぞ」
 そんな事があってから、小僧さんは仏さまの絵をたくさんかいて村人たちにわけてあげました。  村人たちはその絵を家宝にして、大切にしたということです。


◯馬と馬丁

イソップ童話
馬の世話をする人が、馬のエサにするムギを盗んで売ってお金をもうけました。  その代わり馬をなでたり、さすったり、ブラシをかけてやったり、一日中大事にしてやりました。  すると、馬が言いました。 「わたしを立派な馬にしたいのなら、なでたりさすったりするよりも、わたしたちのエサのムギを二度と売らないで下さいな」  欲の深い人は親切そうなふりをしながら、その人たちが生きる為に一番必要な物まで、巻き上げてしまいます。

◯金の粒を出す馬

新潟県の民話
むかしむかし、新潟のある山の近くの村に、仲の良いおじいさんとおばあさんが住んでいました。  二人はおじいさんが山で取ったたきぎを、町で売って暮らしています。

 ある年の暮れ、おじいさんはお正月の品々を買うために、町へたきぎを売りに出かけました。  ですが買えたのは、串柿(くしがき)とスルメだけです。 「串柿とスルメでは、ばあさんががっかりするだろうな」
 おじいさんはとぼとぼ帰りながら大川の橋の中ほどまで来ると、背中のしょいこにくくりつけた串柿とスルメを川に投げ込みました。 「ほれ。わしから川の者への歳暮じゃよ」
 そして長い橋を渡りきると、いつの間にか橋のたもとには美しい娘がいて、おじいさんに頭を下げました。 「先ほどは、ありがとうございました。お礼をしたいので、家においでください」
「お礼? わしはあんたに、何もしてないが」
「いいえ。串柿とスルメの歳暮を、確かに頂きました。家まで案内しますので、目をつぶってください」  おじいさんがわけも分からずに目をつぶると、すぐに娘が言いました。 「さあ、家に着きました。目を開けていいですよ」
「着いたといっても、わしは一歩も歩いておらんが。・・・おおっ!」
 おじいさんが目を開けてみると、何と目の前に立派なご殿があるのです。  ご殿に案内されたおじいさんは、おいしい食べ物ををたくさんごちそうになりました。  そして帰ろうとすると、娘の母親が絹の布に包んだきれいな手箱をくれました。 「この二つの引き出しには、小さな馬とお米が入っています。馬にお米をやると、金の粒を出してくれます。でも、誰にも見つからず、誰にも言ってはいけませんよ」
 おじいさんが手箱を受け取ると、いつの間にか橋のたもとへもどっていました。  さて、家に帰ったおじいさんは、おばあさんには内緒(ないしょ)で米が入った引き出しから米粒を一つ取り出して、小さな馬にやりました。  すると馬はすぐに、お尻から金の粒を出しました。 「おおっ、本物の金だ」
 それからおじいさんは家のお金がなくなると、こっそり奥の部屋へ入っては小さな馬に米粒を食べさせて金の粒を出させました。  ある日の事、おばあさんはおじいさんの留守中に、押し入れに隠してあるきれいな手箱を見つけました。 「これは、何だろうね」  引き出しを開けてみると、中に米が入っています。  もう一つの引き出しを開けてみると、中に小さな馬がいて、 「ヒヒヒーン」
と、鳴きました。 「おや、腹が空いておるんか」
 おばあさんが米を一粒やると、馬はすぐにお尻から金の粒を出しました。 「なるほど。ちかごろは金回りが良いと思ったら、おじいさんは、これで金の粒を出していたんじゃな」
 おばあさんはうれしくなって、どんどんお米をやりました。  すると小さな馬はお米を食べては、ポトン、ポトンと金の粒を出します。  そしてお腹がいっぱいになった馬は元気に部屋の中を走りまわり、ポトン、ポトンと金の粒を出し続けました。 「こらこら。もう戻らんか。おじいさんに見つかったら、大変じゃ」
 おばあさんが馬を追いまわすと、馬はお尻から金の粒を出しながら庭へ飛び出し、佐渡が島へ逃げていったのです。  佐渡が島で金がたくさん取れるようになったのは、そのためだと言われています。


◯あなたの大切な物

グリム童話
むかしむかし、貧しい農家に、とても頭の良い娘がいました。  王さまに気に入られた娘は、王さまと結婚して王妃(おうひ)さまとなりました。  娘が王妃さまになって、何年かがすぎたある日のことです。  まきを売りにきた農民たちが荷車を止めて休んでいると、荷車を引いているウマが急に産気(さんけ)づいて、かわいい子ウマをうんだのです。  しかし何を思ったのか、その子ウマは隣の荷車のウシをお母さんと勘違いして、そのウシのそばに座り込んでしまったのです。  するとウシの飼い主が、 「子ウマは、自分の物だ」
と、言い出して、ウマの持ち主とけんかを始めたのです。  そこヘ現れたのが、王さまでした。  ウマの飼い主とウシの飼い主が、それぞれ王さまにうったえます。 「うちのウマが、子ウマをうんだのです。だから子ウマは、うちのウマです」
「いいえ。うちのウシが、子ウマをうんだのです。そのしょうこに、子ウマはうちのウシから離れようとしません」 「何をいう、ウシがウマをうむものか! だいたいお前のウシは、オスウシだろうが!」
「オスだろうが、ウシだろうが関係ない! 子ウマはうちの物だ!」
 ウシの持ち主の言い分はムチャクチャでしたが、王さまはこう言ったのです。 「子どもは、母親をしたうもの。子ウマがウシをしたっているのなら、子ウマはウシがうんだに違いない」  こうして子ウマは、ウシの持ち主の物になったのです。  せっかく産まれた子ウマを取られたウマの持ち主は、その場でいつまでもくやし泣きをしていました。  それを見ていた王妃が、ウマの持ち主に近寄ります。  彼女はウマの持ち主に、あるアイデアを教えました。  そしてそのアイデアが決して、彼女の考えだと言わないと約束させたのです。

 さて、次の朝。  王さまが朝の散歩をしていると、町の広場でウマの持ち主が魚取りのアミで魚をとろうとしていました。  不思議に思った王さまが尋ねると、ウマの持ち主はこう言いました。 「オスウシに子ウマがうめるものなら、町の広場で魚だって取れるはずです」
 このあてつけに、王さまは怒りました。 「これは、お前の考えではあるまい。誰がそんな事を思いついた」
「へい、実は・・・」
 ウマの持ち主は、本当の事を話してしまいました。  すると王さまは、妃のところへ怒鳴り込みました。 「わしをだますような、そんな妃はいらん! 自分の大切な物を一つやるから、出て行け!」

 その晩、二人はお別れの酒をくみかわしました。 「これでそなたとは、お別れだな・・・」
「そうですわね」
「妃よ・・・」
「はい」
「・・・その、わしに、何か言う事はないのか?」
「別に、何もありませんわ」
「・・・そうか」
 王さまは自分の言った事を後悔(こうかい)していましたが、妃があやまろうとしないので言葉を取り消す事が出来ません。  王さまはションボリしていましたが、妃はというと、あれあれ、目が笑っていますね。  きっとまた何かを、たくらんでいるのでしょう。  王さまはそんな妃には気づかず、悲しさをまぎらわそうと盃(さかづき)のお酒を一気に飲みほしました。  実はそのお酒、妃が眠り薬を入れていたのです。

 次の朝、王さまが目覚めたのは汚い農家のベッドの上でした。  ここは、妃の実家です。 「いったい、これは何のまねだ?」
 王さまが妃に尋ねると、妃はニッコリ笑って言いました。 「王さまはわたしに、一番大切な物を一つやると言いました。ですからわたしは、わたしの一番大切な王さまを、いただいてきただけですわ」  この言葉にすっかり感動した王さまは、自分の裁判(さいばん)が間違いだった事をみとめると、あのウマの持ち主に十頭の子ウマをやる事を約束し、そのまま妃と仲良くお城へ帰りました。


◯万蔵とウマ

福島県の民話
むかしむかし、小坂峠(こさかとうげ→福島県)のふもとの村に、万蔵(まんぞう)という若い男がいました。  万蔵は心のやさしい正直者で、毎日のようにウマの背に荷物を乗せて峠(とうげ)をこえていました。

 ある日の事、万蔵は人にだまされて、大事なウマを取られてしまいました。  ウマを取られては、荷物を運ぶ仕事が出来ません。 「ウマはないが、仕事をしないと食っていけないしな」
 仕方なく万蔵は背負えるだけの荷物を背負って、自分一人で荷物を運ぶ事にしました。  万蔵が夕暮れの峠の道をのぼっていくと、旅姿(たびすがた)の老人がしょんぼり石にすわっています。 「どうした? じいさん」
 万蔵がたずねると老人は、 「実はお金を使い果たしてしまい、朝から何も食べておらんのじゃ」
と、言うのです。 「そりゃあ、お気の毒だな。・・・よし、おいらにまかせておきな」
 万蔵は老人を元気づけると、知り合いの茶屋(ちゃや)へ連れて行きました。 「ここで二、三日、ゆっくり体を休めていくといい。お金は、おいらがなんとかするから心配するな。たくさん食って、はやく元気になるんだぞ」
 万蔵は老人を茶屋の主人に頼むと、そのまま仕事に戻りました。  次の朝、荷物を背負った万蔵が昨日の峠に来てみると、またあの老人が石にすわっていました。  でも今日の老人は、黒毛のたくましいウマを五頭もつれています。  老人は万蔵を見つけると、にこやかに言いました。 「昨日は、どうもご親切に。お礼に、このウマをさしあげよう。町へ行って売りなされ」 「こんなに、立派なウマを。・・・あ、あなたさまは、どこのだんなさまで?」
 万蔵がたずねると、老人はニッコリ笑い、 「この峠の上の、稲荷大明神(いなりだいみょうじん)の使いの者じゃ」
と、言って、そのままけむりのようにスーッと消えてしまいました。 「なんとも、不思議なことじゃ」
 万蔵は老人に言われた通り、五頭のウマをひいて町へ行きました。  すると、それを見かけた殿さまの家来が、 「すばらしいウマだ。これは殿さまにふさわしい」
と、ウマを五頭とも買いあげてくれたのです。  こうして大金を手に入れた万蔵は、その大金で峠に稲荷大明神をまつるお堂(どう)をつくり、峠越えで苦しむ人たちを助けたと言うことです。


◯ホジャおじさんのぬれない秘密

トルコの昔話
むかしむかし、トルコの国に、ナスレッディン・ホジャと言う、とても変わった人がいました。  ある日の事、ホジャおじさんは王さまと一緒に、狩りに出かける事になりました。  ホジャおじさんの乗っている馬は見かけはとても立派なのですが、走るのがとても遅い馬でした。  家来たちがホジャおじさんを困らせようと、わざとそんな馬を選んだのです。  その狩りのまっ最中に、激しい雨が降ってきました。  王さまと家来たちは馬を飛ばして、大急ぎでお城へ帰って行きました。  ホジャおじさんも早く帰りたいのですが、いくらムチで叩いても、この馬は走ろうとしません。  トコトコ、トコトコ、のんびり歩くだけです。 「仕方ないな」
 そこでホジャおじさんは着物を脱いで、濡らさない様に馬の腹の下にしまいました。  そしてやっとの事で、お城へたどり着きました。  そしてホジャおじさんは濡れた体を拭いて、馬の腹の下にしまっていた着物を着て王さまのところへ行きました。  すると濡れていないホジャおじさんを見て、王さまが尋ねました。 「おやっ? ホジャよ。お前は全く濡れていないが、どうして濡れずにこれたんだね?」
 するとホジャおじさんは、当たり前の様に言いました。 「はい、王さま。あの馬のおかげで、濡れずにすみました」
「ほほう、あの馬は、そんなに早い馬だったのか。よし、今度の狩りの時はわしが乗るぞ」

 それから何日かたって、王さまはまた狩りに出かけました。  今度も途中で、激しい雨が降ってきました。  王さまが急いで帰ろうと馬をムチで打ちましたが、馬はいっこうに走りません。  そしてお城へたどり着いた時には、王さまはびしょ濡れになっていました。  怒った王さまは、すぐにホジャおじさんを呼びつけました。 「この大うそつきめ! わしは、びしょ濡れになったぞ!」
 それを聞いたホジャおじさんは、笑って答えました。 「王さま、あなたはこの国で一番偉い人ですが、頭はわたしより良くありませんね」 「うん? どういう意味だ?」
「はい、雨が降ってきたら着物を脱いで、馬の腹の下にしまうのですよ。そして雨があがったら、着物を取り出せばいい。わたしは言ったでしょう。『馬のおかげで、濡れずにすみました』って」
「そうか。確かにそうじゃ。あははははっ、これはまいった、まいった」  王さまはホジャおじさんの頭の良さに、すっかり感心してしまいました。


◯旅人馬

九州地方
金持ちの息子の栄助と貧しい家の五郎の仲良し二人が楽しく旅をしていた。 二人はある宿屋に泊まるが、その夜、五郎はなかなか寝付かれなかった。すると宿屋の女将が起きてきて、囲炉裏の灰に種を播いていた。すると稲が伸びてきて、女将はその稲から団子を作った。翌朝、その団子を栄助が食べると栄助は馬になってしまった。五郎は一人で這々の体で逃げ出した。 ある農家のお爺さんに話をすると、「東に歩いていくと、大きな茄子畑があり、一本の木に七つの実が一度に東に向いてなっている茄子があるから、それを友達に食べさせると良い。」と教えてくれた。何日もかけて言われたとおりの茄子を探し当てた五郎は、女将の留守に宿に戻り、馬なった栄助に茄子を食べさせると、栄助は無事に人間に戻った。 そしてその後も旅を続けた二人は、何年か後に村に帰り、栄助は財産の半分を五郎に譲り、兄弟のように仲良く暮らした。


◯馬のねがい

静岡県
昔、静岡に一人の馬方が住んでいた。この馬方は年老いた馬「アオ」をとても大切にしていた。ある夜の事、一人の六部が一夜の宿を求め、馬方は快く承知した。そして寝静まった真夜中の事、六部は布団の中で考えた。

「毎晩、布団にくるまって眠る事が出来たらどんなに良いじゃろう・・・」これから先、快く宿を貸してくれる家に巡り会えるとは思えない。いや、この家で最後かもしれない。ならば布団だけでもこっそり持って行こう。六部は布団を担いでこっそりと家を出ようとした。 すると何かが荷物を引っ張っている。振り返ると馬のアオが布団を咥えて六部を引き留めていた。アオは口を開くと驚く六部に向かってしゃべり始めた。 「オラはここの主人にずいぶん可愛がってもらった。でもオラはすっかり年をとっちまった、もう働く事は出来ない。死んだら極楽往生したいと思っておったがお経を読んでもらわなきゃ極楽には行けない。そこに六部のおまえ様がやって来た。そうだ六部のおまえ様にお経を読んでもらおう。そう思ってオラは今夜死ぬ事に決めた。どうか朝になったらお経を読んで下せえ・・・」
翌朝、すっかり反省した六部は涙ながらに昨晩の事を詫びたが、馬方は「まさか馬がしゃべるなんて」と笑って信じなかった。馬小屋に行き、馬方が声をかけたが反応が無い。馬方は驚いて大声で叫んだ。アオは眠るように死んでいたのだ。 二人はアオのお墓を作り、六部は願い通りにお経を読んで極楽に行けるように祈った。 馬でさえも信心深い心を持つ事がある。それはひとえに馬方が大切に育てたからだと人々は感心し、六部も心を入れ替えて旅を続けたという。


◯馬比べ

兵庫県
昔々、二人の旅人が旅をしていた。 一人の名は大工と彫刻の名人、左甚五郎(ひだりじんごろう)。もう一人の男の名は絵の名人で知られる狩野 法眼(かのうほうげん)と言った。 しかし長旅はしんどい。甚五郎は、近くにあった木で瞬く間に見事な馬を作り上げると、驚いたことに彫り物の馬は見事な馬になり、いなないたかと思うと走り出した。 「どうじゃ〜お主にも一匹作ってあげようか」と言われ、しゃくにさわった法眼は、「けっこう」とばかりに、なにやら筆をとりだして紙に馬の絵を書き出した。するとどうだろう。法眼が紙に向ってぷうぷう息を吹きかけると・・・紙の絵の馬が動き出し、ぽーんと絵から本物の馬が飛び出してきた。 こうして、それぞれ馬で旅を続けていると、二人の前に河が立ちふさがった。紙で出来た法眼の馬は水を怖がって河に入らない。仕方が無いので馬を担いで渡ることにした。法眼をよそに、甚五郎の馬はざぶざぶと平気に河を渡っていたが、途中でざぶんと水にもぐったかと思うと、馬はみるみるうちに流されてしまう。これは、木は軽いので水に浮いて流されるためだった。「木で出来た馬は流される運命じゃの〜♪」と愉快がる法眼。 なんとか川岸にたどりついた2人。そこへ突風が吹いてきて、法眼は馬と一緒に空高く飛ばされてしまった。「いくら立派な馬でも紙で出来た馬じゃのう〜」と甚五郎。 宿に着いた甚五郎。すると風に飛ばされた法眼と馬が、宿の前の木に引っかかってぶら下がっていた。法眼は木から下り、馬に息を吹きかけると、馬はまた紙の絵に戻ってしまった。 その夜のこと。甚五郎は馬を宿の前の木につないでいたが、その馬が突然の雷に打たれてしまった。雷に打たれた馬は焼けてしまい、可哀想に足一本残すだけとなり、甚五郎は悲しんだ。 さて、翌朝、先に宿を出た甚五郎に気がついた法眼は、紙から馬を出して甚五郎の後を追おうとするも、そこでハッとした。昨夜の雨漏りで、紙が濡れてしまい、絵の馬はにじんでいる。これでは馬が出て来るはずがない。法眼は猛然と甚五郎を走って追いかけていった。 それからまた2人は仲良く歩いて旅を続けたと言う。


◯馬の恩返し

山口県
昔、長門の宇部大字藤曲(ふじまがり)という所に、田んぼや山でカラス石を掘るのを生業(なりわい)にする男がいた。カラス石とは、今で言う石炭のことである。 さて、この男は一頭の馬を飼っていたが、この男ときたら馬を可愛がるあまり、重い作業道具も掘り出したカラス石も全部自分で担ぎ、馬にほとんど仕事をさせないのだ。この様子を見て馬鹿にする者もいたが、男はそんな事は気にも留めなかった。 そんなある日、男はいつものように山に入ってカラス石を掘っていた。この日は場所が良かったのか、意外にもカラス石がたくさん取れた。そこで男は下関へ行き、そこで取れたカラス石を売ることにした。 その帰り道でのことだった。カラス石が売れて懐が暖かくなった男は、途中で一杯引っ掛けて帰路についた。男は上機嫌で歩いていたが、宇部まであと一里という所で日が暮れてしまった。そして悪いことに、ここら辺りに住む盗賊に目をつけられてしまったのだ。 「身ぐるみ剥いで置いていけ!!大人しくすれば、命だけは助けてやる!!」刀を持った盗賊が男を囲む。普通なら「命だけはお助けを〜」とでも言うところだが、この男は違った。馬を可愛いがるあまり「馬だけは助けて〜」と言い、馬にしがみついたのだ。 しかし多勢に無勢、男は盗賊たちに袋叩きにされてしまう。「大人しくすれば、命を落とすこともないのに。」そう言って盗賊が刀を抜こうとした時、それまで大人しくしていた馬が突然盗賊に襲いかかったのだ。馬は後ろ足で盗賊を蹴り上げ、さらに逃げる盗賊を追いかけ回す。その夜は一晩中、盗賊の悲鳴と馬の蹄の音が宇部の山々に響いたそうだ。 翌朝、目を覚ました男は、なぜ自分が助かったのか最後まで分からなかったという。そしてその後も、男は今まで以上に馬を大事にし、相変わらずカラス石を掘って歩いたということだ。


◯神社の絵馬

熊本県
熊本のある農村では、お産の時には「山の神」と「ほうきの神」と言う産土神がやって来て、生まれる赤子の命を助けると言われておった。 そんな村の、ある家の奥さんが急に産気づいた。産婆さんが懸命に介抱するが酷い難産で、産婆さんはその家の旦那に「隣村までひと走りしてもう一人産婆さんを雇ってきてくれんか」と頼んだ。 外は土砂降りの大雨だった。旦那さんが夜の道を産婆さんを迎えに走っていると、途中で転んで足をくじいてしまった。痛くて走る事も出来ず、近くの神社に潜り込んで足の痛みが引けるのを待っていると、馬に乗った老人が神社の前まで走ってやって来て、大きな声でこう呼ばわった。 「山の神殿、私はほうきの神だが、この先の農家で酷い難産で苦しんでいる。是非とも貴殿のお力添えをお願いしたい」すると社の中から、「生憎だが今、わしの馬が足を痛めており、共に行く事が出来ぬ。何とか貴殿の力だけで助けてやってはくれまいか」 「それは残念。我が力が及ばぬ時は、赤子の命は助かるまいが致し方無い」そう言って山の神は再び馬を走らせて去って行った。 驚いたのは旦那さんが思わず社の中にかけ込むと、奉納された絵馬の額が落ちて壊れており、馬の足の部分の板が外れていた。旦那さんは自分の足の痛みも忘れて必死に絵馬を組み立て直し、元の場所に安置して真剣に祈った。「神様、馬の足が治りました。おらの家の赤子が無事生まれますよう、どうかお力をお貸し下さい」 と、突然絵馬に描かれた馬が実体化して高くいなないたかと思うと、何処から現れたかひとりの老人がその背にまたがり、旦那さんの家に向かってまっしぐらに駆けていったのだった。 旦那さんが家に戻って見ると、果たして奥さんは無事に元気な子を産み落としていた。以来、この旦那さんと奥さんはいよいよ信心が深くなり、あの時の神社に大きな立派な絵馬を奉納して、あの時の礼をしたそうな。


◯池月

鹿児島県
その昔、九州一大きな池田湖には不思議な事がよく起こった。日照りの時に水嵩が増えて近くの田畑を水浸しにしたり、風もないのに波が立ち、また湖の水が突然渦流をまいて水柱が天空に昇ることさえあったと。 この湖には、昔から白い龍が棲んでおり、不思議なことは全てその龍の仕業だと云われていました。 湖の近くには牧場があり、あるとき雪よりも白い母馬に仔馬が産まれ、仔馬も真っ白だった。 ある日二頭の白馬は牧場の柵を飛び出して人が寄り付かない池田湖に入ってしまう。馬飼いはこれに驚いたが「池田湖には近寄らない方がいい」と放っておくと、夕方になって二匹はちゃんと帰ってきた。それから毎日、白馬はどんな天気でも池田湖で泳ぐようになり仔馬もだんだん逞しく見事なものになった。 「遠い昔の山幸尊が竜宮から連れ帰った龍馬の子孫にちがいない」その評判は九州一帯に広まり、やがてついに鎌倉の頼朝公の耳にまで入った。「何としてもその子馬を手に入れたい」と頼朝公の命によって仔馬は鎌倉へ運ばれる事になる。 仔馬が鎌倉へ連れていかれた後、母馬は湖へも行かず草も食べなくなってしまったが、仔馬と別れて7日目、突然柵を乗り越え走りだして池田湖に飛び込むと円を描いて泳ぎだした。そして大きな渦流が起こるとその中に呑み込まれてしまった。 里の者は憐れな母馬を偲んで湖の岸辺に観音様を祭るようになり、一方仔馬は「池月」と名付けられ頼朝公の元で後に大層な活躍をしたという。

ウマのキャラクター

◯ ブルズアイ

ピクサーのアニメ映画『トイストーリー』に出てくる馬のキャラクター

◯ホーレス・ホースカラー【ディズニー】

ディズニー作品の名脇役 白黒時代からのミッキーの友達

◯ロディ【Rody】

ビニール素材で出来たおもちゃ

◯ミドリマキバオー

みどりのマキバオーの主人公 馬には見えない容姿を持つが、馬力と心臓が強く、競走馬としての能力は非常に高い。

◯マキシマス【ディズニー】

【塔の上のラプンツェル】主要キャラ フリン・ライダーを捕らえようする警護隊長の馬

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