蛇のお話し

◯男と蛇

イソップ物語
農夫の息子がうっかり蛇の尻尾を踏みつけた。蛇は向き直って彼に咬みつき、それで彼は死んだ。父親は怒り狂って斧をつかみ、蛇を追いかけると、尻尾の一部を切り落とした。そこで蛇は仕返しに農夫の牛の何頭かを咬み始め、彼にひどい損害を与えた。
それで農夫は蛇と仲直りするのが一番だと考え、その巣の入口に食べ物と蜂蜜を持って行き、言った。「恨みを忘れて許し合おうじゃないか。あんたが私の息子を罰したのは多分当然だっただろう。それから私の牛に仕返ししたのもな。だが、こちらが息子の敵をとろうとしたのも正しかったんだ。今はお互い満足したろうから、仲直りしようではないか?」
「いや、だめだ」蛇は言った。「贈り物を持ち帰ってくれ。あんたは息子の死を忘れられないし、私も尻尾を失くしたことを忘れられない。」
Injuries may be forgiven, but not forgotten. 受けた侮辱は許すことはできるだろうが、忘れることはできない。

◯蛇に嫁ぐ女を醫師もなほせる語:今昔物語集巻二十四

 今は昔、河内の國、讃良の郡、馬甘の郷に住んでいる人があった。身分は卑しかったが、家は大いに富み栄えていた。そのものに一人娘がいた。
 四月の頃、その娘は、養蚕のために桑の木に上って桑の葉を摘んでいた。木は道端に生えていたので、大きな蛇が出てきて木の根元に巻きついている様子が、道を歩いていた人にはよく見えた。そのことを知らされた娘が、驚いて下のほうを見ると、大きな蛇が木の根元に巻きついている。
 娘はびっくり仰天して木から転げ落ちた。その拍子に、蛇は娘にまといついて、娘の陰部の中にもぐり込んでしまった。娘は死んだようになって、木の根元に横たわったままになった。
 両親はその様子をみて嘆き悲しみ、医師を呼び寄せた。早速、その国に非常に名の知れた医師がやってきたが、蛇はまだ娘の陰部の中にもぐり込んだままだ。そこで医師がいうには、 「まず娘と蛇とを同じ床に乗せて、家に連れて行って、庭に置いてください。」 こういわれて、両親は娘と蛇を家の庭に置いたのだった。
 その後、医師にいわれるまま、粟の藁を三束焼き、それを湯につけて汁三斗をとり、その汁を煎じて二斗になし、いのししの毛十把を刻んで粉末にしたものを加えて、あわせ汁にし、娘を逆さづりにしたうえで、上向きになった女陰のなかにその汁を注ぎ込んだのだった。

 一斗入れたところで、蛇は離れて外へ出た。這って逃げるところを、打ち殺して捨てた。その際に、おたまじゃくしのような蛇の子が、いのししの毛を立てた姿で、五升ほども、女陰の中から出てきたのだった。娘はやがて目を覚ましたが、このことを語って聞かされると、「夢を見ていたようでした」と答えた。
 こんなわけで、娘は薬のおかげで助かったことを、ありがたく思ったのだった。
 その三年後、娘は再び蛇に侵入された。だがそのたびは、これも前生の宿因とて、治療することもなく、死んでしまったのだった。
 医師の力、薬の効能の不思議さについて、語り伝えられた話である。

◯アダムとイブの物語(創世記)

人間はなぜ孤立をもっとも怖れるのでしょうか?
それは「人間に内在する矛盾」に由来します。

人間は“意識”を持ってしまったがゆえに、人間をして、この世界の中でたった独りぼっちの、孤独 で、物におびえる一人の異邦人としてしまったのです。 フロムが述べるこの人間に内在する矛盾について考える前に、まず創世記の中の「人間の堕落の 物語」を共有したいと思います。

「創世記」(アダムとイブの物語)
神が天と地を造られた時、地上には木も草も生えていませんでした。 神は土で人を造り、その鼻に命の息を吹き入れました。 そこで人は生きたものとなりました。 神は東の方エデンに園を設け、人(男)をそこに置きました。 神は、食べる実のなる木を土から生えさせ、楽園の中央には“命の木”と“善悪を知る木”を生えさせ ました。 神は男を楽園に連れて行き、そこを耕させ、また守らせました。 神は男に命じました。 「あなたはどの木からでも心のままに実を取って食べてもいい。しかし“善悪を知る木”からは食べて はならない。その実を食べると死ぬであろう」

神は言いました。 「人が一人でいるのはよくない。あなたのためにふさわしい助け手を造ろう」 神は男を深く眠らせ、あばら骨の一つを取り、その骨で一人の女を造りました。 男は言いました。 「私の骨、私の肉、これは男から取られたのだから、これを女と名づけよう」 男は女と結び合い一体となりました。 二人とも裸でしたが、どちらとも恥ずかしいとは思いませんでした。

さて神が造られた生き物のうちで、ヘビが最も狡猾でした。 ヘビは女に言いました。 「楽園にあるどの木の実も食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか?」 女はヘビに言いました。 「私たちは楽園にある木の実を食べてもいいのです。ただ中央にある木の実だけは食べるな、触れ るな、死んではいけないから、と神は言われました」 ヘビは女に言いました。 「それを食べてもあなたがたは死ぬことはないでしょう。ただあなたがたの目が開け、神のように善 悪を知る者となることを、神は知っているのです」 女はその実を取って食べ、男にも与えたので、彼もその実を食べました。 すると二人の目が開け、自分たちの姿が裸であることがわかったので、いちじくの葉を腰に巻きまし た。

ある日、二人は楽園で神の足音を聞いたので、彼らは木の陰に隠れました。 神は呼びかけました。 「あなたはどこにいるのか?」 男は答えました。 「あなたの歩まれる音を聞き、私は裸だったので恐れて身を隠したのです」 神は言いました。 「あなたが裸であるのを誰が知らせたのか?食べるなと命じておいた木から、あなたは実を食べた のか?」 男は答えました。 「あの女が実をくれたので私は食べたのです」 そこで神は女に言いました。 「あなたはなんということをしたのです」 女は答えました。 「ヘビが私を騙したのです。それで私は食べました」

神はヘビに言いました。 「おまえがこんな事をしたので、おまえはあらゆる家畜、あらゆる野の獣よりも呪われる。おまえは一 生腹ばいで歩き、チリを食べなければならない。私は、おまえと女との間に、またおまえの子孫と女 の子孫との間に、敵意を置く。彼はおまえの頭を砕き、おまえは彼のかかとを砕くであろう」

女にはこう言いました。 「私はあなたの産みの苦しみを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。それでもなおあなたは夫 を慕い、彼はあなたを治めるであろう」

更に男に言いました。 「あなたが妻の言葉を聞き、私が食べるなと命じておいた木の実を食べたので、地はあなたのため に呪われ、あなたは一生苦しんで地から食物を取る。地はあなたのためにイバラとアザミを生じ、あ なたは野の草を食べるであろう。あなたは顔に汗してパンを食べ、ついには土に帰る。あなたは土 から取られたのだから土に帰る」

男は妻の名をイブと名づけました。 神は、男と妻のために皮の着物を造り、彼らに着せました。 神は言いました。 「見よ、人は我々の一人のようになり善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ“命の木”の実も食べて 永久に生きるかも知れない」 そこで神は、楽園から人を追い出し、エデンの園の東に“ケルビム”(智天使)と、“回る炎の剣”とを 置いて、“命の木”の道を守らせることにしました。

◯お ま ん 姫 蛇 物 語

これは、「土佐物語」という古い本(作者不明、宝永二年以後享保五年以前頃の著作といわれる)の中にも出てくる物語で、今に高岡郡南部高原の村々で語り伝えられている有名な伝説の一つです。 

今から四百年以上も昔のこと、今の高岡郡東又村志和にあった古城の城主志和和泉守宗重という人の愛娘におまんという姫がありました。この姫は、年頃になると、世にも美しい女性になって、やがて今の窪川町西原にあった西原城の城主西原藤兵衛重介という人のもとに嫁いで行きました。そして、この若い夫婦は、当時の乱世にもかかわらず、この上もなく幸福でした。 
それがある時、若い夫の藤兵衛にふと気にかかることが起りました。奥方のおまんが、急に元気がなくなり、昼も夜ももの思いに沈んでいる様子で、藤兵衛がそのわけを聞いてもただ一人考えこむばかりでした。
そして、ある日突然藤兵衛に、 「お別れするのは悲しいことでございますが、何事もわけを聞かずにお暇をいただきたいと思います」 と、涙ながらに申しました。藤兵衛がびっくりして、そのわけを問いただしてみますと、おまん涙を落しながら、「申すも恥かしいことながら、わけを申し上げねば一層お疑いを受けることでしょうから」と言いながら、
「夜々わたしの部屋に通ってくるものがあって、それがどこから入ってくるのかわからず、またどうした者であるかもわかりません。夢とも現とも覚えない中に明け方になって、わたしのもとから去って行きます、何か妖物の仕業と思いますが、こんなものに憑かれている身で、もうあなた様のもとにおることは出来ませぬ」 と言います。
夫の藤兵衛はそれを聞いて、 「それはきっと夢であろう、心配するな」 と言って、さまざまの祈祷などをしてやりましたが、おまんの様子は少しもかわらず、益々もの思いに沈むようになるばかりでした。
それは、大永七年(一五二七)三月二十二日という日の午後二時頃のことでした。夫の部屋にいたおまんが、突然狂おしげに立ち上り、夫藤兵衛に別れの言葉を告げながら縁の方へ走り出たと思うと、屋敷内の樹々の梢の上をまるで平地でも行くように歩いて、やがて土塀の上に立ちました。藤兵衛がびっくりして走りよりそれを引き留めようとすると、 「それではお別れでございます」

と声高く叫んで、塀から下へ真逆様に飛び下りました。藤兵衛や召使の者たちが急いで塀の上にあがってみると、おまんはいつの間にか二十尋もあろうかと思われるような大蛇になって、今しも眼下の深い淵の真中へ水煙を立てて沈んで行くところでした。これが奥方おまんの最後の姿でした。
この日から、西原城内はまるで火の消えたように静まりかえって、声高に話をする家来さえないほどに淋しくなりました。
  こんなことがあって、幾年かの歳月がたちました。ある時、おまんの父和泉守の召使いの一人であった次郎介が、城下を流れる四万十川上流の土手で葦刈をしていて、どうしたはずみか持っていた鎌を取り落し、急いであたりを探してみましたが見あたりません、あちらこちらと草を分けて探し回っている中に、やがて広々とした野原に出ていました。 
それは、今までに見たこともない野原で、帰る道もわからなくなって、足にまかせて先へ先へと歩いて行くと、やがて大きな築地が見えました。門がまえから屋敷の広さは、自分の主人の和泉守の屋敷よりもずっと立派なものでした。次郎介は、このお屋敷で道をたずねようと思って門の内に入ってみましたが、屋敷に人一人見あたりません。恐る恐る奥の方へはいって行ってみると、一人の女が機を織っていて、ふいに 「そこを行くのは次郎介じゃないか」 と言いました。次郎介がびっくりして見ると、それが西原城主の妻であったおまんでした。
  次郎介は二度びっくりして、 「お姫さまはどうしてここへ、あなたさまがお姿をかくされてからというものは、ご両親さまのお嘆きはまた格別でございました。母君はあまりのお嘆きのために、とうとうお亡くなりになりました。父君も毎日のお嘆きで、今日この頃はお命も心配なほどでございます。さあすぐにお帰り下さりませ、次郎介がお供してまいります」 と勢こんで申しますと、
「わたしがこのような有様になってからのご両親のお嘆きを思い、明け暮れ苦しみ、われながら浅ましいことに思うておりました。けれど前世からの宿業ですからどうすることも出来ませぬ。悲しいことながらこのまま命ながらえ、子供も出来ていることをお知らせして、少しはご安心もしていただこうとあれこれ思いながら、こうした世界に来た者ゆえ、人間の世にお便りすることも出来ず、そればかりを悲しみに思うておりました。今日はここの主人も、「あびょうし殿」というここから二十町ばかり北にある淵の主のところへ、一族の者共を連れて出ている留守中のことゆえ、これをよい折とお前をここに招きよせ、この屋敷を見せ、この有様をも父君に伝えたいと思うたので、お前の鎌をここへ隠したのです。探す鎌はこの機にかけてある、取って帰ってこの有様をくわしく父君に申上げておくれ、決して他人にいうてくれまいぞ」 という話でした。 
次郎介は頷いて、 「それではお子さま方はどちらに」 とたずねてみますと、 「あそこで昼寝をしている」 と答えます。
そこで、指さされたところへ行ってみると、小蛇が何匹となく重なりあってとぐろを巻いておりました。次郎介はその恐しさに声を立てることが出来ないほどでしたが、やがて気を取り直して、 「主人の留守の間にぜひお城へお帰りになって下さいませ」 と重ねて申しますと、おまんは涙にむせびながら、 「わたしもそうは思いますが、今では二度と人間の女に帰ることも出来ぬ身、お前はあきらめて主人の戻らぬ前に急いで帰っておくれ」 と急ぎ立てましたので、この上は仕方ないと別れを告げると、おまんも名残惜しげに見送ってまいりました。 

四五丁も来たと思うた時、もとの川原に出ていて、後を振りかえってみると、今まで歩いて来た道はどこにもありません。川には水が流れ辺りには草が生い茂っているだけで、もちろんおまんの姿は見えませんでした。恐しさに走るようにしてわが家に帰りつき、おまんとの約束も忘れて会う人毎にこの不思議を物語りました。聞く者の中には思わず身震いするものや、それを空言のように聞き流して信じないものもありました。けれども恐しいことに、次郎介が、間もなく物に憑かれたように狂い出し、やがてお前もつれて行くぞ、お前もつれて行くぞ、と大声に喚きちらしている中に行方知れずになりました。 
おまんの夫の藤兵衛は、この話を聞き伝え、おまんの宿業を憐れに思い、せめてその哀しい運命の苦しみを助けてやろうと考えて、淵の辺の雑林の中に祠を建てて祀り、槿花の宮と名づけたということでございます。おまんの父の和泉守も、志和の城下の天神さまの境内を選んでその霊を祀り、土地の人たちはこれを北野の天神と並べて今天神と呼び伝えたと言われております。 
今、窪川町の西方の四万十川にかかる窪川大橋をわたって北西に県道を五丁ばかり行くと、大井野と口神ノ川という二つの部落の境に近く、左手に雑木林のある小山が見え、そこに鵜の巣さまと呼ばれている古い祠を探し出すことが出来ますが、これが先の物語に出てくる槿花の宮の今日の姿であるということです。 

なお、ここで少しばかりこの物語について考えてみたいことは、土佐の淵や池に関する伝説の中に、このおまん姫蛇物語と同じ筋のものが幾篇となく採集されていることですが、これは古くから三輪山伝説(三輪式神婚説話)の名で全国的に知られている物語であることは前にもお話しした通りで、土佐物語という本が出された今から二三四十年前にすでにこのような筋で語り上げられていたということに深い関心をもちます。
 そして、今一つ注目したいことは主人公のおまんの名が、これまた全国的に大へん多く採集されているということで、すでにおまんガ淵、おまんガ井などという代表的な物語のいくつかが、他国で報告されています。これは決して偶然の一致とは思われず、かならずその流布に理由があったものと考えられますし、その昔この種の伝説を運搬して歩く人々の間に深いつながりのあったことが想像されてきます。 (土佐の伝説より)

◯たのきゅう

むかしむかし、あるところに、たのきゅうという旅の役者がいました。
 お母さんが病気だという手紙がきたので、大急ぎで戻る途中です。
 ところが、ある山のふもとまで来ると、日が暮れてしまいました。  すると茶店のおばあさんが、たのきゅうに言いました。 「およしなさい。この山には大きなヘビがいるから、夜は危ないよ」
 でもたのきゅうは病気のお母さんが心配なので、山へ登っていきました。  そして峠(とうげ)でひと休みしていると、白髪のおじいさんが出てきて言いました。
「お前さんは、だれだ?」
「わしは、たのきゅうという者じゃ」
 だけどおじいさんは、『たのきゅう』を『たぬき』と聞き間違えました。 「たぬきか。たぬきなら、化けるのがうまいだろ。さあ、化けてみろ。わしは大ヘビだ。わしも化けているんだ」
 大ヘビと聞いて、たのきゅうはびっくり。
「さあ、はやく化けてみろ。それとも、化けるのが下手なのか?」
 怖さのあまりブルブルとふるえていたたのきゅうですが、大ヘビに下手と言われて役者魂に火がつきました。
「下手? このわしが下手だと? よし、待っていろ。いま、人間の女に化けてやる」
 たのきゅうは荷物の中から取り出した女のかつらと着物を着て、色っぽく踊って見せました。
「ほほう、思ったより上手じゃ」 と、おじいさんは、感心しました。
 そして、 「ときに、お前のきらいな物は、なんじゃ?」 と、聞きました。
「わしのきらいなのは、お金だ。あんたのきらいな物は、何だね?」
「わしか? わしのきらいな物は、タバコのヤニとカキのシブだ。これを体につけられたら、しびれてしまうからな。さて、お前はたぬきだから助けてやるが、この事は決して人間に言ってはならんぞ。じゃ、今夜はこれで別れよう」
 そう言ったかと思うと、おじいさんの姿は見えなくなってしまいました。
「やれやれ、助かった」  たのきゅうはホッとして山を下り、ふもとに着いたのはちょうど夜明けでした。

 たのきゅうは村人たちに、大ヘビから聞いた話をしました。
「と、言うわけだから、タバコのヤニとカキのシブを集めて、大ヘビのほら穴に投げ込むといい。そうすれば大ヘビを退治出来て、安心して暮らせるというもんじゃ」
 それを聞いて、村人たちは大喜びです。  さっそくタバコのヤニとカキのシブを出来るだけたくさん集めて、大ヘビのほら穴に投げ込みました。 「うひゃーあ、こりゃあ、たまらねえ!」
 大ヘビは死にものぐるいで隣の山に逃げ出して、なんとか命だけは助かりました。
「きっと、あのたぬきのやつが、わしのきらいな物を人間どもにしゃベったにちがいない。おのれ、たぬきめ! どうするか覚えてろ!」
 大ヘビは、カンカンになって怒りました。  そしてたのきゅうが一番きらい物は、お金だという事を思い出しました。
 そこで大ヘビはたくさんのお金を用意すると、たのきゅうの家を探して歩きました。
 そしてやっとたのきゅうの家を探し当てたのですが、家の戸がぴったりと閉まっていて中には入れません。
「さて、どうやって入ろうか? ・・・うん?」そのとき大ヘビは、屋根にあるけむり出し口を見つけました。
「それっ、たぬきめ、思い知れっ!」  大ヘビは、けむり出し口からお金を投げ込んでいきました。

 おかげでたのきゅうは大金を手に入れて、そのお金で良い薬を買うことが出来たので、お母さんの病気はすっかり治ったと言うことです。

◯ヘビの尻尾と胴体

イソップ童話
 ある日、ヘビの尻尾が言いました。
「わたしはいつも一番後からついて行くけれど、たまには先頭になって歩きたいわ」
 頭や胴体は、みんな反対しました。 「きみはどうやって、ぼくらを引っ張って行くつもりなの? 目も鼻もないのに」  けれども尻尾は、言う事を聞きません。

とうとう胴体たちは、引き下がりました。  尻尾は大得意で、めくらめっぽうに胴体と頭を引きずって、めちゃくちゃに進みました。
そのうちにとうとう、石ころだらけの穴に落ちて、全身傷だらけになりました。

すると尻尾は、猫なで声で哀れっぽく頭に頼みました。 「お願いです、頭さん。助けて下さい。わたしが悪うございました」

 このお話しは、人に逆らって出来もしない事をしようとする、おろかな人をいましめています。

◯ヘビの宝

東京都の民話
 むかしむかし、江戸のある町で、たくさんのヘビが坂道の途中に集まって重なり、なわであんだおけのようになっていました。
 あまりにもめずらしい光景なので、坂道をゆきかう人々は足を止めてながめていました。
 するとその話を聞いた近くに住む十四歳の千吉(せんきち)と言う男の子が、急いでその坂へ走って行きました。
 そしてとぐろを巻いておけのように重なりあっているヘビの固まりの中へ、いきなり手を突っ込んだのです。
「おいおい、馬鹿な事をするな。ヘビにかみつかれたら、どうするんだ」
 見ている人たちが心配して言いましたが、千吉は平気な顔でニッコリしました。
 そして突っ込んだ手の先で何かをつかむと、引き出した千吉の手には古い銅銭が一枚にぎられていたのです。

 千吉は小さい時に死んだおばあさんから聞いた話を、ずっと覚えていたのです。
 千吉のおばあさんは、こう言ったのです。 「いいかい。  ヘビがたくさん集まっている所はヘビ塚と言って、その中にはヘビの宝があるんじゃ。  その宝を手に入れた者は運が開けて、一生お金に困らないというぞ。  もしもヘビ塚を見つけたら、怖がらずに手を入れてみなさい」
 おばあさんが言った事は、本当だったのです。
 そのヘビの宝である銅銭を大切にした千吉は、それからどんどん運が開けて大金持ちになったという事です。

◯ヘビの足

中国の昔話
むかしむかし、村人たちが集まって、お寺の掃除をしていました。
 掃除が終わると、お坊さんがお酒を入れたツボを持ってきました。
「ごくろうさまでした。少しですが、お酒をめしあがってください」
「ありがとう」
 みんなはお礼を言って、お酒を受け取りました。
 ところが村人は五人いるのに、お酒はツボに一人分しか入っていません。 みんなで飲むには、とてもたりません。
 すると、一人の男が言いました。 「では、こうしたらどうだろう。  みんなで地面に、ヘビの絵をかく競争をするのさ。  一番はやくかきあげた者が、一人でお酒をいただくんだ」
「なるほど、それは面白い。よし、それで決めよう」
「ではいくぞ。よーい、ドン!」
 みんなはいっせいに、ヘビの絵をかきはじめました。  すると一人の男が、一番はやくかきあげました。 「出来たぞ! おれが一番だ! あっははは。みんなには悪いが、この酒はおれがちょうだいするよ」
 男はそう言って酒ツボに手をのばそうとしましたが、ふと気がついて、 「しまった! これはしくじったぞ。ヘビに足をつける事を忘れていた」
と、あわててヘビの足をかきはじめたのです。  するとそれより先に、ほかの男がヘビをかきあげました。 「出来た。酒は、おれの物だ」
 男はそう言うと、お酒をおいしそうに飲みました。  はじめの男が残念そうに見ていると、酒を飲んだ男が笑って言いました。 「バカだな、お前は。  よく考えてみろ、ヘビに足があってたまるもんか。  そんなよけいな物をくっつけようとするから、こんなうまい酒を飲みそこねるんだよ」

 それからです、よぶんな物をつける事を『蛇足(だそく)』と言うようになったのは。

◯ヘビ女房

 むかしむかし、炭焼きがしごとの男がいました。
 この男、心はやさしいのですが、よめさんももらえぬほどの貧乏(びんぼう)でした。
 ある日のこと。  男が炭焼きがまに火を入れると、かまのうしろから大きなヘビがはいだしてきました。
「おっ、よく見かけるヘビだな。ああっ、かまに近づいちゃ、あぶないじゃないか。ほれ、あっちいけや」
 男はヘビを、外の草むらに出してやりました。  その夜、男の家に、美しいむすめがたずねてきました。
「わたしは、あなたを山でよく見かけていました。なんでもしますから、よめさんにしてください」  むすめをひと目見ただけで好きになった男は、よろこんでいいました。 「ごらんのとおりの貧乏で、何もないが、それでもいいなら」

 こうして、むすめは男のよめさんになったのです。  よめさんは働き者で、くらしむきもだいぶよくなってきました。  男はとてもしあわせでした。
 やがて、よめさんのおなかに子どもができました。  いよいよ生まれるというとき、よめさんは男にいいました。
「いまから赤んぼうを生みますが、わたしがよぶまでは、けっして部屋をのぞかないでください」
「わかった。やくそくする」
 だけど、赤んぼうの泣き声が聞こえると、男は思わず、戸のすきまから中をのぞいてしまいました。
「あっ!」  男はビックリしました。
 部屋いっぱいに大蛇がとぐろをまき、そのまん中に、生まれたばかりの赤んぼうをのせて、ペロペロとなめているのです。
 人間にもどったよめさんは、赤んぼうをだいて出てくると、かなしそうにいいました。
「あれほど、見るなとたのんだのに・・・。わたしは炭焼きがまの近くの池にすんでいたヘビです。
あなたが好きでよめさんになりましたが、正体を見られたからには、もう、いっしょにはいられません。
赤んぼうが乳をほしがったら、この玉をしゃぶらせてください。わたしは山の池にもどります」
 よめさんは赤んぼうと水晶のような玉をおくと、すがたをけしてしまいました。

 男はとほうにくれましたが、赤んぼうは母のくれた玉をしゃぶって、すくすくとそだちました。
「母親がいないのに、ふしぎなこともあるもんだ」
 玉の話はうわさになって、ついに殿さまの耳にもとどきました。
「その玉をめしあげろ!」
 玉は、殿さまにとりあげられてしまいました。
 玉をとりあげられた子どもは、お腹が空いてなきさけびます。  男はこまりはて、子どもをだくと、よめさんのいる山の池にいって声をかけました。
「ぼうのかあちゃんよう。どうか乳をやってくれ。あの玉は殿さまにとられちまったんだ」
 すると、よめさんがあらわれ、 「この子のなくのがいちばんせつない。・・・さあ、これをしゃぶらせてくだされ」 と、いい、またひとつ玉をくれると、スーッときえました。
 玉をしゃぶった子どもは、たちまちなきやんで、元気にわらいました。
 ところが、その玉もまた、殿さまにとりあげられてしまったのです。
 お腹の空いた子どもは、またなきさけびます。
 またまたこまった男は池にいき、ことのしだいを話しました。
 すると、あらわれたよめさんは、かなしげに目をふせて、 「じつは、あの玉はわたしの目玉だったのです。ふたつともあげてしまいましたから、もう玉はないのです」
「そ、それでは、目も見えないではないか、ああ、むごいことをしてしまった」
 男は、だいた子どもといっしょになきました。
 それを見たよめさんは、 「ああ、いとしいあなたやこの子をなかせる者は、ゆるさない。いまから仕返しをします。さあはやく、もっと高いところへ行ってください。・・・この子のことは、たのみましたよ」
 そういうと、よめさんは見る間に大蛇のすがたになって、ザブン! と池にとびこみました。
 池の水が山のようにふくれあがり、まわりにあふれだします。
 男はわが子をかかえ、むちゅうで高い方へかけのぼりました。
 のぼってのぼってふりかえると、池はふきあげるように水をあふれさせ、ふもとのお城まで流れていきます。
 そして、あっという間に殿さまもろともお城をのみこみ、どこかへおし流してしまいました。

◯お百姓と、その息子を殺したヘビ

イソップ童話
 ヘビがお百姓(ひゃくしょう)の息子の方へはい寄って来て、噛み殺してしまいました。
 お父さんのお百姓は、悲しくてたまりません。  それでオノを持ち、ヘビの穴のそばでヘビが出てきたらすぐに叩き殺そうと待ち構えていました。
 そのうちにヘビが一匹、穴から出てきました。
 お百姓は、 「それっ!」 と、オノを振り下ろしました。
 でもヘビは頭を引っ込めてしまい、オノはそばの岩を二つに割っただけでした。
 こうなると、お百姓はヘビに仕返しをされたら大変だと思って怖くなりました。  それでヘビに仲直りをしようと、言いに行きました。
 しかしヘビは首を振って、こう答えました。 「あなたもわたしも、今さら気持ち良くお付き合いする事は出来ません。  わたしはこの岩の裂け目を見るたびに。  また、あなたは息子さんのお墓を見るたびに。  嫌な事を思い出すのだから」

 このお話しは、深い憎しみを持つ人同士が、仲直り出来る事はめったにないと教えています。

◯ヘビがカエルをのむわけ

大分県の民話
 むかしむかし、神さまが世界中の生き物を作りましたが、まだどの生き物に何を食べさせるのか決めていませんでした。
 生き物たちは何を食べていいのかわからないので、お腹がペコペコです。
 そこで生き物たちは、神さまのところへ行って、 「神さま。早く食べ物を決めてください」 と、お願いをしました。
 すると、神さまが、 「明日の朝、みんなの食べ物を決めてやるから集まるように」 と、おふれを出しました。
 喜んだ生き物たちは、夜の明けるのを待って神さまのところへ出かけました。

 さて、ヘビがノロノロとはっていると、後ろからカエルがやって来て言いました。
「なんだなんだ、長い体で地べたをノロノロと。もう少しはやく進めないのかね」
「そんな事言っても、お腹が空いて力が出ないんだよ」  ヘビが、力のない声で言いました。
「ふん。そんなに事じゃ、昼になってしまうぞ。まあ、お前は後からやって来て、おれさまのお尻でもなめるんだな」
 カエルはヘビをバカにして、ピョンピョンと飛んで行きました。

 生き物がみんな集まると、神さまは生き物を次々に呼び出して、それぞれの食べ物を決めていきました。
「お前は、草を食べるがよい」
「お前は、花のミツを食べるよい」
「お前は、魚を食べるよい」
 でも、カエルは、なかなか呼ばれません。  怒ったカエルは、神さまの前に飛び出して言いました。
「早く、おれさまの食べ物を決めてくださいよ! おれさまが、一番先にやって来たのですよ」
 神さまは、うるさいカエルをジロリと見て言いました。 「よし、お前は、虫を食べるがよい」
「えっ? わたしの食べ物は虫ですか!?」  カエルは、ガッカリです。
 それでも食べ物が決まったので帰ろうとすると、神さまが言いました。
「待て。お前にはもう少し言う事がある。お前はここへ来る時、ヘビをバカにしてお尻でもなめろと言ったであろう」
「まあ、確かに。でもそれは、ヘビの奴があまりにもノロマですから」
「いいわけはよろしい。望み通り、これからはヘビにお前のお尻をなめてもらう事にしよう」
「とっ、とんでもない!」
 カエルはビックリして反対ましたが、神さまは許してくれません。
 その時からヘビはカエルを見つけると、すぐにお尻から飲み込んでしまうそうです。

◯踏みつけられたヘビ

イソップ童話
 たびたび人間に踏みつけられるヘビが、ゼウスの神の所に泣きつきました。
 すると、ゼウスは、 「もし、お前が始めに踏みつけた人に噛みついたら、二番目の人からは、お前を踏みつけない様に用心するはずだよ」

 このお話しは、始めに強い態度を示していれば、他の人もそれなりの対応をしてくれるという事を教えています。
 何事も、最初が肝心です。

◯ヘビになったマメのサヤ

千葉県の民話
 むかしむかし、ある村の役人のところに、はるばる京の都から清滝姫(きよたきひめ)という美しい娘が嫁入りして来ました。
 清滝姫は新しい生活に慣れてくると、すでに亡くなっている両親を供養する為に、村に立派なお寺を建てました。
 ところが、お寺の完成が近づいて来ると、村の南東の方角からお寺に向かってエノキの小枝が飛んで来る様になったのです。
「これは何か、悪い事が起こる前ぶれではないか?」  村人たちは気味が悪いので、都から有名な占い師を呼び寄せて占って貰いました。
 すると、 「これは南東の方角にあたる、染井(そめい)の峰(みね)の仕業である。  染井の峰の山が、この寺にエノキの小枝を投げつけるのじゃ。  染井の峰は、ここに寺が出来るのをよく思わず、こんな悪さをしておるのじゃろう」 と、言うのです。
 そして占い師は、お寺にエノキの木を植えればよいとつけくわえました。  村人たちは占い師が言葉通りに染井の峰からエノキの木を持って来て、境内(けいだい)に植えました。
 すると、おかしな騒ぎも治まって、お寺は立派に完成したのです。

 それから長い年月が過ぎて、清滝姫が建てたお寺は朽ち果ててしまいましたが、そのお寺の跡地で不思議な事がおこったのです。
 お寺の跡地の近くの高台に畑を作っていた村のお百姓(ひゃくしょう)が、大角豆(ささげ)というマメをまいたところ、とてもたくさんの収穫(しゅうかく)がありました。
 お百姓は喜んで取り入れをすると、このマメを煮て食べる為にサヤをむきました。
 するとむいた後に捨てたサヤがもぞもぞと動き出して、何十匹もの金色のヘビになったのです。
「な、な、なんじゃ。これは?」  お百姓は、ビックリです。
 お百姓は急いで袋にヘビを詰め込むと、マメをとれた畑へ持って行って土の中に埋めてしまいました。
 後から調べたところ、畑のある高台は清滝姫のお墓があったところで、あのヘビは清滝姫を守っていたという事です。

◯動物の言葉

セルビアの昔話
 むかしむかし、あるところに、とても正直で働き者のヒツジ飼いがいました。
 ある日の事、ヒツジ飼いがいつもの様にヒツジの世話をしていると、森の方からシュウーシュウーと不思議な音が聞こえて来ました。
「おや? 何だろう?」  ヒツジ飼いが音のする方へ行ってみると木が燃えていて、一匹のヘビが煙にまかれて苦しんでいます。
 このままでは、ヘビは焼け死んでしまうでしょう。
 ヘビはヒツジ飼いを見ると、苦しそうに叫びました。 「ヒツジ飼いさん。助けてください!」
「よし、待っていろ!」  ヒツジ飼いがヘビに長いつえを差し出すと、ヘビはつえを伝ってヒツジ飼いの腕にはいあがって来ました。
 そしてヘビはヒツジ飼いの首に、しっかりと巻き付いたのです。
 ヒツジ飼いはまっ青になって、ヘビを振り放そうともがきました。 「こら! 助けてやったのを忘れたのか!」
「大丈夫。怖がらないでください。わたしはヘビ王の息子です。父のご殿まで、わたしを連れて行ってください」
 そこでヒツジ飼いはヘビを首に巻き付けたまま、ヘビの言う方へ歩き出しました。
 ヒツジ飼いは長い間歩き続けて、やっとヘビのご殿の門までたどりつきました。
 ヘビのご殿の門は、たくさんの生きたヘビをあんで作ってありました。
 ヘビの王子がピューッと口笛(くちびえ)を吹くと、門はサッと開きます。
 ヘビの王子は、ヒツジ飼いに言いました。 「これから、父のところへ行きましょう。  父はきっと、お礼に金や銀や宝石をあげようと言うでしょう。  でも、そんな物をもらってはいけません。
 その代わりに、『動物の言葉がわかるようにしてください』と、頼むのです。  初めは嫌がるでしょうが、どうしてもと言えば望みをかなえてくれます」

 さて、ヒツジ飼いとヘビの王子がご殿ヘ入って行くと、ヘビの王は涙を流して喜びました。
「息子や。良く帰ってきたな。森で火事があったと聞いて心配していたぞ」
「はい。その火事にあって焼け死にそうだったところを、この方に助けていただいたのです」
それを聞いたヘビの王は、ヒツジ飼いに向き直って言いました。
「人間よ。息子を助けてくれてありがとう。お礼を差し上げたいが、何が望みだね」
 するとヒツジ楫は、ヘビの王子に言われた通りに言いました。 「はい、動物の言葉がわかる様にしてください」
「いや、それだけは、やめたほうがよい。  動物の言葉がわかる様になっても、もし、あなたがその秘密を誰かに話せば、あなたはたちまち死ぬ事になるのですよ。  望みなら、何か他の物をあげましょう」
「そうですか。  どうしてもいけないとおっしゃるのなら、動物の言葉はあきらめましょう。  金も銀も宝石も、他の物は何もいりません。  それでは、ごきげんよう」
 そう言って、ヒツジ飼いは帰ろうとしました。
 ヘビの王は、ヒツジ飼いを引きとめました。 「お待ちなさい。  あなたがそれほどまでに望むのなら、あなたの望みをかなえてあげましょう。  それでは、口を開きなさい」
 ヒツジ飼いが口を開けると、ヘビの王はその中につばをはきました。  それから今度は、自分の口の中につばをはく様にとヒツジ飼いに言いました。
 これを三回繰り返すと、ヘビ王は言いました。 「さあ、これであなたは、動物の言葉がわかります。  しかし、命が大切なら、どんな事があってもこの秘密を人に話してはいけません。  くれぐれも、気をつけるのですよ」
「はい。ありがとうございます」

 ヒツジ飼いはヘビの王と王子に別れを告げると、ヒツジの待っている牧場へ帰りました。
 間もなく二羽のカラスが飛んできて、そばの木にとまるとこんな事を話し出しました。
「知っているかい? あの黒ヒツジが寝ているところの事」
「ああ、黒ヒツジの寝ている下に、金貨や銀貨や宝物が埋まっているんだろう」
「そうそう。あたしらにはお金なんて何の価値もないけど、人間がこれを知ったら大喜びするだろうね」  これを聞いたヒツジ飼いは、すぐに主人に言いました。
「もしかするとこの下には、宝物があるかもしれませんよ」
 そして二人が地面を掘ってみると、何と荷馬車(にばしゃ)にいっぱいの宝物が出てきたのです。  するとヒツジ飼いの主人は、ヒツジ飼いににっこり微笑んで言いました。
「わたしはもう年だから、お金なんて必要ない。  でも、お前の人生はこれからだ。  これで家を建てて結婚して、幸せに暮らしなさい」
 こうしてヒツジ飼いは全ての宝物をもらって、家を建てて結婚しました。  そして今度は人をやとって、たくさんのヒツジやウシやブタの番をさせました。

 ある日の事、お金持ちになったヒツジ飼いが奥さんに言いました。 「明日はわたしがお金持ちになった記念日だ。働いているヒツジ飼いたちにごちそうをしてやろう。だから酒や食べ物を、たっぷり用意しておくれ」
 次の日、お金持ちになったヒツジ飼いは、奥さんと一緒にヒツジ飼いたちの小屋をたずねました。  そして山の様なごちそうを並べると、こう言いました。 「みんな、今日は食べて、飲んで、歌っておくれ。今夜はわたしがヒツジの番をするから、安心して楽しむといい」
 そしてお金持ちになったヒツジ飼いは、久しぶりに牧場へ行きました。

 さて、やがて真夜中になるとオオカミたちがやって来て、ヒツジの番をしている若いイヌに向かって話しかけました。 「おい、いつもの様にヒツジをもらうよ。もちろん、あんたにも肉をわけてやるからな」
 すると、若いイヌたちは尻尾を振って答えました。 「ああ、いいとも。おいしそうなやつをたのむよ」
 ところが、それを聞いた歯が二本しか残っていない年寄りのイヌが、若いイヌとオオカミにワンワンとほえました。
「なんて奴らだ! いいか、わしに歯が一本でも残っているうちは、ご主人さまのヒツジに指一本さわらせんぞ!」
 動物の言葉のわかるお金持ちのヒツジ飼いは、この話を全て聞いていました。
 夜が明けると、お金持ちのヒツジ飼いはやとっているヒツジ飼いたちに、
「あの年寄りのイヌは、大事にしてやりなさい。しかし若いイヌには、おしおきをしなさい」
と、言って、奥さんと二人でウマに乗って家に帰りました。
 お金持ちのヒツジ飼いがオスウマに乗り、奥さんがメスウマに乗ってるのですが、どうした事かメスウマは遅れます。
 それを知ったオスウマが、メスウマをせきたてました。 「どうした。もう少し早く歩けないのかい?」
 するとメスウマは、こう答えました。 「だって、あなたは一人乗せているだけですけど、わたしは二人乗せているんですもの。  奥さんと、奥さんのお腹の中の赤ちゃんをね。  おまけにわたしのお腹にも、あたしたちの赤ちゃんがいるのよ」
 ウマの話を聞いたお金持ちのヒツジ飼いは、うれしくなって笑い出しました。  それを見て、奥さんが不思議に思いました。 「何がそんなに、おかしいんですか?」
「いや別に、ちょっと笑っただけだよ」
「いいえ、何か訳があったんでしょう。その訳を教えてください」 「本当に、何でもないよ」
 お金持ちのヒツジ飼いは言いましたが、奥さんは承知しません。  奥さんは家へ帰っても、しつこく訳を聞きたがりました。
 そこでお金持は、 「わたしにはある秘密があって、もしお前に訳を話せば、その場でわたしの命はなくなってしまうんだよ」
と、言い聞かせました。  すると奥さんはあきらめるどころか、ますます話してくれとお金持をせめたてました。  そこでお金持ちのヒツジ飼いは覚悟を決めて、自分が死んだら入れてもらうかんおけを作らせました。
 そしてかんおけが出来上がると、家の前へ置かせて言いました。 「それでは、かんおけに入ってから話してやろう。  何しろ言ったとたんに、わたしは死んでしまうのだから」
 お金持ちのヒツジ飼いはかんおけの中に入ると、最後の思い出に辺りを見回しました。
 するとその時、二本しか歯のないイヌが息をきらせてかけつけてきました。
 そしてお金持ちのヒツジ飼いのまくらもとに座って、悲しそうになきました。
 お金持はそれを見て、イヌにパンをやる様に言いつけました。  けれどもイヌは、パンには目もくれません。
 そこへオンドリがやって来て、パンをせっせと突き始めました。 「この恥知らずめ! ご主人が死ぬっていう時に、パンなんか突いて」
 イヌがオンドリをしかりつけると、オンドリはすまして答えました。 「はん。死にたい人は、死ねばいいのさ。  バカバカしい。  奥さんのわがままの為に、死ぬなんて」
 それを聞いたお金持は、かんおけから起き上がって言いました。 「全く、その通りだ」
 そしてわがままな奥さんを、ピシャリピシャリと叩きました。  それからは奥さんはすっかりおとなしくなって、笑った訳を二度と聞こうとはしなかったということです。

◯蛇の天上のぼり

三重県の民話
 むかしむかし、大きな大きなカキの木があり、カキの実がすずなりになっていました。
 村人たちは、ここを通るたびに見上げては、 「もうそろそろ、カキの実が落ちてくる頃だ。雨でも降れば、すぐに落ちるぞ」
と、言っていました。

 ある日、急にあらしになって、大粒の雨がバラバラと降って来ました。
 村人たちはカキの実をひろおうと、カキの木のところへ行ってみました。
 ところが鈴なりになっているカキが、一つも落ちていないのです。
「おや? あれだけ雨が降ったのに、どうして一つも落ちないのだ?」
 村人たちが不思議に思ってカキの木を見上げると、何と大きな大蛇(だいじゃ)がすずなりになっていたカキの実を、一つまた一つと食べていたのです。
 やがて大蛇は全てのカキの実を食べてしまうと、そのまま天へとのぼりはじめました。
 さすがの大蛇もカキを食いすぎたのか、お腹をゴロゴロならしています。
 しばらくして大蛇の姿が見えなくなると、ふたたび大粒の雨が降って来ました。
 しかしその雨からは、カキの甘いにおいがします。 「ややっ、この雨は、天にのぼった大蛇のおしっこだ!」
 村人たちはあわてて、逃げていきました。

◯王子と指輪

インドの昔話
 むかしむかし、ある国に、若い王子がいました。
 この王子は、お母さんと二人で貧しく暮らしていました。

 ある日、お母さんは王子に一枚の金貨を渡して言いました。 「これを使って、楽な暮らしが出来るように考えてごらん」
 お母さんは王子に、知恵(ちえ)とお金のある立派な王子さまになってほしいと思ったのです。

 次の日、王子は町で頭に大きな袋をのせた男に会いました。 「もしもし、その袋には、どんな宝物が入っているんですか?」
「これはネコですよ。毛なみのよい上等のネコです」
 王子はネコが大好きだったので、大切な金貨をやってネコを一匹わけてもらいました。 「まあ、ネコ一匹で金貨をだまし取られるなんて、お前は何というバカ者でしょう」  お母さんは、ガッカリしました。  でも何日かたつと、また王子に金貨を渡して言いました。 「今度こそ、気をつけてお金を使うのですよ」
 ところが散歩に出てヘビ使いに出会った王子は、今度はヘビと金貨を取り替えてしまったのです。  お母さんはあきれて、 「もうわたしには、とてもお前のめんどうは見きれません。自分の力で、暮らすようにしなさい」 と、言うと、王子をおいたまま、おばあさんの住んでいる遠い国へ行ってしまいました。  王子はネコとヘビを連れて、トボトボと旅に出ました。  こうして王子は何年もの間、家から家へこじきをして歩きながら、ネコとヘビを大切に育てました。

 こうしたある日の事、王子は町でお母さんに出会いました。
 お母さんは、悲しんで言いました。 「いつまで、こじきを続けているつもりなの。そんな汚いヘビは、早く捨ててしまいなさい」
 王子は、悲しそうに言いました。 「ヘビくん、ごめんよ。ぼくがだらしないから、仲良しのきみとも別れなければならないんだ。本当に、ごめんよ」
 すると、ヘビが言いました。 「ああ、心やさしい王子さま。  あなたは良い方なのに、なぜ不幸な目にばかり会うのでしょう。  もし良かったら、わたしの国へ行きましょう。  わたしの父は、ヘビの国の王です。  父はわたしが世話になったお礼に、魔法の指輪(ゆびわ)をくれるでしょう。  でも指輪は、ぜったいに手放してはいけませんよ」
 こうしてヘビからもらった指輪をはめた王子はネコと一緒に旅を続け、深いジャングルにやってきました。
 日はとっぷり暮れて、どこまで行っても薄気味悪いけもののうなり声がします。 「疲れたなあ。  このジャングルが、わたしの国だったらいいのに。  大きなご殿に明かりともっていて、わたしを助けてくれた人たちと暮らせたらいいのになあ」
 王子が一人言をいったその時、たちまちジャングルは消えてなくなり、緑の木に包まれた輝くようなご殿が目の前に浮かび上がりました。
 ご殿の窓からは王子のお母さんや知り合いの人たちの、うれしそうな顔がのぞいています。
 王子はいつの間にか立派な王さまになって、お供をしたがえて立っていたのです。  魔法の指輪のおかげで王さまになった王子は、美しいおきさきをむかえて幸せに暮らしていました。

 ある日、隣の国の王さまが、この国の海辺を通りかかりました。
と、そこに美しい長い髪が、クルクルとマリとなって飛んできました。 「何と、きれいな髪だろう。  きっと、美しい姫が落とした物に違いない。  ぜひ、この人をきさきにむかえたいものだ」
 隣の国の王さまは、さっそくおふれを出しました。 「この髪の持ち主を連れて来た者に、たくさんのほうびをつかわす」
 海辺に住むおばあさんが、これを見てニヤリと笑いました。 「これは海に水浴びに来る、おきさきの髪に違いない。おきさきをだまして隣の国の王さまのところへ連れて行こう」

 次の日、海辺に水浴びに来たおきさきに、おばあさんはかなしげな身の上話しをしました。
「まあ、かわいそうなおばあさん」  やさしいおきさきは、おばあさんをご殿に引き取ってやりました。
 さて、おばあさんはご殿で働いているうちに、魔法の指輪の秘密を知ってしまいました。 「何という、すばらしい指輪だろう。あの指輪さえ手に入れば、もうこっちのものさ」
 ある日、おばあさんはいかにもつらそうに言いました。 「ああ、頭が痛くて割れそうだ。医者や薬では治せない。おやさしい王さま、おきさきさま。どうかちょっとだけ、指輪を貸してくださいませんか」
 お人好しの王子は、ついうっかり指輪を渡してしまいました。  そのとたん、おばあさんの姿は空にまいあがり、たちまち見えなくなってしまいました。
 隣の国の王さまは、毎日首を長くして、良い知らせを待っていました。 「王さま、やっと見つけましたよ。ごほうびをください」
 やって来たのは、あのおばあさんです。 「この指輪をはめて、姫を呼んでごらんなさい。そしておきさきになれと、命令すればいいのです」
 こうして隣の国の王さまは、指輪の力で王子のおきさきを自分の物にしてしまいました。
 かわいそうに指輪を取られた王子は、おきさきもご殿も家来もなくして、元のジャングルにネコと二人だけで立っていたのです。
「ヘビの言いつけを忘れて、指輪を貸したわたしがバカだった。これからは、またこじき暮らしだ」
 王子とネコは、またあてのない旅に出ました。  王子はやがて、隣の国のご殿の前に着きました。  そこでは貧しい人々が、おきさきから食べ物をもらっていました。
 王子とネコが落ちた食べ物を拾おうとすると、とつぜんネズミの大軍がやって来て、あっという間に食べ物をぜんぶさらってしまいました。
 さあ、ようやくネコの出番です。  ネコはカンカンに怒って、一番太った王さまネズミの首をつかまえてどなりました。
「こらっ。悪いやつめ! お前を食べてしまうからな!」
 王さまネズミは、震えながら言いました。 「どうか、お助けください。その代わり、何でも言いつけを守りますから」
「ふん、それじゃこうしよう。  わたしのご主人は、この国の王さまに指輪を取られて困っている。  取り返してくれれば、お前の命は助けてやろう」

 さて夜がふけると、大軍をひきいたネズミの王さまはご殿にむかいました。 「宝の箱を、探すのだ!」
「指輪を見つけて、王さまの命をお助けしよう!」
 ネズミの家来たちは手分けして、かたっぱしから宝の箱を開けてみました。 「あっ、あったぞ。指輪だ!」
「ばんざーい」
 こうして王子は、ネコのおかげで指輪を取り戻す事が出来ました。  王子が指輪をはめると、キラキラとかがやくご殿が現れ、家来が大勢集まりました。
 そして美しいおきさきが、うれしそうにかけよってきます。
 ネコとヘビを育てたお人好しの王子は、こうしてネコとヘビに助けられ幸せに暮らしたということです。

◯へび女房

男が山で女に出会う、その女は悲しそうで何か分けありのようだ。

男は女を家へ連れて帰って夫婦になる。 二人の間に子供ができたのだが、女は外に小屋を作ってもらい、そこに移り住みお産が終わるまで決して覗かないでくれと言う。男は承諾したのだが、小屋から赤ん坊の声が聞こえたときに、嬉しさのあまり小屋の中を覗いてしまった。
しかし、男が見たものは、生まれたばかりの赤ん坊を抱えながらとぐろをまく白い大蛇だった。 女の姿になった大蛇は、もう男とも子どもとも一緒には暮らせないと言う。女は自分の片方の目を取り出し、子どもにこれをしゃぶらせて育ててくれと言いその場を立ち去る。
男は女に言われたとおり目玉をしゃぶらせながら子どもを育てる。 しかし、目玉はだんだん小さくなっていきついには無くなってしまった。 男は泣く子どもの為女を捜しに行く。
山の奥深くの湖まで来たときに大蛇を見つけ、目玉がなくなったことを告げると、大蛇はもう一つの目玉を男に差し出した。大蛇は、これで目が見えなくなってしまうので、朝と晩に鐘を鳴らしてくれるように男に頼む。
男は約束を守り朝と晩に鐘を鳴らすことにするのだった。子どもは、少し成長すると大蛇のすむ湖に行き「おっかー」と呼んでみたが、 大蛇が姿を見せることは一度も無かった。

◯ムジナとマムシの恩返し

新潟県
昔、佐渡の国府川は長雨で水嵩が増していた。その川のほとりに権七という気の優しいおじいさんが住んでいた。
ある日のこと、権七は薪が残り少なくなったので国府川へ出かけた。権七は上流から流れてきた流木をすくいあげていると、今度はムジナ(狸)が流されてきた。権七はムジナを助けたが、また今度はマムシが流れてきたのでマムシも助けてあげた。
やがて、人間の男が流されてきた。ムジナは「人間なんか助けたってろくなことがない」と権七は、その言葉に耳を貸さず男を助けてやった。権七はムジナとマムシと男を家に連れて行き、一晩泊めてあげることにした。
だが男は、権七の家の仏壇に置いてあった小銭箱に目をつけていた。皆が寝静まった頃、男は仏壇に置いてあった小銭箱を盗み権七の家を後にした。朝になり、仏壇に置いてあった小銭箱がなくなっていること、助けた男が泥棒と知った権七は愕然とした。

あの小銭箱には、亡くなった妻のお墓を建てるために地道に貯めたお金が入っていたのだ。そんな権七の姿を見たムジナとマムシは、泥棒を懲らしめるために手分けして探し回ると、泥棒が隣村の茶店で酒を飲んているのを見つけた。
怒ったマムシは、泥棒のふくらはぎに咬みついた。泥棒がマムシの毒に痛み苦しんでいる所に、権七がやって来た。権七は、マムシに「男を許してやってほしい」と頼んだ。マムシは毒消しを吐き出し、権七がその毒消しを泥棒のふくらはぎに塗ってあげた。
泥棒の男は自分を許し、助けてくれた権七の寛大さに触れ申し訳ないことをしたと思ったのか盗んだお金を返し、どこかへ逃げてしまった。
この時に使ったマムシの薬が評判を呼び、人々が権七の家にどっと押し寄せた。権七はマムシの薬を作って売り、大金持ちになった。

◯五郎兵衛淵

秋田県
むかし秋田は横手市の五郎兵衛というお爺さんが畑でかわいらしい蛇を見つけた。
子のない五郎兵衛は連れて帰り、蛇に太郎と名づけ子のようにかわいがり育てた。しかし、太郎はドンドン大きく育ち、近所の人やお婆さんも怖がってしまう。
仕方なく五郎兵衛は太郎を泣く泣く大戸川へ放した。いつしかそこには淵ができ、淵にはに大きな蛇の影が出るようになった。太郎がヌシになったんだろうと噂になり、五郎兵衛淵と呼ばれるようになった。
そんなある時、お婆さんが病気になり寝込んでしまう。五郎兵衛は大雨の中横手の町まで薬を買いに走るが、戻る途中の大戸川の橋が流されて帰れなくなってしまった。
すると、川に大木のようなものがかかり、渡ることができた。五郎兵衛がよく見るとその大木は太郎だった。しかし太郎は五郎兵衛を無事渡した後、幾重にも折れ、濁流に流されてしまった。

◯ふしぎな玉

東北地方
子のないじっちゃとばっちゃがオンゴロという犬とネンゴロという猫をわが子のようにかわいがって育てていた。
ある日、じっちゃは畑でかわいらしい小さな蛇を見つける。この蛇もオンゴロ・ネンゴロと一緒に子どものように育てることにした。
しかし、ノロと名づけられた蛇は大変大きく育ち、近所の人々が怖がってしまう。仕方なく、ノロは山に返された。
その際ノロは育ててもらったお礼に何でも願い事を叶えてくれるふしぎな玉を置いていく。ばっちゃは玉に頼んで十七、八の男の子を出してもらう。

しかしこの子は乱暴な怠けもので、ついにはじっちゃとばっちゃが留守の間に玉を持ち出して姿をくらましてしまう。
オンゴロとネンゴロは玉を取り戻すため長い旅に出る。ついには突き止め、玉を取り戻すが、帰途に玉を魚にとられてしまう。
どうにか玉を取り戻してじっちゃとばっちゃの家に戻ったものの、オンゴロとネンゴロは疲れ果てて死んでしまった。

◯とろかし草

徳島県
落語にもなっている「人間を溶かす草」の話

昔ある所に清兵衛(せいべえ)というきこりがおった。
清兵衛が木を切っていたら、旅人がうわばみに襲われているところを見つけた。 どうすることもできないので、木に登って様子を見ていたが、旅人はうわばみに飲み込まれてしまった。
旅人を飲み込んだうわばみは腹がふくれて苦しいくなり、何やら黄色い草を食べ始めた。 すると、うわばみの腹がへっこみ、うわばみはスッキリして草むらに帰って行った。きこりはその黄色い草をひとつかみ持って村に帰り、その出来事を村人に話して聞かせた。が、その草のことだけは誰にも話さなかった。

まあ命拾いしたお祝でもしようかと、その夜村人は清兵衛の家に集まった。そこで村の一番の金持ちから「いっぺんに5杯ソバを食えたら田畑を一反やろう」と持ちかけられた。あの草のことを思い出した清兵衛は、自信たっぷりで挑戦したが、3杯以上が食べられない。そこで一度便所に行き、こっそりあの黄色い草を食べた。
だが、いつまでたっても清兵衛は戻ってこない。心配した村人が便所に行ってみると、清兵衛の着物だけ残っていて姿は消えていた。その黄色い草は、食べたものを溶かすのではなく、人間を溶かす草だったのである。

◯野々海の物語

長野県
昔、越後と信濃の国境に、野々海(ののみ)と呼ばれる池があった。ここには龍神とも白蛇とも言われる主が住んでおり、時々人間の美しい娘の姿を借りては池の上に現れた。
そんなある時、越後の国にある加茂が池の主が、この美しい娘を自分の嫁にしたいと言いだした。加茂が池の主はどろどろした池の底から毎日のように、「野々海の主よ、わしのところに嫁に来い」と叫び続けていた。野々海の主はその声を聴くと、身の毛もよだつような思いになるのであった。

ある日、野々海の池に加茂が池の主が人間に姿を変えてやってきた。「何故わしの嫁になってくれんのじゃ」と言う加茂が池の主と、それを突っぱねる野々海の主。今度の大雨の日に必ずお前を迎えにくるぞと言い残し、加茂が池の主は巨大な水柱を立てて帰って行った。
ちょうどその時、一人の旅の武士がこの光景を見ていたのであった。武士は、善左衛門と名乗って娘から今までの話を聞き、この美しい娘を何としても救おうと決心したのだった。それから数日間は何事もなく穏やかな日々が続き、その内二人の間に愛が芽生え始めた。
そして、ついに大雨が降りだし、加茂が池の主がやってきた。野々海の主は白蛇の姿となり、巨大な蛙の正体を現した主の首に巻きつき、善左衛門が刀で切りつけた。蛙はそのまま加茂が池へと逃げていき、二度と人間の前に姿を見せることはなくなったという。
そして野々海の主は、この時に死んでしまった。主のいなくなった野々海の池は水が枯れ果て、今では跡形もなくなっているという。そしてこの時善左衛門が切りつけた刀は、今でも名刀として大滝村に残っている。

◯勘安ペロリ

神奈川県
昔、小田原に勘安(かんあん)という力持ちで働き者の男がいた。この男は普段は気が弱いくせに、大好きな酒を飲むと気が大きくなるのが悪い癖だった。
ある年の秋、勘安は山に入り炭を焼いていた。 するとそこに小さな蛇がやってきて、勘安はビックリする。 たまたま通りがかった木こりがその小さな蛇を追い払ってくれたが、木こりはこんな小さな蛇に驚くなんて、臆病だなと笑って去って行った。 ほっとした勘安は酒を飲み始める。しばらくするとまたさっきの蛇が現れた。 酔っぱらってすっかり気が大きくなった勘安は、今度は蛇に驚かず、 「蛇なんか引き裂いて食ってしまうぞ!」と言う。 すると勘安の頭を何かがペロリと舐めた。振り返った勘安が見たのは、見たこともない大きな大蛇だった。 大蛇はまたペロリと勘安の頭を舐めた。 「やめろ!何するんじゃ。やめんとひどい目にあわすぞ!」そう叫ぶ勘安を大蛇はひとのみに飲み込んでしまった。 翌朝、勘安の炭焼き小屋を通ったきこり達は、勘安の一升徳利を見つける。 木こり達は口々に、「なんで、こんなところに、勘安の徳利が?」 「毎日酒を飲んでる勘安のことじゃ。ペロリと蛇にでも飲まれちまったんでねぇか。」などと笑いながら通り過ぎていった。

◯大懸山のうわばみ

広島県
猟師と大蛇の真剣勝負
昔、広島の大懸山に、野鹿を狙う五助という猟師と年老いたウワバミがいて、いつも同じ獲物を取り合っていました。今日もウワバミに野鹿を横取りされ、五助は「いつか勝負しないといけなくなるから覚悟しろ!」と言いました。
するとその夜、五助の小屋にウワバミの化身という一人の男が現れました。男は「本当に強い者は、勝負の前に自分の弱点を相手に知らせるという。それを伝えに来た」と言いました。五助は酒を酌み交わしながら「猟師の弱点は、火縄の火を消される事だ」と正直に話しました。そして五助とウワバミは、七日七晩たった日を勝負の時としました。

いよいよ勝負の日、五助の前に姿を現したウワバミは、予想通り雨や風で火縄の火を消そうと攻めてきました。銃を構える暇などなく嵐の中を必死に逃げ惑う五助は、どうにか桶の中に隠しておいた火縄をとりだし、岩の斜面の裂け目に身を潜めました。
裂け目の底で息を殺して待っていると、ウワバミがずるりずるりと岩の上を滑り降りてきました。ウワバミの弱点であるアゴの部分が五助の頭上を通過した瞬間、構えていた銃でアゴを撃ち抜きました。ウワバミはずるずるとがけ下に落ち、五助もウワバミの毒に当てられたのか、何日もの間寝込んでしまいました。
やがて元気になった五助は、がけ下に白骨化したウワバミの骨を拾い集め、黒焼きにしてたくさんの薬を作りました。この薬は痛み止めとしてよく効く薬として、里の人々にも分け与えたという事です。

◯大蛇の棲む沼

岩手県
昔、岩手の北上川の上流に光勝寺(こうしょうじ)というお寺があって、立派な和尚が住んでいました。中でも、母親と二人暮らしの幼い「おさと」は、とても和尚になついていました。
ある年の春、おさとと母親が裏山へワラビ採りに入った時の事。おさとは山の中で母親とはぐれてしまい、ひとり沼のほとりでしくしく泣いていました。すると、一人の若い男が声をかけてきて、「母親のところへ連れて行ってあげる」と、おさとの手を引いてくれました。
二人は仲よく野原を歩き、やがて母親の近くまでやって来ました。おもわず走り出そうとしたおさとに、若い男は「もう少しだけ、一緒にいてくれないか」と、悲しげな顔で引き止めました。
若い男が「なんて可愛いんだろう」と呟いた瞬間、おさとの悲鳴が響きました。おさとの悲鳴を聞いて駆け付けた母親の目の前には、大きな蛇が林の間を去っていく姿がありました。若い男は沼に住む大蛇の化身で、あまりの可愛さにおさとを飲み込んでしまったのです。

この話を聞いた和尚は、大いに悲しみ大いに怒りました。和尚は大蛇退治のため護摩壇 (ごまだん)を作り、断食して七日間の祈祷に入りました。和尚の激しい祈祷に大蛇は苦しみ、6日目の夜に再び若い男の姿になって、和尚のところへ命乞いに訪れました。
しかし和尚は「すぐに沼から立ち去れ」と大蛇を追い払い、護摩壇に向かって祈祷をつづけました。大蛇は苦しみながら、沼から抜け出て北上川へと逃げていきました。すっかり弱っていた大蛇はどんどん下流に流され、黒岩の里まで流されてきました。
大蛇は、やっぱり長年住み慣れた沼に帰りたいと思い、ヌッと首をもたげて振り返ったとたん、大蛇の体は固まりそのまま石になってしまいました。今でも北上川に、この石は残っているそうです。

◯千年大蛇と爺さん

京都府
昔、ある山にきこりの爺様が住んでおった。この爺様、若い頃は一日に100本もの大木を切り倒した力自慢の爺様だったが、今はすっかり年をとって一日に2本切り倒すのがやっとになっておった。
一方そのころ、この山に一匹の大蛇が通りかかった。この大蛇、千年も生きている力の強い大蛇だったが、今はすっかり年をとって三ヶ月もなにも食べていなかった。大蛇は、爺様を見つけると「やっと飯にありつける」と策を練ることにした。
そして、夕暮れになって爺様が山の中腹に差し掛かったとき、助けを呼ぶ声がした。爺様が声のする方向をみると、大蛇が大木に首を挟まれている。さすがに驚いた爺様だったが、このままでは大蛇は死んでしまうと思い、怖いながらも助けてやることにした。ところが、なんとか大木をのけてやると大蛇はニタリと笑って爺様に襲いかかってくる。大木の下には穴があり、大蛇は木に首を挟まれたふりをしていただけだったのだ。
大木をどけるためにヘトヘトになっていた爺様はなんとか応戦するものの、食われてしまいそうになった。すると、いつも仲良くしている動物たちが「あんな嘘をついて助けにきた爺様を食らうなんて、なんて卑怯者だ」と大蛇に栗を投げつけた。小さな動物たちに罵られた大蛇は、つい勢いで「穴を掘っていなくてもあんな大木くらいどけられる。なんならやってみせてやる」と言ってしまった。

そうして、大木は今度は穴を掘らずに大蛇の上に乗せられることになった。「ふもとに爺様たちが着くまでに、木をどけて追いついて、みんな喰ってやる」と息巻 いていた大蛇だったが、どう頑張っても抜けられなかった。悲しくなった大蛇が大声で泣いていると、「この馬鹿者が」と爺様が戻ってきて、大木を必死になっ てどけてやった。
へとへとになった大蛇と爺様は「昔だったらこんな大木くらい、なんてことはなかったのにな」とお互いに「年をとったものだ」と顔を見合わせて笑った。
大蛇は、これからは無理をせず山の奥深くにいって木の実や木の根を食べて生きると爺様に言い残して山の奥へと去っていった。爺様は、それからも毎日山に入り、2本切れたのも1本に減ってしまったがそれでも元気に暮らし、時々奥山を見つめては、あの時別れた大蛇を思ったという。

◯仙人のおしえ

徳島県
昔々、ある所に目の見えないおっかさんを持つ吾一(ごいち)という孝行息子がいた。吾一は毎日、おっかさんの目が治るように神様にお祈りしていた。
ある晩、そんな吾一の夢枕に神様が現れ、おっかさんの目を治すには、山の仙人の所へ行って頼んでみるとよいとお告げを下した。
翌朝、吾一は早速、山の仙人のもとを目指して家を出て行った。ところが吾一が歩いていくと、長者屋敷と百姓屋で呼び止められる。吾一が仙人の所に行くと話すと、長者さんからは「ここ3年も病で寝込んでいる娘の病気を治すにはどうしたらいいか?」
また、お百姓さんからは「家の裏に3本あるみかんの木が実をつけない。どうしたらいいか?」それぞれ仙人に聞いてもらうよう吾一に頼んだ。吾一はこれを快く引き受けた。
吾一はさらに急な山道を登って行く。ところが吾一の前に、到底登れそうにない断崖絶壁が現れた。すると、崖の穴から一匹の大蛇が出てきて「おまえ、どこへ行く?」と吾一に尋ねた。
吾一が震えながらも理由を話すと、「ワシは海に千年、山に千年、川で千年修行をしたが、いまだに天に昇れない。どないしたらよいか仙人に聞いてくれんかの?」そう言うと大蛇は、吾一を頭の上に乗せ崖の上に運んでくれた。
そして吾一は、とうとう山のてっぺんの仙人の家に着いた。吾一は仙人の家に上がると、早速尋ねたいことがあると言う。すると、仙人は今日は3つしか聞くことが出来ないと言う。しかし、困ったことに吾一の聞きたいことは4つある。(おっかさんの目のこと、長者の娘の病、みかんの木のこと、大蛇が天に昇ること)
吾一は悩んだが、自分のおっかさんのことはまた今度聞けばよいと思い、他人の願いを優先させた。
吾一は仙人に礼を述べ、仙人の家を後にした。そして崖で待っていた大蛇に、淵の中の金の玉を取れば天に昇れると仙人の言葉を伝えた。すると、大蛇は口から金の玉を出した。金の玉は黒雲を呼び、大蛇は黒雲に包まれると、龍に姿を変え天に昇っていった。そして、金の玉をお礼として吾一に残していった。
百姓屋まで戻って来た吾一は、みかんの木に実がならないのは根元に金気(かなけ)の物が埋っているためと伝えた。試しに根元を掘ってみると、何と小判が入ったつぼが3つ出てきた。家の主人はたいそう喜び、吾一はお礼に小判のつぼを1つもらった。
そして長者には、娘の病気は、娘が始めて見た若者を婿にすれば治ると伝えた。その時ふすまが開き、吾一は病に伏せている長者の娘を見た。吾一は美しい娘を見てびっくりして、飲んでいた茶をこぼしてしまった。これを見た娘が笑ったので、長者はたいそう喜んだ。なにしろこの3年間、娘が笑ったことはなかったからだ。そして長者は吾一を娘の婿と決めた。
家に帰った吾一は、事の一部始終をおっかさんに話し、目の見えないおっかさんに金の玉を触らせて上げた。すると何としたことか、おっかさんの目がいつの間にか見えるようになっていたのだ。それから吾一は長者の娘と夫婦になり、おっかさんと3人で幸せに暮らしたと言うことだ。

◯白べん黒べん

高知県
昔、高知県宿毛(すくも)の山奥に、一人暮らしの猟師が住んでいました。猟師は、白べんと黒べんという優秀な猟犬を飼っていました。
いつものように2匹の犬を連れて、山へ出かけましたが、どういうわけか一匹のウサギもとれませんでした。猟師は、横瀬川へ沿ってどんどん山奥へ入っていきました。
猟師が淵のところで一休みしていると、小さな蛇が足に噛みつきました。猟師は山刀を蛇に向かって振り下ろしましたが、小さい蛇は身をかわして淵へ逃げていきました。すると、淵はごうごう渦を巻き始め、気味が悪いと思った猟師は家へ帰ることにしました。
帰る途中、松の大木のような巨大な大蛇と遭遇しました。猟師は、鉄砲を撃ちまくりましたが大蛇はびくともしませんでした。猟師は運を天に任せて、特別な弾である命玉をぶっ放しました。
すると、命玉が効いたのか、大蛇は横手川へ落ちていきました。猟師は「二度と大蛇が生き返らないように」と、うろこを剥いで家に持ち帰りました。

その夜、猟師が眠りについていると、メスの大蛇が猟師の家ごとキリキリと締め上げ始めました。猟師ははね起きて、あらん限りの弾を撃ちまくりましたが、メスの大蛇は夫の敵とばかり家を破壊し始めました。
猟師は崩れた家の下敷きになり、「白べん、黒べん、頼むぞ」と言いながら意識を失いました。白べんと黒べんは、狂ったように吠えながら大蛇にとびかかりました。
やがて夜が明け、猟師がようやく家から這い出してみると、大蛇の姿も犬の姿もありませんでした。猟師は「白べーん、黒べーん」と叫びながら、山へ入って行き、そのまま帰ってきませんでした。

◯鏡沼

福島県
ある日、南会津下郷(しもごう)の大蔵(たいぞう)という名の鉄砲撃ちが、猟犬のアカとともに獲物のない山を深入りし、霧に巻かれて道に迷ってしまう。
ふと足下に蛙がおり、大蔵がその蛙について行くと鏡の様に静まった水面を持つ沼があった。仕方がないので、霧が晴れるまでその沼のほとりで休むことにしてしばらく寝ていると雰囲気が妙になり、大量の蛙たちが大蔵の後ろの木に登りはじめた。
そして霧の中、水面の上に一人の美しい女が現れた。女は大蔵に向かって言う。「私の楽しみを取るんじゃないよ。」
これは物の怪にちがいないと思った大蔵は女に向かって火縄銃を放った。すると雷鳴がとどろき、辺りは大嵐になった。女は白い大蛇に姿を変え鎌首をもたげ、まさに大蔵に襲いかかろうとした。

しかし、大蔵の弾はあやまたず白蛇を貫いており、大蛇は崩れ落ち、そのまま沼に沈んだ。大蔵は間一髪のところで助かった。
大蔵を沼に導いた蛙は、自分たちを食う大蛇から助けてもらいたくて大蔵を呼んだのだろう。この蛙はモリアオガエルと呼ばれている。


◯幽霊になったヘビ

大分県
蛇が美しい女に化けても足がないので幽霊じゃん
ある山の中に娘の姿に化けて現れ、山道を通る村人たちをからかって遊ぶタヌキがいた。友だちのヘビはそんなタヌキを見て、自分も娘に化けて村人をからかってみたいと言う。
タヌキは「化けるには自分の毛をひとつまみ頭に乗せないといけない」しかしヘビには毛がない。そこでヘビはほんの数本はえているまつ毛で化けてみることにした。
まつ毛は本数が少ないので、ヘビは毎日少しずつ数本のまつ毛を痛い痛いと泣きながら抜き、両手いっぱいの毛を集めた。少し毛が多すぎる気もするが、とりあえずタヌキは化け方を教えた。
いよいよ村人が通りかかったとき、ヘビは娘に化けたが…毛が多すぎたのか、正体がヘビだったためか、恐ろしい山姥のような姿になってしまい、からかうどころか村人は一目散に逃げて行ってしまった。


◯麦わら大蛇

広島県
昔々、広島県山県(やまがた)郡の小さな村に、働き者の嫁さんと、村一番ぐうたらな婿さんの夫婦が住んでおった。夫婦はたいそう仲が良かったそうじゃ。
ある日、婿さんが庭で日向ぼっこをしていると、スズメが婿さんの鼻先に降りてきて、「加計(かけ)の寺尾の岩山で、金やら銀やら出るそうな、ちゅんちゅん♪」と、鳴いたそうな。
目を覚ました婿さんは、早速加計の岩山に出かけることにした。嫁さんは呆れながらも、弁当等を持たせて婿さんを送りだしたそうな。
婿さんは一日がかりで加計の寺尾の岩山にたどり着いた。そうして婿さんは毎日毎日岩山を掘り返して、とうとう本当に洞窟の中で金鉱を掘り当てたそうじゃ。じゃが、あまりにたくさんの金だったので、婿さんは一度家に戻って、嫁さんを呼び、金を運ぶ道具を持ってくることにした。
岩山を離れる前に、婿さんは金が誰にも見つからないように、近くから麦わらを持ってきて大きな蛇の形にして洞窟の入り口をふさいだそうじゃ。ところが婿さんが家に戻って金の話をしても、嫁さんは稲刈りの準備があるからと言って運ぶのを手伝ってくれんかったそうじゃ。

仕方なく婿さんは一人で岩山に戻って行った。ところが岩山に戻ってみると、麦わらの大蛇がなんと本物の大蛇に変わっておった。大蛇に散々に追いかけられて、婿さんは一欠片の金も持たずに逃げ出した。そうして何とか村の近くの峠まで逃げてきて、そこで初めて婿さんは眼下一面に広がる田んぼを見たそうじゃ。
婿さんが見たものは、見事に実った稲が夕日に輝き、風に揺れて黄金の波をうっている景色じゃった。その見事さに婿さんはもう夢中になってしもうた。「これこそ、本当の黄金じゃ!」と婿さんは喜んで家に戻っていった。
金や銀はとうとう手に入らなんだが、それよりずうっとええもんを見つけた婿さんは、それからというもの仕事に精を出し、嫁さんと一緒にいつまでも幸せに暮らしたということじゃ。

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