辰にまつわる昔話

◯竜神様と樵

青森県

 むかし、ある山奥で樵(きこり)が三人山小屋(やまごや)に泊って山仕事をしていたそうな。  ある日、仕事が終ってから、山小屋で晩飯(ばんめし)をすまして夜話(よばなし)をしていたと。  そしたら、そのうちの一人が突然、ウーンとうなって苦しみ出した。顔色がだんだんに青くなって、いまにも死にそうになったと。  「お、おい、どうした」
 「どこがあんべえ悪(わ)りいだ」
 「ウーン、下っ腹が痛ぇだ」
 「ん、分った。ここか」 と、二人が両脇からその男の下っ腹に手をのばしてさすってやったら、腹が変にふくらんで、腹の中で何かが、ゴニャラ、ゴニャラ動いている様子だと。    「横になれば、楽になる」
と、その男を寝かせたと。  寝かせてみて気がついた。何と、男の尻の穴に、地面から出て来た毛むくじゃらのごっつい手が、入っていたと。  二人はびっくりして、  「な、な、なんだ、これは」
と、その手を抜こうとしたけど、なんぼ引っ張っても、手は抜けないのだと。  二人は怖ろしくなって、  「ば、ば、化け物だぁ」
 「ウヒャー」
と、逃げてしまったと。  

   残された男は、ただもう、脂汗流してうなるばかり。  そのうち、どこからか、割れ鐘を打ち鳴らしたような声が聞こえてきた。    「わしは、この沢にいる大蛇じゃ。間もなく百年の行(ぎょう)が終わるところだ。行が終われば、わしは海へ行く。海であと百年の行をして竜になる。近いうちに、三日間大雨を降らせる。その水に乗って海へ出るが、この小屋の側に桂の木がおがっているじゃろ、あの木がじゃまだ。あの木を倒してくれろ」
と、いっているんだと。  樵は、苦しいのをがまんして、  「切り倒してやりたいども、おら動けん」
というと、そのとたんに、尻の穴の手がスポンと抜けて、元の身体になったと。  樵は喜(よろこ)んで、桂の木を切り倒して炭に焼いてしまったと。  炭焼きが終った夜から、山が鳴って、大雨が降り出した。  三日目に樵は、大蛇がいる穴を見に行ったと。  大蛇は、たった今、その穴からウネウネ出ていったところだった。  樵は、びくびくしながらその穴の中へ入ってみた。そしたら、穴の奥に、ピカピカ光るものがある。そろりそろり近づいて、よくよくみたら、何と、でっかい金の塊(かたまり)だったと。

   「はあ、あの大蛇が、おらにお礼にこの宝物授けてくれただな」
 樵はその金の塊もらって、いっぺんに大分限者(おおぶげんしゃ)になったと。  逃げて行った二人は、それからのちも何もいいことなくて、一生貧乏で暮らしたと。

 とっちぱれ。 


◯竜神伝説

新潟県

 むかし、越後の南のはずれに、妻有の里・芦ケ崎という村がありました。  ある年、長い日照りが続き村人はヒエやアワどころか水一滴すらなく苦しい生活をしていました。  そんなある時、一人の青年が、天上山へ何か食べるものはないかと捜しにでかけたところ昼寝をしている龍を見つけました。そばに卵があったので龍が眠っているすきの卵を盗み出しました。そして、その大きな卵を村に持ち帰り、村人と相談した結果、せめて年寄りと子供にだけでも食べさせることにしました。  卵を割り始めると、卵の中の龍の子が母親龍に助けを求めました。するとそこへ、怒り狂った龍が現れ、村人を食い殺そうとしました。庄屋をはじめ村人は必死に「子供だけは助けてほしい」と龍に頼みました。龍はそんな必死の村人に心を打たれ、村人のために三日三晩雨を降らせ、池を作ってやりました。  村人たちは喜んで龍に御礼をいうと、龍は「この池は、お前たちの美しい心の現れだ。しかし、人の心の曇るとき、この池は涸れてしまうであろう」と言い残して消えてしまった。村人はこの池を『竜ヶ窪』と名づけてたいせつにし、神社を建てて龍神様をおまつりしたそうです。

伝説1
 その昔、ある晴れた日信州のキタノの天神参りに言った帰り道、暑気をさまそうと、竜ヶ窪の池に入った。中ほどまで泳いで行くと、不思議に霧が立ち始めた。あわてて岸へ引き返したが、にわかに霧が広がり空は雨空となった。着物を着る暇もないくらいに急いで家へ向かって逃げた。その人の逃げる通りに、黒雲と雨が迫っていった。その人は寝込んで死んでしまった。これは竜ヶ窪の池の主に追われて死んだのだという。

伝説2
 竜ヶ窪の池も昔は大樹老木に覆われて、陽光も通わぬほどだったという。その昔、お寺の建立の話がまとまり四方から木材を集めた。この竜ヶ窪の池の木を切ることになった。倒すとき思うようにならず、老木は池の中に転がり込んだ。人手を借りて一度引き上げたのだが、翌日行ってみるとまた前と同じ池の中に入っている。池の主の許しがないものと、引き上げることをやめた。その老木は今も池の底で朽ちることなく、その姿をとどめているという。


◯たましいが入った竜

栃木県の民話

むかしむかし、宇都宮(うつのみや)に、うるし商人の武太夫(たけだゆう)という男がいました。
 武太夫は大金持ちでしたが、それにはわけがありました。  数年前のある日、山奥の谷川のふちの底に、大量のうるしを見つけたのです。  うるしは、うるしの木の皮から取れる汁で、おわんなどのぬり物に使われます。  そのうるしが長いあいだ水に運ばれて、ふちの底にたまったのです。  うるしは高価な物で無断で取る事を禁じられていましたが、武太夫はこの谷川の底のうるしを少しずつ売り大金持ちになったのです。  武太夫は秘密のうるしを、いつまでも自分だけのものにしておきたいと思いました。  それで腕の良い細工師(さいくし)に恐ろしい竜の細工をつくらせて、人が怖がってよりつかないように、うるしのあるふちの底に沈めたのでした。  しばらくすると竜の細工は上流から流れてくるうるしや水あかなどがついて、本物の竜のようになっていました。

 ある時、武太夫は十四歳になる一人息子の武助(たけすけ)を連れて、山奥のふちへ行きました。  そして、うるしの秘密を話すと、 「このうるしは、わしらだけの物じゃ。わざわざ木を切りつけて汁を取らなくても、いくらでもここへたまっておる。いいか、わしがするのをよく見て、うるし取りの練習をするんだぞ」
 武太夫は息子にいいきかせて、親子でふちへ入っていきました。  すると竜の細工が、とつぜん頭を動かしたのです。 「おとう! 竜が! 竜が動いた!」
「何を馬鹿な。水の動きで、そう見えるだけだ」 と、 武太夫は言ったものの、見てみると竜が大きな口を開けて息子に襲いかかったのです。  細工の竜は水の中にいるうちに魂が入って、いつしか本物の竜になっていたのです。  あわてた武太夫は息子を助けようとしましたが、竜が相手ではどうにもなりません。 「武助ー!」
「おとうー!」
 やがてふちの水の上に、二つの死体が浮かびあがって下流へ流れていきました。  二人の死体は二日目になって、村に近い川原で引き上げられました。  取り調べの結果、武太夫はうるしの盗み取りをしていた事がわかりました。  そして罰(ばつ)として新しく建てたばかりの家や財産は、全て取り上げられてしまったのです。  あとに残された武太夫の父親と奥さんは、とても貧しい生活を送ったという事です。


◯お姫さまとドラゴン

スペインの昔話

むかしむかし、ある国に、とても立派な一人の王さまがいました。  その王さまには、三人のお姫さまがいます。  上の二人のお姫さまは、おしゃれ好きでわがままでしたが、一番下のお姫さまはお父さん思いのやさしい娘です。
 ある日の事、王さまは遠い国へ旅をする事になりました。  王さまは、お姫さまたちに尋ねました。 「おみやげには、何を買ってきて欲しいんだね?」
 一番上のお姫さまは、 「あたしには、金の着物を買ってきてちょうだい」
 二番目のお姫さまは、 「あたしには、銀のがいとうを買ってきてね」
 そして、一番下のお姫さまは、 「あたしには、バラのお花を買ってきてくださいな」
 そこで王さまは遠くの国で用事をすませると、お姫さまたちへのおみやげを買う事にしました。  金の着物と銀のがいとうは、すぐに買う事が出来ました。  ところがバラの花だけは、売っている店がどこにもないのです。 「困ったな。バラの花がないと、あのやさしい姫がガッカリするだろうなあ」
 でも、ないものは仕方がありません。  王さまはあきらめて、帰る事にしました。  帰る途中、森の中を通っていると広い広い庭がありました。  その庭にはバラのしげみがあって、美しいバラの花がたくさん咲いていたのです。 「ああ、よかった。姫へのおみやげが見つかったぞ」
 王さまは大喜びで、バラの花を取るために馬からおりました。  そして王さまが一番美しいバラの花を見つけて取ったとたん、目の前に恐ろしいドラゴンが現れたのです。 「おい! 誰に許してもらって、そのバラの花を折ったのだ!」
 ドラゴンは、おそろしい顔で王さまをにらみつけます。 「わっ、わたしは、旅から帰るところですが、三人の娘におみやげを買ってやると約束をしてきました。  上の二人の娘にやる金の着物と銀のがいとうは町で買う事が出来ましたが、一番下の娘に約束したバラの花だけは、手に入れる事が出来ませんでした。  それでつい、この美しいバラの花を、いただこうとしたのです」
 王さまが説明すると、ドラゴンは言いました。 「金の着物や銀のがいとうではなく、バラの花が欲しいとは、一番下の娘は心のやさしい娘だな。  ・・・よろしい。バラの花を折った事は許してやるし、そのバラの花もあげよう。  そのかわり、一番下の娘をここに連れて来るのだ」
「娘を? しかし、それは」
「いいな! もし約束をやぶったら、お前の命はないぞ」

 さて、王さまがお城に帰ると、上の二人のお姫さまが、さっそくおみやげをねだりました。 「お父さま、あたしの金の着物は、忘れなかった?」
「あたしの銀のがいとう、ちゃんと買ってきてくださった?」
 王さまは二人に、おみやげを渡しました。
「うわ、すごい。この金の着物は、あたしの着物の中で一番きれいよ」
「この銀のがいとうは、あたしにとってもよく似合うわ」
 一番下のお姫さまは王さまの様子がなんとなく悲しそうなので、何も言わず黙っていました。  すると、王さまが言いました。 「姫、これは、お前に頼まれたバラの花だよ」
「まあ、すてき。こんなきれいなバラのお花、見た事がありませんわ」  お姫さまは、心から喜びました。  それを見て王さまもニッコリしましたが、すぐにまた悲しそうな顔をすると自分の部屋に入ってしまいました。  それに気づいた一番下のお姫さまは、王さまの部屋に行って尋ねました。 「お父さま。どうして、そんなに悲しそうにしていらっしゃるのですか?」
「いいや、何でもないよ」
「いいえ、きっと心配な事が、おありにちがいありません。どうか話してください」
 そこで王さまは、わけを話しました。 「実は、バラの花がどうしても買えなかったのだよ。  帰りがけに広い庭に咲いていたきれいなバラの花を見つけて折ったのだが、そうしたら急にドラゴンが現れて、お前を連れて来いと言うのだよ」 「ドラゴンが・・・」
「そうだ、わたしはどうすればいいのだ」
 悲しむ王さまに、お姫さまは言いました。 「ご心配なく、お父さま。あたし、ドラゴンのところへ参ります」
「しかし、お前にもしもの事があったら」
「いいえ。あたしに何かがあってもこの国は大丈夫ですが、国王でいらっしゃるお父さまに何かがあっては、この国は大変な事になりますから」

 次の朝、王さまとお姫さまは馬に乗って、ドラゴンのいる庭に出かけました。  けれどもそこには、誰の姿もありません。  そこで王さまとお姫さまは庭を通って、立派なご殿の中に入っていきました。  中に入っても誰もいませんでしたが、食堂のテーブルの上には二人の為に用意したと思われる、とてもすばらしいごちそうが並んでいました。  二人はお腹がペコペコだったので、喜んでごちそうになりました。  それから庭に出てしばらく散歩をしましたが、やはり誰もいません。  そして夕方になって二人がご殿に戻ると、食堂のテーブルにはまたすばらしいごちそうが並んでいました。  二人が夕食をすませて寝室に行くと、ちゃんとべッドの用意も出来ていました。

 あくる朝、目を覚ました二人が食堂へ行くと、おいしそうな朝食が用意されていました。  朝食を食べ終えると、王さまは目に涙を浮かべて言いました。 「姫よ。わたしはもう帰らねばならない。かわいそうだが、お前はここに残っておくれ」
「はい、お父さま。心配なさらないでね」
 お姫さまは笑顔で王さまを見送りましたが、でも王さまが行ってしまうと、お姫さまは、わっと泣き出しました。  これから先、自分がどうなるのかと思うと、怖くてたまらなかったのです。

 しばらくしてお姫さまは、また庭へ散歩に行きました。  すると突然、あの恐ろしいドラゴンが目の前に現れたのです。  お姫さまはまっ青になって、逃げだそうとしました。  でもドラゴンが、とてもやさしい声で言ったのです。 「怖がらないでください。  ぼくはあなたに、お嫁さんになってもらいたいと思っているのです。  ぼくのお嫁さんになると、約束してください」
「いいえ、そんな事は出来ないわ」
 お姫さまは、こんな恐ろしいドラゴンのお嫁さんになる気はありません。  けれどもドラゴンと一緒にお昼を食べたり、夕ご飯を食べたりしているうちに、だんだんとドラゴンの事が好きになってきました。  それにドラゴンが、何度も何度も、 「お嫁さんになってください。幸せにしますから」
と、頼むので、心のやさしいお姫さまはつい、 「はい。お嫁さんになります」
と、言ってしまったのです。

 あくる朝、お姫さまが食堂に行くと、そこにはすでに一人の美しい王子さまがいました。  王子さまはニッコリ微笑むと、お姫さまに言いました。 「おはよう。ぼくのお嫁さん」
 お姫さまは、ビックリして尋ねました。 「あの、あなたはどなたですか?」
「ぼくの声を、忘れたのかい?   ぼくは、ドラゴンです。  ぼくは昨日まで、魔法をかけられてドラゴンになっていました。  誰かがぼくのお嫁さんになると約束してくれれば、魔法がとける様になっていたのです。  心やさしいあなたのおかげで、この通りぼくは元の人間に戻れました。  ありがとう。  本当に、ありがとう」
 美しい王子は、お姫さまに心からお礼を言いました。

 間もなく二人は立派な結婚式をあげて、幸せに暮らしたということです。


◯左甚五郎(ひだりじんごろう)の竜

京都府の民話

むかしむかし、宮津(みやず)地方では、田植えが終ったにもかかわらず一滴の雨も降らなかった事がありました。  困った村人たちは、 「せっかくの稲が、これでは台無しだ。雨が降らないのは水の神さま、きっと竜神さまのたたりに違いない」
と、成相寺(なりあいじ)の和尚さんに、雨乞いのお祈りを頼んだのです。  すると和尚さんは一晩中お経を唱えて、仏さまからいただいたお告げを村人たちに教えました。 「何でも、この天橋立(あまのはしだて)に日本一の彫り物名人が来ておるそうじゃ。  生き物を彫れば、それに魂が宿るといわれるほどの名人らしい。  その名人に竜の彫り物を彫ってもらえば、それに本物の竜の魂が宿り、きっと雨を呼ぶであろう」
 そこで村人たちが手分けをして探してみると、和尚さんの言う通り、左甚五郎(ひだりじんごろう)という彫り物名人が天橋立の宿に泊まっていたのです。  村人たちの熱心な願いに、左甚五郎は深くうなずきました。 「仏さまのお告げに、わたしの名前が出てくるとは光栄です。  わかりました。  未熟者ですが、やってみましょう」
 しかし引き受けたのは良いのですが、左甚五郎には竜がどんな姿なのかわかりません。  他人が描いたり彫ったりした竜の絵や彫り物は、今までに何度も見た事があるのですが、しかしそれはその人が考えた竜の姿で、本物の竜ではありません。 「他人が作った物の真似事では、それに魂が宿る事はない」
 そこで甚五郎は成相寺の本堂にこもり、仏さまに熱心にお祈りをしました。 「仏さまのお導きにより、竜の彫り物を彫る事になりましたが、わたしは竜を見た事がありません。  名人と言われていますが、いくらわたしでも見た事もない物を彫る事は出来ません。  お願いです。どうぞ、竜の姿を拝ませて下さい」
 そして数日後、甚五郎の夢枕に仏さまが現われて、こう言ったのです。 「甚五郎よ。  そなたの願いを叶えてやろう。  この寺の北の方角に深い渕(ふち)がある。  その渕で祈れば、きっと竜が現れるはずじゃ」
「はっ、ありがとうございました!」
 さっそく甚五郎は案内人の男と二人で、世屋川(せやがわ)にそって北の方へ進んで行きました。  しかし奥へ進むにつれて人の歩ける道はなくなり、とうとう案内人は怖がって帰ってしまい、甚五郎は一人ぼっちで奥へと進んだのです。  険しい道でしたが、竜を見たいという甚五郎の心には、恐さも疲れも感じませんでした。  そしてついに甚五郎は、竜が現れるという、大きな渕にたどり着く事が出来たのです。

 甚五郎は岩の上に正座をすると、そのまま三日三晩、一心に祈り続けました。 (この渕に住む竜よ。一目でよい、一目でよいから、その姿を見せてくれ)  すると、どうでしょう。  急にあたりが暗くなったかと思うと、大粒の雨がバラバラと降り始め、渕の奥から大きな竜が姿を現わしたではありませんか。  竜は口からまっ赤な火を吐きながら、今にも甚五郎に襲いかかろうとしました。  しかし、甚五郎は逃げません。  その竜の姿をまぶたに焼き付けようと、まばたきもせずにその竜を見つめました。  そして竜は真っ直ぐ甚五郎に向かって来て、身動き一つしない甚五郎にぶつかる直前に、すーっと消えました。  その途端に、甚五郎の全身にあふれんばかりの力がみなぎりました。  まるで竜の霊力が、甚五郎の体に宿ったかのようです。 「おおっ! 竜を見た! わたしは竜を見たぞー!」
 甚五郎は雄叫びを上げると急いで成相寺に戻り、それから何日も休む事なく、一心に竜を彫り続けました。  そしてやっと彫りあがった竜が成相寺にかかげられ、雨乞いの祈りが行われたのです。  すると不思議な事に、今まで晴れていた空が急に曇ると、ザーザーと大雨が降り始めたのです。 「雨だ。雨が降ってきたぞー!」
「竜のおかげだ! 甚五郎さまのおかげだー!」
 村人たちは大喜びです。  そして今にも枯れそうだった稲も、みるみるうちに元気になりました。

 この事があってから、甚五郎が竜に出会った渕は『竜ヶ渕(りゅうがふち)』と呼ばれる様になり、甚五郎が彫った竜は今も成相寺に大切に残されているそうです。


◯ヤンニとドラゴンとお嫁さん

ギリシアの昔話

むかしむかし、ギリシアのある所に、ヤンニという男の人がいました。

 ある日の事、ヤンニが森を散歩をしていると、いきなり一頭のドラゴンが現れました。 「おいヤンニ、昼ご飯にお前を食べてやるから、覚悟しろ」
 びっくりしたヤンニは、ドラゴンにお願いしました。 「まっ、待ってくれ。お願いだから、待ってくれ。ぼくのお嫁さんになる人のところへ、最後のお別れに行ってくるから」
 するとドラゴンは、ニヤリと笑って言いました。 「いいだろう。ただし、必ずここへ戻って来い。でないと、お前の嫁になる女も食べてやるからな」 「うん、わかった」
 ヤンニは約束すると、急いでお嫁さんになる人のところへ行きました。 「すまないが、もうお別れだ。ぼくは、ドラゴンの昼ご飯になってしまうんだ」
 それを聞くと、お嫁さんになる人が言いました。 「では、わたしも一緒に連れて行ってください」
「とんでもない。そんな事をしたら、お前も昼ご飯にされてしまうよ。お前は、ここにいなさい」 「いいえ、わたしも行きます」
「・・・でも」
「わたしも行きます」
 そこでヤンニは仕方なく、お嫁さんになる人を一緒に連れて行きました。

 さて、ドラゴンはヤンニが女の人を連れて来たのを見て、大喜びです。 「ああ、おれの昼ご飯が、二倍になって戻ってきたぞ」
 ドラゴンはヤンニとお嫁さんになる人のそばへ行くと、よだれをこぼしながら言いました。 「よく戻って来たな。さあ、さみしくないように、二人一緒に食べてやるからな」
 するとお嫁さんになる人が、ドラゴンの前に両手を広げて言いました。 「まあ、なんて、おいしそうなドラゴンだこと。  わたしは朝ご飯にドラゴンを九頭も食べてきたのに、もうお腹がペコペコだわ。  でもこれで、十頭目のドラゴンを食べられるわ。  うふふふ」
 それを聞いて、ドラゴンはびっくりです。  さっきの元気はどこへやら、ドラゴンはガタガタふるえながら言いました。 「ヤンニさん、お願いだから教えてくれ。この女の人は、誰の娘さんなのか」
「それは・・・」
 ヤンニがもじもじしていると、お嫁さんになる人が自慢げに言いました。 「わたしは神々の王、ゼウスの娘よ。  父にもらったカミナリの力で、ドラゴンを丸焼きにしてから食べるのよ。  さあ、わたしのお昼ご飯、覚悟しなさい!」
 ドラゴンはびっくりして飛び上がると、 「うぎゃーー! 助けてくれー!」
と、あともふりかえらずに、森の奥へと逃げていきました。  それを見たお嫁さんになる人は、ヤンニにニッコリほほえむと、 「あはははは。  あのドラゴンたら、わたしのうそにまんまとだまされたわ。  さあヤンニ、家に帰りましょう」
と、ヤンニの手を引いて、家に帰っていきました。


◯竜とニワトリ

沖縄県の民話

むかしむかし、山と海にはさまれた、小さな村がありました。  村人は山の木を切ってまきを作ると、船で遠く那覇(なは)の町まで売りに行って暮らしていました。  この村には、貧乏ですが名医と評判のお医者さんがいます。

 ある夕暮れ、お医者さんのところへ一人の娘がたずねてきました。  お医者さんは一目で娘が何かの化け物だと見破りましたが、何も言わずに娘が痛いとうったえる耳をみてあげました。 「耳の奥が痛いのか。どれどれ・・・、!!!」
 なんと娘の耳の中で、一匹のムカデが暴れていたのです。 「これは、大変だ! ・・・だがその前に、あんたの正体を現しなさい!」
 娘はコクリとうなずいたかと思うと、口から白い霧(きり)を吹き出して一匹の竜(りゅう)になりました。  そして目に涙をいっぱいためて、お医者さんを見つめています。 「よしよし。ではすぐに、楽にしてあげよう」
 お医者さんはそう言いながら、竜の耳の中にニワトリを入れてやりました。  さあ、それから竜の耳の中で、ムカデとニワトリのたたかいがはじまりました。 「動くでないぞ。じきに、ニワトリがムカデを退治してくれるからな」
「・・・・・・」  竜は小さくうなづくと、ムカデとニワトリが耳の中で大暴れするのをじっとガマンしました。  それから間もなく、竜の耳からニワトリがムカデをくわえて出てきました。 「よし、これで大丈夫だ」
 すっかり元気を取り戻した竜は、お医者さんに竜胆(りゅうたん→リンドウの根を乾燥した胃薬)と呼ばれる薬を差し出すと、ムカデを退治してくれたニワトリに何度も頭を下げて天に昇りました。

 それからというもの、竜は天から地上へ大雨を降らせていても、そこにニワトリの姿を見つけるとニワトリにケガをさせてはいけないと思うのか、すぐに雨をやませたという事です。


◯龍王ばあさま

山口県の民話

むかしむかし、中村という所に、赤ちゃんの取り上げが上手なおばあさんがいました。  どんなに難産(なんざん)でも、このおばあさんの手にかかればすぐに産まれるので、『中村の取り上げばあさま』と呼ばれていました。

 ある日の真夜中、おばあさんが寝ていると家の戸を叩く者がいます。  ドンドン、ドンドンドン。  こんな時間に来るのは急産の取り上げに違いないと思い、おばあさんはすぐに支度(したく)をすると外へ飛び出しました。  外には、使いの男がいて、 「こんなに遅くにすまんが、一緒に来て下さい」
と、言いました。 「それは良いが、どこの家かいの?」
 おばあさんが尋ねると男は、 「ずっと遠くです。案内しますから、足元に気をつけてください」 と、先に立ってどんどん歩いて行きました。  真暗闇(まっくらやみ)ですが、なぜか足元だけは明るいので、おばあさんは何とか転ばずに歩けました。  そのうち波の音が聞こえて来たので、 (これは、海の近くだな) と、思ったとたん、おばあさんは気を失ってしまいました。  おばあさんが気がつくと、そこは金銀(きんぎん)がキラキラと光り輝く龍宮城(りゅうぐうじょう)だったのです。  おばあさんがびっくりしていると、龍宮城の主の龍王(りゅうおう)が現れました。 「夜中に、遠い所をごくろうであった。そちに、姫のお産のかいぞえを頼みたいのだ」
「お産?」  お産と聞いては、ジッとしていられません。  おばあさんがさっそく姫の部屋へ行くと、それはひどい難産(なんざん)で、姫の顔には血の気がありませんでした。 「よしよし、すぐに楽にしてやるからな」
 おばあさんはさっそく仕度に取りかかり、それからすぐに玉の様な男の子が産まれました。 「おおっ、良くやってくれた。お礼に、何でもやろう」
 龍王は大喜びで、おばあさんの前にお礼の金銀サンゴを山の様に積み上げました。  けれど、おばあさんはそれを受取ろうとしません。 「どうした? 気に入らんのか? ・・・そちは一体、何が欲しいのじゃ? 何なりと取らせるゆえ、申してみるがよい」
 龍王がそう言うと、おばあさんは恐る恐る答えました。 「はい。実はわたくしの村にあまり雨が降らず、田んぼのイネが枯れようとしています。どうか龍王さまのお力で、雨を降らせてもらいたいのです」  この村人を思う気持ちに感心して、龍王はその願いを聞き入れました。 「それでは、今後はわしをまつって、豊年(ほうねん)踊りを踊るがよい。さすれば大雨を降らせよう」

 さて、それからおばあさんが龍宮城を去って村に帰りつくと、いなくなったおばあさんを探して村中が大騒ぎでした。  おばあさんが訳を話して龍王との約束を伝えると、村人は大喜びです。 「これで、村は救われる!」
「取り上げばあさまは、ありがとう」
 この時から村人たちは、このおばあさんの事を『龍王ばあさま』と呼ぶようになりました。

 そしてこの踊りが山口県に今に伝えられる、楽踊り(がくおどり)の始まりだという事です。


◯かめに閉じ込められた竜 弘法話

香川県・小豆郡の民話

むかしむかし、ある山に二匹の竜が住み着いて、毎日毎日、村に降りてきては田畑を荒らしていました。

 そんなある日、旅の途中の弘法大師が荒れ果てた田畑を見て村人にわけを尋ねました。 「はい、これは山に住む二匹の竜の仕業です。  わしらがいくら苗を植えても竜が荒らしてしまうので、もうどうする事も出来ないのです」
 村人たちは涙を流しながら、そう答えたました。 「そうですが、それではわたしがその竜を退治しましょう」
 大師の言葉に、村人はびっくりです。 「あの竜は、とても人間の勝てる相手では」
「大丈夫。だが危ないので、あなたがたはここにいるように」
 大師はそう言うと、村人たちが止めるのを聞かず山を登って行きました。

 翌朝、心配した村人たちが、村はずれに集まりました。 「あのお坊さま、竜に食われてしまったんじゃろうか?」
「かもしれんな。いくらお坊さまでも、人間の力で竜に勝つなど」
 そこへ両手に大きなかめをかかえた大師が山から帰ってきました。 「おお、みんな集まっておったか。さあ、もうこれで大丈夫だ。山にいた竜を、このかめに封じてきたぞ」
 大師の言葉にびっくりした村人たちがかめの中を見てみると、たしかにかめの中には蛇の様に小さくなった二匹の竜が閉じ込められているではありませんか。  大師は崖に穴を掘ると、その中に竜を閉じ込めたかめを入れました。  するとかめの中から、二匹の竜の声が聞こえてきます。 「お坊さま、どうか許して下さい。  もう決して、悪い事はいたしません。  もしここから出して頂ければ、これからずっと村が水不足にならないようにしますから」 「・・・そうか。では、約束を守れよ」
 大師がそう言ってかめのふたを取ってやると、二匹の竜はかめから飛び出して、うれしそうに空高く飛び去って行きました。

 その後、不思議な事に竜を閉じ込めていたかめの底から止めどもなく水が湧き出たそうです。


◯黒姫と黒竜

長野県の民話

むかしむかし、信濃の国(しなのくに→長野県)に黒姫(くろひめ)という名前の、とても美しい姫がいました。  その美しいという噂は各国に知れ渡り、遠い国からも姫を嫁に貰いたいという申し出が後を絶ちませんでした。

 ある秋の事、そんな噂を聞いた山奥の大沼池(おおぬまいけ)に住む黒竜(こくりゅう)が、この美しい姫を一度見たいと思って蝶(ちょう)に化けると、殿さまと散歩をしている黒姫の所へ飛んできて、姫のまわりをひらひらと舞ったのです。 「まあ きれいだこと」
 姫はとてもうれしそうに、黒竜が化けた蝶に微笑みました。  その姫の微笑みに心を奪われた黒竜は、どうしても姫の事が忘れられなくなり、何日も悩んだあげく、若侍に化けて姫のいる城を訪れました。  どの若者よりも立派な若侍に、すっかり感心した殿さまが身元をたずねると、 「わたくしは、志賀山(しがやま)の大沼池の黒竜です。姫を一目見て以来、姫の事がどうしても忘れられませぬ。どうか、姫を私に下さい」
と、黒竜は正体を正直に話したのです。  それを聞いて、びっくりした殿さまは、 「いくら立派でも、人間でないものに姫はやれん」
と、きっぱりと断わりました。  ところが黒竜は、どうしても姫の事があきらめきれずに、それからも毎日、城へ通うようになりました。  そして百日目が過ぎた時、黒竜は殿さまに言いました。 「もし姫をいただけるなら、今後、あらゆる災いからこの城を守りましょう。ですが、どうしても駄目だというのなら、わたしにも考えがあります。・・・わたしは、大水で城と村々を押し流す事も出来るのですよ」
 これには、殿さまも困りました。  そこで殿さまは、黒竜にこんな約束をしたのです。 「明日、その人間の姿のままで、わしの馬に遅れずに城のまわりを二十周まわれたら、姫をやろう」
「本当ですか! ありがとうございます!」  黒竜が喜んで帰ると、殿さまはすぐに家来に命じて、城のまわりに刀を何本も埋め込ませたのです。  さて次の日、殿さまは城で一番足が速い馬にまたがると、やってきた若侍姿の黒竜にいいました。 「黒竜、よいか。少しでも遅れたら、姫をあきらめるのだぞ」
 そして殿さまは馬にひとムチ当てて、勢いよく駆け出しました。  黒竜もすぐさま、殿さまの後を追いました。  やがて、家来が刀を仕込んだ場所に来ると、殿さまはうまく馬に飛び越えさせて、無事にそのまま駆け出しました。  しかし、そんな事とは知らない黒竜は、仕込んだ刀の罠に引っかかり、体中を切り裂いてしまったのです。 「ぬぬっ、計ったなぁ!」
 全身血だらけになった黒竜は怒りで竜の姿を現すと、竜の姿のまま馬に乗った殿さまを追いかけました。  そして血だらけになりながらも殿さまを追いかけ続け、そのまま殿さまに遅れることなく、城の周りを二十周回りきったのです。  黒竜は、息も絶え絶えになりながらも、殿さまに言いました。 「さあ、約束です。姫を下さい」
 しかし殿さまは、腰の刀を抜くと、 「わしは、人間の姿のままでと言ったはずだ。お前の様な化け物に、姫はやれぬは!」
と、黒竜に斬りかかったのです。  黒竜はその一撃を何とかかわすと、 「よくも裏切ったな! 見ておれ!」
と、叫びながら、空高く飛んで行くと、真っ黒な雲を空一面に張り巡らせて、激しい雨をゴーゴーと降らせたのです。  その雨は一向にやむ気配がなく、四日目になると川からあふれ出た水で、村々は今にも流されんばかりとなりました。  これを見た黒姫は、殿さまがとめるのも聞かずに外へ走り出すと、大雨が降る空に向って叫びました。 「黒竜よ! 私はあなたのもとへ行きます! ですから、どうか嵐を鎮めて下さい!」
 するとどうでしょう。  あれほど激しかった大雨がぴたりとやんで、空から一筋の黒雲が矢の様に下りて来ました。  そしてその黒雲が黒姫の体を包み込んだとたん、黒雲は黒姫の姿と一緒に消えてしまったのです。

 その後、殿さまがどんなに探しても、黒姫は二度と見つかりませんでした。  しかしそれ以来、村には何一つ災いが起らなくなったそうです。


◯薬王寺(やくおうじ)の上り竜と下り竜

岐阜県の民話

むかしむかし、帷子(かたびら)というところが毎日の日照り続きで、村人たちは困っていました。  そこで村人たちは、来る日も来る日も薬師堂にこもって、雨ごいのお祈りをしていたのです。  そんなある日の事、一人の老人が、ふと上を見上げて、高梁(たかばり)に彫られた竜を見つめました。 「ほう。さすがは名人といわれた林市衛門と玉置吉兵衛が作っただけの事はあるのう」
 すると、ほめられたのがうれしかったのか、下り竜の舌がペロペロと動き、上り竜の尾がピクピクと動いたのです。  それを見た老人は、思わず竜に手を合わせて言いました。 「竜よ、心あるなら聞いておくれ。この村はな、もう一ヶ月も雨が降らんのじゃ。もう、何もかも枯れてしまい、このままでは村は全滅じゃ。お前たちが本当に水を呼ぶ事が出来るのなら、どうか雨を恵んでくだされ」
 すると不思議な事に、晴れ渡っていた空に黒雲がひろがって稲妻が光ると、いきなり、ものすごい雨がザーザーと降り出したのです。 「おおっ、雨だ! 竜が雨を降らせてくれたぞ!」
 村人たちは飛び上がって喜びましたが、今度はその雨があまりにも振り過ぎたために、大水で田畑が流されそうになったのです。  するとあの老人は、また薬師堂へ行って竜に手を合わせました。 「いくら雨が欲しいと言っても、これでは田畑も家も大水に押し流されてしまう。どうか、雨をやませて下され」  すると、たちまち雷鳴はおさまって、空は青く晴れ渡ったのです。  この大雨のおかげで、死にかけていた田畑は生きかえりました。  そこで村人たちは、再び薬師堂にお礼のお参りをしたのです。  そして、ふと高梁の竜を見上げてみると、不思議な事に下り竜の片目がつぶれていたということです。


◯龍神さまの掛軸

茨城県の民話

むかしむかし、平吉(へいきち)という男が、一本の掛軸(かけじく)を手に入れました。  この掛軸にえがかれているのは、雷のイナズマの中を天にのぼる墨絵(すみえ)の龍(りゅう)です。 「この龍はのぼり龍と言って、天にかけのぼる勢いがあるので、とても縁起(えんぎ)の良い絵とされている。持っていると、きっと良い事があるに違いない」  平吉はとても喜ぶと、この掛軸を床の間にかけて、野菜や米と、毎朝くみたて水をさかずきに入れて、 「どうか、良い事がありますように」
と、おまいりしました。

 ある朝の事、いつもの様にさかずきの水を取り替えようとすると、水がすっかりなくなっているのに気がつきました。 「はて、誰かがこぼしたのかな?」
 初めのうちはあまり気にしませんでしたが、次の日も、その次の日も、さかずきの水がなくなっているのです。 「まさか、龍神(りゅうじん)さまが水を飲むはずは。  でも、もしそうなら、このさかずきでは小さすぎるな。  よし、もう少し大きい茶わんにかえてやるとするか」  平吉は冗談(じょうだん)のつもりで、一回り大きな茶わんに水を入れる事にしたのです。  そして次の朝、平吉が茶わんを見ると、水は確かになくなっていたのです。  平吉が家の者たちに聞いても、誰も知らないといいます。 「龍神さまが飲んだとすれば、この龍は生きていることになる。  ・・・まさかな。
 きっと、ネズミかネコが飲んだにちがいない。  ・・・でも、もしもと言うことがあるな」
 その日の夜、平吉は寝ないで掛軸を見張っていたのですが、次の朝、いつの間にか水がなくなっていたのです。 「しまった、いつの間に! ・・・よし、見ていろ!」
 それから平吉は毎晩掛軸を見張りましたが、いつも気がつくと水がなくなっているのです。

 さて、ある夜の事です。  平吉が今日も頑張っていると、うす暗いあんどんの光りを受けて、龍神さまが長い舌で水をなめている姿がボンヤリと見えたのです。 「うひゃー! 龍神さまが!」
 平吉はビックリして、その日から寝込んでしまいました。  それで心配した家の人は、平吉に内緒でこの掛軸を別の人にゆずってしまったのです。  この掛軸をゆずり受けたのは、利平次(りへいじ)という男です。  利平次はこの掛軸を神棚のわきに下げると、うれしそうに毎日ながめていました。  その頃、村は日照り続きで困っていました。  ある日、龍神さまは雨ごいの神であると聞いた利平次は、誰にも見られないようにして、 「どうぞ、雨を降らせてください。せめて、おらの田畑だけでも」
と、自分勝手な願い事を言って、お神酒(おみき→神前にささげるお酒)をあげて祈りました。  するとその日の夕方、空はにわかに暗くなり、激しい雨とカミナリがおこったのです。  昼寝から目を覚ました利平次は、滝の様なすさまじい雨とカミナリのあまりのすごさのに気を失ってしまい、そのまま寝込んでしまったのです。

 この話は、村中に広まり、 「あの掛軸を一人で持つと、とんでもねえ事になるだ」 「それなら、神社におさめよう」
と、村人はこの掛軸を村の神社におさめる事にしたのです。  すると寝込んでいた二人の病人も、日に日に良くなっていったという事です。


◯ホラふき和尚

山口県の民話

むかしむかし、あるお寺に、村人たちから『ホラふき和尚』と呼ばれているお坊さんがいました。  この和尚さん、あんまりホラばかりふいているので、村人たちは和尚さんの言う事を全く信用していません。

 ある日の事、和尚さんは村人たちをおどろかせてやろうと思い、お寺の門前にある大きな池のほとりに、こっそりとこんな立て札をたてました。 《明日のお昼、この池から竜が天に登るであろう。池の主の竜より》
 さあ、この立て札を見た村人たちはびっくりです。  むかしからこの池には竜が住んでいると言われているので、みんなはこの立て札を信じました。  ですから次の日の朝には、池のまわりは黒山の人だかりです。  それを見て、和尚さんはうれしそうに笑いました。 「あっはははは。村の者たちめ、わしのいたずらに、まんまとひっかかったわい。さて、お昼になったら出ていって、わしの仕業だと話してやろう。みんなのあきれた顔が、見ものじゃわい」  やがて、お昼が近づいてきました。 「よし、そろそろ行くとするか」
 和尚さんが出かけようとすると、空がにわかに曇って暗くなってきました。  そして目の前の池から、なんと本物の竜が姿を現して、銀色のうろこを光らせながら黒い雲の中へ消えていったのです。  村人たちは驚きましたが、もっと驚いたのはいたずらをした和尚さんです。 「なっ、なんと! まさか本当に竜がいるとは・・・」
 しばらく呆然としていた和尚さんですが、すぐに村人たちの前に駆け出すと大声で言いました。 「おーい、よく聞け! あの立て札はな、実はわしが立てたんじゃ。わしが立てたおかげで、竜が現れたんじゃ!」
 けれども、村人たちは、 「ほれ、またいつもの和尚のホラが始まった。竜が現れたのを、自分の手柄にしよるぞ」
「ほんに、しようのない和尚じゃ」
と、誰も信じなかったという事です。


◯竜と琵琶法師

長野県の民話

むかしむかし、志賀(しが→琵琶湖南西岸一帯の古称)の山道を一人の琵琶法師が歩いていました。  長い旅に疲れた法師は、山の池のほとりに腰をおろしてひと休みし、そこで法師は琵琶を手に取り、美しい調べを弾いたのです。  ところがそのとき、どこからともなく、 「すまんが、もう一曲弾いてくだされ」
と、声が聞えました。  そこで法師は、もう一曲、琵琶を弾いたのです。  すると突然、法師の目の前に大きな竜が現われて、法師に語りかけたのです。 「わしはこの志賀の山に棲む竜じゃ。このところ元気が出ずに困っておったが、お前の琵琶の音を聞いて力が湧いてきた。その礼にお前だけに教えてやろう。わしは祭りの夜に大水を出して、ふもとの村を押し流すつもりじゃ。お前だけは早く逃げるがよい。それからこの話は、決して他人に言うでないぞ」
 こう言ったとたんに、竜は姿を消しました。  さて、法師が山を下りて、ふもとの村へ入ると、村人たちは祭の用意で大忙しです。  法師は竜に言われた通り、何も言わずに通り過ぎようとしました。  しかし村人たちのことが気になって、仕方ありません。  そしてとうとう、思い切って村人たちに叫んだのです。 「大変じゃ! 今夜、大水が来るぞ! 早く逃げてくれ!」
 法師の声を聞いた村人たちは、大急ぎで高台へと逃げました。  そして、その夜のこと。
 にわかに稲妻が光ったかと思うと、大きな雷の音とともに大雨が降り続けたのです。  そして竜の予告通りに、大水が村を襲いました。  やがて雨もあがり、高台に逃げた村人たちは法師のおかげで命びろいをしました。 「ああ、あの法師さまのおっしゃったことは本当じゃった。おかげで、わしら村のもんはみんな助かった。あのお方は、一体どこへ行かれたのか」
 村人たちは法師を探しましたが、法師の姿はどこにもありません。  それから数日後のこと。
 村の若者が志賀の山へ登ると、志賀の山の池に法師の琵琶が浮かんでいるのを見つけたのです。  竜との約束を破った法師は、竜に命を絶たれてしまったのです。 「ああ、法師さまは、わしらの身代りになったんじゃ。本当に立派なお方じゃ」
 村人たちは、心から法師に礼を言いました。


◯龍の淵

宮崎県

日向国の米良(めら)の庄に漆取りの兄弟がいた。兄が漆の木を探して山の中を歩いていると、気味の悪い淵に出た。兄はうっかり鉈を淵に落としてしまい、淵に潜って探しているうちに、淵の底に良質な漆が溜まっているのを見つけ大喜びする。

それを町に持っていくとたいそうなお金が手に入るので、その日から兄は人が変わったように怠け者になってしまった。弟にはそのことを秘密にしていたが、ある日、怪しく思った弟は、兄の後をつけて淵の漆のことを知る。そして弟も兄同様に怠け者になってしまった。

兄は弟に漆のありかを知られたのを面白く思わず、淵の底に木彫りの龍を沈めて弟に漆をとらせないようにした。翌日弟が淵に潜り、木彫りの龍を見て本物の龍と間違えて逃げて帰った。

それを見てしてやったりの兄が漆を取ろうと淵に潜ると、木彫りの龍が動き出し、兄に襲いかかった。慌てて逃げだすが、自分の作った龍が動くことを信じられず、もう一度潜るが、やはり龍が襲いかかってきた。兄はやっとのことで逃げ出した。

その後、龍は、深い淵に戻ったまま二度と姿を現すことはなかった。


◯小太郎と母龍

長野県

太古の昔、人々が信濃に住み始め、開拓に汗を流していた。若い長のもとに一人の女が通うようになるが、女の正体は龍の化身だった。正体を知られると女はそれっきり男のところには現れず、やがてその男も死んでしまう。

ある日、産川から赤ん坊が流れてきたのをお婆さんが拾い上げ小太郎と名前を付ける。しばらくしてお婆さんは病で亡くなってしまう。死ぬ間際にお婆さんは小太郎が筑摩の湖に住む龍の子どもに違いないと教える。

そこで小太郎は、筑摩の湖の麓に行く。湖に向かって「おっかあ」と叫ぶと、湖面に一人の女が現れた。小太郎はこの湖を田んぼにして、百姓の役に立ちたいと申し出る。母親はこの湖が無いと生きてはいけないが、お前の望みを叶えるためにこの地を後にすると決心する。

そして母龍は体当たりで山を切り崩し、湖の水を流して土地を切り開いた。その後、母龍と小太郎はどこかへと姿を消してしまった。 


◯大沼池の黒竜

長野県
悲恋の果てに人間と添い遂げた竜の話 昔、信州中野鴨ヶ岳(かもがたけ)の麓に小館城(こたてじょう)という城があり、城主の高梨摂津守政盛(たかなしせっつのかみまさもり)には黒姫という美しい姫君がいた。

ある春の日の事、政盛達が花見の宴の最中に一匹の白い蛇が現われ、上機嫌の政盛は黒姫に蛇にも酌をしてやるよう勧めた。黒姫が盃を蛇の前に差し出すと蛇は酒を飲み、しばらく黒姫を見つめた後去っていった。

その夜、黒姫の所に一人の立派な若者が訪れ、黒姫に自分の妻になって欲しいと言う。若者の言葉に黒姫は戸惑い、まずは政盛から許しをもらうよう答えると、若者は自分が来た印として鏡を置き消えていった。

若者は大沼池の主の黒竜であり、昼間の宴で黒姫に盃をもらって以来黒姫の事が忘れられなくなったのである。黒姫をさらうのは道理に反するため、若者は毎日城に通いつめ政盛に同じ願いを繰り返したが、政盛も大事な娘を竜の化身に渡すわけにはいかず、若者の申し出を断り続けた。

そして若者が訪れてから100日が経ち、政盛は明日馬で城の周りを21回走り、その後を遅れずについてくる事ができれば黒姫をやると若者に約束した。翌日、政盛が馬に乗り城の周りを走り始めると若者も自らの足で後を追い始めたが、若者はやがて疲れ出し黒竜の姿に戻ってしまう。

途中家来達に邪魔されながらも黒竜は死に物狂いで21回走り終えたが、政盛は約束を破り黒竜を切り殺そうとする。この仕打ちに黒竜は激怒し、怨みの言葉を吐くと傷付いた体で鴨ヶ岳の頂上へと昇っていった。

その途端、辺り一面は大嵐に見舞われ、激しい風雨と洪水が罪も無い村人達を襲った。心優しい黒姫はこれを見て、約束を守るのでどうか嵐を鎮めて欲しいと黒竜に呼びかけ、黒竜の鏡を空に投げた。すると黒雲の中から黒竜が現れ、黒姫を背に乗せると大沼池を捨て新しい山へと向かい飛んでいった。

こうして黒竜と黒姫は新しい山に一緒に住む事になり、それ以来この山は「黒姫山」と呼ばれ、今も山頂には黒竜と黒姫が幸せに暮らしているという。


◯八郎潟の八郎

秋田県
昔、十和田湖に八郎という一匹の竜がいました。この八郎はもともとは人間でした。

岩手県の雫石に暮らしていた八郎が、仲間の喜藤(きとう)、三治(さんじ)と一緒に山へ入った時の事、その日は炊事当番でした。三匹のイワナを串焼きにしつつ、二人を待っていましたが、どうにも腹がすいてきて我慢できずに二人の分のイワナを食べてしまいました。

すると、焼け付くように喉が渇いてきて、谷川に飛び込んだ八郎が水をガブガブ飲んでいるうちに、いつのまにか竜になっていました。「喜藤!三治!」と声を限りに叫んでも、もう人間の声ではありません。八郎は涙を流しながら水を求めて荒れ狂い、ようやく十和田湖へたどり着きました。

十和田湖で暮らし始めた八郎でしたが、ある日突然、南祖坊(なんそぼう)という恐ろしい術使いのお坊さんが現れました。「わしのワラジが切れたこの場所を、一生のすみかにする。だからお前は出ていけ!」と叫び、呪文を唱えながら八郎に襲い掛かりました。

八郎は呪文の剣で血まみれになりながら、湖を追い出され、傷ついた体を引きずりあちこちさまよいました。秋田の男鹿の浜にたどりつき、浜を湖に変えて暮らすことにした八郎は、ようやく優しい心を取り戻すことができました。

八郎が作ったこの湖を「八郎潟」とよびました。やがて田沢湖の辰子姫を嫁にした八郎が、そちらへ通うようになると、年々浅くなっていきました。


◯琵琶法師と竜

長野県
昔、村から村を旅歩く、目の見えない琵琶法師がいた。

ある夏の暑い日のこと、琵琶法師は大きな池のほとりに出た。琵琶法師が、池のほとりで琵琶を1曲弾き終えたところ、法師を呼び止める声がした。

声の主は池の主の竜神で、「自分は明日、下の村に大洪水を起こそうと思っていので、それまでに下の村から立ち去れ。このことは誰にも言ってはならぬ」と忠告した。法師はすっかり恐ろしくなり、走って池のそばを離れた。

朝になり、法師は下の村についた。やがて洪水が起こることを村人に知らせることができないことに、後ろめたさを感じつつも、急いで村を出ることにした。あせって村を出ようとしていた法師は、橋の上から川に落ちてしまった。

気が付くと、法師は村の百姓の家にいた。百姓の家族が、法師のことを気遣う様子に「このような人たちを見殺しにしようとするなどと、なんと卑怯なことか」と、自分のしたことを法師は恥じた。

法師は、池のほとりでの出来事を洗いざらい村人たちに話した。そして、池の主が言った通り、その夜にそれはそれは恐ろしい洪水が起こり、村中の家も畑もみんな流されてしまった。しかし、村人たちは高いところへ避難していたため全員助かった。

法師はその頃、少し離れた場所で琵琶を弾きながら竜神と対峙していた。そしてついに、法師は竜巻にまかれて姿を消してしまった。 その後、ある村人が池のほとりを通ったところ、池に一丁の琵琶が浮いていた。池の主の竜神は間違いなく、法師に復讐したのであった。そしてそれからこの池を、琵琶池と呼ぶようになった。


◯かたみの人形

栃木県
昔、栃木県烏山(からすやま)にちかい木須川のほとりに住む長者には、一人娘がいました。女房に先立たれた長者は、残された娘を大切に育て、村でも評判の美しい娘になりました。

いつの頃からか、長者の村に近い山に山賊が住みつき、旅人が襲われたり村が焼かれたりするようになりました。そんなある日、山賊の頭(かしら)が長者の娘に一目ぼれし、嫁によこさなければ村を丸焼きにする、としつこく脅しました。娘は仕方なく、村を守るために山賊のところへ嫁に行くと決心しました。

いよいよ明日が嫁入りという時、母のかたみの人形の目があやしく光ったかと思うと、娘はそのまま気を失って倒れてしまいました。次の日の朝、迎えにやって来た山賊たちは花嫁姿の娘をかごに乗せて連れ出すと、なんとそれは花嫁衣装をつけた人形でした。

怒った山賊の頭は人形を川へ放り出し、長者の屋敷を丸焼きにしようと出発しました。山賊たちが長者の屋敷に到着すると、そこには屋敷を守るようにとぐろを巻いている巨大な竜が目を光らせていました。山賊たちは竜からさんざん炎を吐きかけられ、自分たちが丸焼けになってしまうと命からがら山に逃げ帰りました。 静かになって長者と娘がおそるおそる外を見ると、そこには母のかたみの人形がずぶぬれになって転がっていました。その後、この村の近くで山賊のうわさを聞くこともなくなりました。


◯二ツ池の龍

三重県
むかし伊勢の二ツの池に雄龍と雌龍の夫婦がいた。

悠久の時が過ぎ、いつしか土地に人間が住み着く時代となる。雄龍は人間たちの焚く火や振る舞いが面白くなく、嵐を起こしたり雷を落したりと人間を立ち去らせようとする。しかし人間はたくましく乗り越え、雄龍もいつしか人間たちを認めたい気分になっていった。

そんなある日、人の夫婦が畑に出ていると一頭の大きな猪が作物を荒らしていた。夫は作物を守ろうと猪に打ちかかるが、歯牙にもかからない。

様子を見ていた雄龍が猪に言う。人間を認め邪魔をするのはよさぬかと。猪は聞かず、逆に人に肩入れしようという雄龍に挑みかかる。

戦いは激烈を極めた。力は龍が一枚上であったが、猪の猛進のため火が起り、二ツ池の周辺は大火事になってしまう。戦いには敗れた猪だが、その大火のため雌龍が池に閉じ込められてしまった。雄龍は雌龍を救うために大火を呑み込みはじめた。 やがて大火は引き、雌龍は天に逃れることができたが、炎を呑みつづけた雄龍はその体を炭と化し、再び起きることはなかった。


◯辰子姫物語

秋田県
昔、院内(いんない)の里に辰子という一人の娘がいた。辰子は野山を駆け巡り、自然にはぐくまれて育ち、やがて美しい娘になった。しかしそんな辰子は、まだ自分の美しさに気づいていなかった。

ある秋の日、辰子が木の実を取りに山に入ると、茂みの中に鏡のように澄んだ泉を見つけた。辰子は泉の水でのどを潤すと、何気なく水面に目を落とした。辰子はこの時、初めて自分の姿を見て、その美しさに気がついたのだ。

それからというもの、自由奔放に野山を駆け回っていた以前の辰子は影を潜め、辰子はじっと物思いに沈むようになった。自分の美しさに気づいた辰子は、年を取ってその美しさを失うのが耐えられなかったのだ。「いつまでも美しいままでいたい。」辰子の想いは募るばかり。思いあまった辰子は、毎晩観音堂に通い願掛けをするようになった。すると百日目の夜、辰子にお告げが下った。

お告げはこうだった。「辰子よ、お前の願いは本来、人の身には許されぬこと。しかし、美しさにとらわれて苦しむお前の姿は哀れだ。この山の北にある湖の水を飲むがよい。その水を飲めば永劫の若さを手に入れるだろう。」

翌日、辰子はお告げの通り、山を北へ北へと進んだ。すると、山の鳥、木々のざわめき、果ては風までもが「辰子、村へ帰れ、北へ行くな!!」と言って辰子の行く手を阻む。だが、辰子はこれを聞かず、なおも北へと進む。そうして三日目に、辰子はとうとう湖に着いた。 辰子が湖の水を飲むと、全身の血が熱くなり、体を逆さに流れるようであった。そしてしばらくすると、辰子の体は一頭の龍に変わっていた。しかし、湖面に映る辰子の姿は、いつまでも美しい娘の姿のまま。こうして辰子は、永遠の若さを手に入れ、ずっとこの湖に住んだ。 それからというもの、村にいる辰子の母のもとには、湖から魚が届けられるようになった。これは、辰子が元気に暮らしている証に送ってくるのだと言われている。


◯雨乞いの阿か池

京都府
昔、京都の丹波に与助という一人暮らしの若者が住む村がありました。与助は両親を相次いで事故で亡くしてから、人と話す事もなくなり仕事もあまりしなくなりました。

その年は雨が少なく、田畑の作物のほとんどが枯れてしまい、村人たちは困り果てていました。そんな時、与助の家が火事で全焼し、与助は何もかも失ってしまいました。村人たちは、みんなで与助の面倒をみる事に決め、寝起きは長老の家で、食べ物は皆で少しずつ持ち寄って親切に世話してあげました。

とうとう川の水もすっかり干上がってしまい、こうなったら雲岩寺(うんがんじ)の阿か池の水をひくしかないのですが、竜神が住んでいるのでたたりを恐れて誰も池に近づけませんでした。その様子を知った与助は、阿か池へ行って「自分の命と引き換えに村に水を引かせてください」と一心に拝みました。すると、多聞天さまが現れて「阿か池の水はやれぬが、命と引き換えに雨を降らす方法を教えてやろう」とお告げになりました。

与助は長い竹竿を用意して、多聞天さまから言われた通り、阿か池の水をかき混ぜました。すると阿か池から竜が現れ、空に向かってかけのぼり風を起こし雨雲を呼び、またたくまに大雨を降らせました。竜は「命は助けてやるから一生懸命働きなさい」と言って、阿か池へ戻っていきました。 それからの与助は人が変わったように村人たちの先頭になって働くようになりました。この事があってから、阿か池に雨乞いすると雨が降る、と今でも言い伝えられています。


◯姉川と妹川

滋賀県
姉妹の姫が美しい龍となり、山間部に川を作る話
昔、琵琶湖の近くの伊吹山の谷に、元気のいい姉妹の姫が住んでいた。

姫の住む谷には川がなかったので、村人たちは田んぼが作れず、粟やそばなどを作って貧しく暮らしていた。それでも村人たちは、どこの誰かも分からない二人の姫を大事にしていた。

この年は、冬からの長雨が梅雨まで続き、山の高い所に大きな池の水たまりができていた。さらに幾日も続く雨は激しさを増し、山はもうパンパンに水を吸い限界に近付いていた。

姉妹は、山が崩れるのを防ぐため、たまった池の水を抜こうと池に飛び込んだ。池の水は勢いよく流れだし、二人の姫はきれいな龍に姿を変えた。二人の龍は、池から吐き出された水と一緒に谷筋に沿って一気に駆け下りていった。 山々は落ち着きを取り戻し、この水が流れたところはそのまま川となった。この川のおかげで田んぼも作れるようになり、村人たちはこの二つの川を「姉川」と「妹川」と名付けた。


◯天へ上りそこねた亀

島根県
昔ある所に、海の暮らしに飽きた一匹のカメがいました。

このカメは、浜辺で酒を飲んで文句ばかり言っては、小魚たちからカツアゲしたり、酒屋の亭主に乱暴したり、毎日やりたい放題に過ごしていました。

ある日、いつものように酒を飲んで浜辺で寝ていると、まっ黒な黒雲が広がり一匹の美しいメスの龍が現れました。龍は神様からの使いで、一通り雨を降らせて去っていきました。 この様子を見ていたカメは「自分も天に昇って神様になりたい」と思い、龍を呼び寄せるため毎晩たき火を焚き続けました。

そんなある日の事、とうとうあの時の龍がやってきて「あんたのしつこいのには負けた、天に連れて行ってあげよう」と言いました。カメは大喜びして、メスの龍の尻尾にしっかりとつかまりました。 龍はカメを連れて、天へ向かって登っていきました。カメは振り落とされないように、しっかりと口で尻尾をくわえていましたが、やがて天上が見えてくるとすっかり嬉しくなってきました。 カメはつい「早く天に行きたいのぉ」と、くわえていた口を開けてしまい、高い空から浜辺に向かって一直線に落ちていきました。地上に落ちたカメは、天へ上ることをすっかり諦めて海へ帰っていきました。


◯竜神が授けた妙薬

島根県
昔ある所に、海の暮らしに飽きた一匹のカメがいました。

このカメは、浜辺で酒を飲んで文句ばかり言っては、小魚たちからカツアゲしたり、酒屋の亭主に乱暴したり、毎日やりたい放題に過ごしていました。 ある日、いつものように酒を飲んで浜辺で寝ていると、まっ黒な黒雲が広がり一匹の美しいメスの龍が現れました。龍は神様からの使いで、一通り雨を降らせて去っていきました。

この様子を見ていたカメは「自分も天に昇って神様になりたい」と思い、龍を呼び寄せるため毎晩たき火を焚き続けました。 そんなある日の事、とうとうあの時の龍がやってきて「あんたのしつこいのには負けた、天に連れて行ってあげよう」と言いました。カメは大喜びして、メスの龍の尻尾にしっかりとつかまりました。

龍はカメを連れて、天へ向かって登っていきました。カメは振り落とされないように、しっかりと口で尻尾をくわえていましたが、やがて天上が見えてくるとすっかり嬉しくなってきました。 カメはつい「早く天に行きたいのぉ」と、くわえていた口を開けてしまい、高い空から浜辺に向かって一直線に落ちていきました。地上に落ちたカメは、天へ上ることをすっかり諦めて海へ帰っていきました。


◯七駄田

栃木県
昔々、栃木県の芳賀に小さな村がありました。この村では日照りが続き、困った村人たちはイライラしていました。

ある時、村のお百姓さんが手樋越の淵の堤を通りかかると、龍が雷のようないびきをかいて寝ていました。実は、この淵に住む雌龍がひなたぼっこをしようと堤の上まで這い上がり、あまりに良い陽気についついねむってしまったのです。

「雨を降らしてくれる龍神さまが眠っていたんじゃ雨が降らないはずだ!こんな役たたずは神様でもなんでもない、殺してしまえ!」
「目を覚まさないうちに殺して田んぼの肥やしにしよう!」ということになって、雌龍を切り殺してしまいました。
ところで、淵の底には雄龍もいたのです。いつになっても連れ合いが戻ってこないので、堤の上を見ましたところ、切り刻まれた雌龍が運ばれていくところでした。

悲しみから怒った雄龍は天に登っていくと、大粒の涙を流しました。雄龍の涙は大雨になって地上に降り注ぎ、大洪水を起こしました。 村人たちは、雌龍をころしてしまったことを後悔しましたが、もう間に合いません。この上は雄龍に謝るほかないと、毎年、村人たちは二度と過ちを犯さないため必ず赤飯を炊き、火打石で切火をして清めてから手樋越の淵に流し、雌龍の供養をしたそうです。 そうして、雌龍を七つに切って埋めたところを「七駄田」と呼ぶようになったといいます。


◯嫁入り竜女の忘れもの

富山県
ばあさんが、山の池の近くを通った時、池で美しい女が髪を洗っていた。

ばあさんが、木の陰に隠れて見ていると女が気付いた。その瞬間、雷雲が出て池が渦巻きはじめ、その渦の中に女がはいって行った。ばあさんが、池の方を見るとかんざしが落ちていたので持って帰った。

家に帰ると息子がそのかんざしを奪って「もう、貧乏暮らしとはおさらばじゃい」と言って家を飛び出した。息子が家を出てかんざしを売りに行っていると女とすれ違った。女を見ていると自分の家に入って行ったので、家の外の敗れた障子からのぞいていた。

その女は、ばあさんに「私は、遠くの町から来たものです。池で髪を洗っている時に、大事なかんざしを失くしてしまいました。もし、持っていれば返してください。私は、西に日が沈むまでに急がなければなりません」女はそう言った。 ばあさんは、今は、持っていないので息子が帰ってくるのをまっていた。それまで、雑炊などを食わしてやっていた。その様子を外から見ていた息子は、悩みに悩んで女にかんざしを返してやった。 それからは、この辺りで日照りが続いても、藤四郎(息子)の田んぼは山の池から水が流れこみ、枯れることはなくたくさんお米がとれた。きっと、竜が恩返ししているのだろう。


◯男滝の龍

奈良県
奈良の山中、小井(こい)には親谷(おやんたに)という谷があり、そこにはひときわ大きい男滝(おんたき)と呼ばれる滝があった。

滝のそばには丸木橋が架かっていたが、大水で流されてしまったので村の男衆が新しい橋を架ける作業をはじめた。そこへ一人の旅の六部が通りかかり、山中渓谷の危険な足場も顧みず、橋を架ける男衆への感謝から念仏を唱えはじめた。

すると、六部の目に不思議な光景が見えた。それまで男衆が足場としている岩場と見えたのは実は龍の体であり、橋の丸太を運ぶ綱と見えていたのは龍の鬚(ひげ)だった。さらに、龍は足を滑らせ濁流に落ちた者を助け上げもした。

しかし、男衆はその龍には全く気がつく様子もないのである。六部は出来上がりつつある橋を渡ると滝を後にし、峠の茶屋に寄った。そして、そこのばあさまに先ほど目にした一部始終を話した。話を終えると六部は去り、今度は橋を架けていた男衆が一仕事終え茶屋まで戻ってきた。 今度はばあさまが六部の話を男衆にした。男衆はそんな龍は見なかったと不思議に思い、橋のある男滝へ取って返した。果たして、先ほど足場としていた岩場はなく、六部の話していたことが本当のであったと皆驚いた。 と、その瞬間、滝に龍の姿が現れ、男滝をゆっくりと昇って行った。 男衆は、この神々しい光景を見て思わず念仏を唱えるのだった。


◯ドンドケ池の竜

石川県
加賀の国の山里のとある寺に偉いおでさん(和尚様)が住んでいた。おでさんは毎日厳しい修行を積み、また毎日精魂を込めて写経を続けていた。

その頃、周囲の村々では若者が熊を殺し、その胆を売って大金を得る事に夢中になっていた。ある年の春先、若者達はまだ雪の残る谷に熊狩りに出かけ、ドンドヶ池と呼ばれる大きな池のほとりに出た。雪が深くて陸と水面の区別がつかなかったので、若者の一人が手槍を雪の中に深々と突き刺した。

ところが、この池には昔から大蛇が住んでいて、長い年月、修行に励んでいたのだった。突き刺された手槍の鉄気(かなけ)の為に一切の修行が破られてしまった大蛇は怒りに燃え、「お前達の寿命を奪ってやろうか!」と若者達に襲いかかった。若者達は命からがら逃げ出したが、その日から重い病に倒れてしまった。 村人は困り果て、おでさんに相談しに行った。熊狩りと言う無益な殺生に溺れた若者達に激昂するおでさんだったが、無碍に放っておく事も出来ず、ドンドヶ池のほとりに祭壇を設け、そこでひたすら経を読んで祈祷を始めた。そして丹精込めて書き写した経文を、惜しげもなく池に沈め始めた。

80巻も経文を沈めたところで、大蛇がイモリに化けて姿を現し「おでさんの読経と経文の御蔭で幾らか怒りが静まった」と話し出した。おでさんは大蛇に訊ねた。「合わせて100巻の経文をそなたに捧げる。それでそなたの願いは叶うか?」 「叶う」。大蛇の答えを聞いたおでさんは重ねて読経を続け、やがて合わせて100巻の経文を池に沈め終えた。それと同時に、大蛇が池の氷を破って姿を現し、見る間に竜に化身すると天へ昇って行った。 やがて、病に倒れた若者達も無事に回復した。こんな事があってからと言うもの、村人は今までの行いを反省し、虫一匹に至るまで大切に扱うようになったそうな。



リュウのキャラクター

◯キングギドラ

東宝の特撮怪獣映画ゴジラシリーズに登場する架空の怪獣である。 1964年に公開された映画『三大怪獣 地球最大の決戦』で初登場して以来、同社の多くの怪獣映画に登場している。

◯神龍 (ドラゴンボール)

漫画『ドラゴンボール』および、それを原作とするアニメに登場する架空のキャラクターである。 本項では、アニメ『ドラゴンボールGT』のみに登場する神龍や邪悪龍についても併せて解説する。 世界中に散らばるドラゴンボールを七つ集めると出現する龍。どんな(創造主の力を大きく超えたものを除く)願いも叶えてくれる存在である。

◯ドラゴン (ドラゴンクエスト)

ドラゴンは伝説の生物であり、様々なフィクションで取り扱われる。本項目ではスクウェア・エニックス(旧エニックス)のコンピュータRPG・ドラゴンクエストシリーズにおけるドラゴンを取り扱う。多くの作品において、モンスターの系統のひとつであるドラゴン系として定義付けられている。主にドラゴンや爬虫類型のモンスターがこれに入る。

◯バハムート

バハムートとは、『ヨブ記』などに登場する怪獣の一種。ベヒモス(Behemoth、ビヒーモス、ベヒーモスとも)をアラビア語読みしたもので、由来はベヒモスと同一。ただしイスラム世界では伝播と伝承の中で変化し、巨大な魚の姿を与えられている。これに関しては、同じく『ヨブ記』にあるレヴィアタンの「海の怪物」の属性が混じっているためだと考えられる。

◯バラン (ダイの大冒険)

アニメ『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』の登場人物
魔王軍の超竜軍団長。一般に「竜騎将バラン」と呼ばれる。その正体は最後の純血の「竜の騎士」にして主人公・ダイ(本名ディーノ)の父親である。当初より魔王軍において最強と目されており、物語中では竜の騎士であることが公になる以前から人間として扱われていなかった。人間でいうところの、壮年から中年期の男性のような風貌をしている。柄に竜の意匠が施された専用の剣「真魔剛竜剣」を武器として使用。左目には「竜の牙(ドラゴンファング)」という飾りを付けており、これを使用して竜の騎士の真の姿である「竜魔人」に姿を変えることができる。 人間達の迫害が元で妻のソアラを失い、愛する息子とも生き別れて絶望していたところを大魔王バーンからの誘いを受け、自分の配下である「竜騎衆」と共に魔王軍に加わる。その後消息不明だった息子のダイと再会を果たすも、敵同士であったために骨肉の死闘を演じることとなった(後述)。

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