未(ひつじ)

未 干支の由来

【ひつじ】
群れをなす羊は、家族の安泰を示し、いつまでも平和に暮らす事を意味しています。

穏やかで人情に厚い

穏やかな印象が強い羊。 常に群れで行動しており、あまり単独行動する者はいないイメージですよね?

風水でも、羊は「人脈」の象徴。 人としっかりした信頼関係を築きたいのであれば 羊グッズのパワーを借りると良いでしょう。

ちなみに、「美」という文字は羊から派生したということをご存知でしたか? なんでも、成長した大人の羊の美しさを表した言葉なんだそうです。 ゆえに、「美」の象徴でもあるんですよ。 羊のお守りは、ビューティー運UPにも効果が期待できそうですね。

方角は、南南西と相性が良いです。

未の動物:ヒツジ(羊)

  • 未の月:旧暦6月
  • 未の時刻:午後2時を中心とする約2時間
  • 未の方角:南南西よりやや北寄り
  • 五行:土気
  • 陰陽:陰
  • 意味:果実が熟して滋味が生じた状態を表します。

ヒツジも人と深く関わってきた動物です。 肉や毛は昔から食用として重宝され、皮、毛なども人々に利用されてきました。 古くは古代メソポタミア文明からも化石は見つかり、紀元前7000〜6000年前には既に家畜として飼育されていたようです。 中でもヒツジの毛、ウールは服などに使用され、人々の生活に欠かせないものでした。 ヒツジは年に一回、毛を刈られます。 生え変わらないので、人が刈ってやる必要があるのです。 大体、夏の前には刈ってやります。 そうでないと、ウール100%のセーターを常時着ているのですから、ヒツジたちは暑さにやられてしまいます。 そのため、夏に動物園や牧場などで見るヒツジは、大体が刈られた後の姿をしています。 刈られた後の姿は、ヤギと似ていますよね。 野生のヒツジは自然と毛が生え変わるのだそうで、昔はその毛を集めて羊毛として使用していました。 しかし家畜になって品種改良がされ、今のように生え変わらない種になったのです。 野生のヒツジと家畜のヒツジで、違いがもう一点あります。 それはしっぽの長さです。 野生のヒツジはしっぽが短いのですが、家畜用のヒツジは長いのです。 しかし長いだけで虫を払ったりなどもできず、衛生上不潔だったり、交配の際に邪魔になるなどの理由で、生まれてすぐにしっぽを取ってしまいます。 これを『断尾』と言います。 しっぽを取ってしまうと言うと少し怖いですが、これもヒツジのためなのだそうです。

ヒツジは群れを成す動物です。 敵などがいなければ単独でも行動しますが、敵から身を守るためにも群れで行動をしたがり、その群れから離されると強いストレスを感じます。 また、先導者に着いていく性質があり、たまたま先に行動したヒツジにも着いて行ってしまいます。 『群』という漢字はヒツジから来ているのです。 ヒツジは世界で親しまれてきた動物です。 キリスト教では民衆のことをストレイシープ(迷える子羊)と言います。 キリストが演説の中でこの言葉を用いたと言われています。 先導する神や救世主(メシア)をヒツジ飼いに、民衆をヒツジにたとえてしばしば語られているのです。 ちなみに、寝られないとき『ヒツジが一匹、ヒツジが二匹……』と数えたことのある人は多いかと思います。 これはヒツジのシープ(sheep)と眠りのスリープ(sleep)が似ているところからの語呂合わせなのです。 ですから、英語を使わない日本人にはあまり効果がないかもしれません。 意外と数えていると寝てしまうのですけれどね。 それもヒツジの力なのでしょうか。

未の神様

◯羊太夫伝説

どこか群馬の地に足を運べば、きっと「多胡碑」のことを耳にするでしょう。
それは群馬の小さい町、多胡郡(現高崎市)吉井町にあります。実は日本三古碑の一つでもあります。その碑文には多野郡のいわれが漢字で刻まれています。漢字の中に「羊」という文字があります。「羊」は、八世紀初頭、朝廷より郡司(郡の長)としてこの地を治めることを命ぜられた人物と言われています。
これは、その「羊」にまつわる伝説です。

その人物は、(旧暦の)羊(ひつじ)の日、羊の刻に生まれたことから「羊」という名前がついたそうです。やがて背の高い、才能ある若者に成長しました。
711年(和銅4年)多胡郡司を命ぜられたので、「羊」は大和の国(現奈良県)の朝廷を定期的に訪れることになりました。「羊」には、駿馬(しゅんめ)と、「小脛(こはぎ)」と言う忠実な家来がおりました。その馬と「小脛」の走りにかなう馬はどこにもおりませんでした。何しろ二日もあれば難なく朝廷に行ってまた戻ってこられるのですから。
「羊」は優れた能力を持ち、忠実な働きぶりでしたから、天皇から大きな信頼を受けていました。誠実な心で那(くに)を治めるので、人々から「羊太夫」と呼ばれていました。
ある日のこと、朝廷に向かう途中、「羊太夫」一行はいつものように休息しました。「小脛」は自分の寝姿は絶対見ないよう主(あるじ)にお願いして、どこかに消えてしまいました。好奇心にかられた「羊太夫」はこっそり後をつけて、大きな木の陰で寝ている「小脛」を見つけました。地面に横たわっている「小脛」を頭のてっぺんからつま先までを見回しましたが、これと言って変わった所はありません。ほっとしましたが、もう一度よく見てみました。すると「小脛」のわきの下に羽が生えているではありませんか。
「何だ、これは。」ものめずらしさから一本ずつ抜いてみました。面白半分にしたことですが、それがよもやとんでもない事態を招くとは思っても見ませんでした。「小脛」はじきに目を覚まし、主がしたことに気づきました。「小脛」は唖然(あぜん)とし、やがて悲しくなりました。

「あの羽は私の守り神でした。馬と一緒に速く走れたのも、あの羽があったからこそです。羽がなくては、もう速く走ることはできません。馬だってもう速く走ることはできません。これから不吉なことが起こらなければよいのですが。」
「小脛」が言ったとおり、彼も馬も速く走れなくなり、「羊太夫」は今までのように頻繁に朝廷に参内し、仕えることができなくなりましたが、このことが災いをもたらすとは、ゆめゆめ思いませんでした。
朝廷の廷臣のなかには、「羊太夫」の才能をうらやむ者がいたのでしょう。「羊太夫」が朝廷に謀反を企て、攻撃の準備をしているといううわさが流れました。まもなく朝廷は多胡に大軍を送り込みました。「羊太夫」は想像以上に事態が悪化していることを悟りましたが、争うことだけは避けたいことでした。「羊太夫」は朝廷軍が陣をとっている地を訪れ、忠節の心を示し、戦いを回避しようとしました。
「羊太夫」は朝廷軍の大将に言いました。 「ご存知のとおり、私は忠義、忠誠を重んじております。朝廷に叛(そむ)く気は毛頭ございません。この地の民は皆思いやりがあり、穏やかです。労を惜しまず、争いは好みません。たとえ勝ったとしても、この戦いで私の郡司としての力はなくなることでしょう。是が非でも争いは避けたいと思っております。このまま戻って天皇さまにお伝え願いたい。」
大将は羊太夫に耳を傾け、言いました。 「そなたが言うことはわかりました。そなたが今も変わらず忠実であることは承知しております。しかし、羊太夫を亡き者にせよ、との天皇様のご命令です。ご命令はご命令です。ご命令に背くわけにはいきません。どちらかが誉れ高く滅びるまで果断に戦おうではありませんか。」

「羊太夫」は膠着(こうちゃく)状態を打破するすべはないと知り、死を覚悟しました。彼は意を決して言いました。 「私は心を決めました。精一杯あなたと戦います。あなたが勝利を収め、朝廷に戻った暁(あかつき)には、天皇に、私が誓って間違ったことはしていない、と申していたとお伝え下さい。是非お願いします。」 戦いの火蓋が切られました。
朝廷軍の圧倒的な兵の数に対し、「羊太夫」にはわずか数百の兵しかおりません。ついに兵と一族は城に追い込まれてしまいました。
「羊太夫」は家来に言いました。 「女、子どもをこの城から出しなさい。生き延びてもらいたい。悲しんでいる場合ではない。急ぎなさい!残念ながら、この戦いに、もはや勝利するすべはない。死するは覚悟の上。さあ行きなさい!」
熾烈(しれつ)を極めた戦いで、羊太夫の兵は全員命を落とし、残ったのは「羊太夫」と「小脛」のみでした。
「小脛」は主(あるじ)に言いました。 「羊太夫様、ここで生き残っているのはわれらだけです。」
「わかっておる。われらにもそろそろ旅立ちの時が来たようだ。」羊太夫は重々しく言いました。
すると羊太夫の鎧(よろい)と兜(かぶと)が二つに割れ、彼の体が変わり始めました。頭と体は羽毛に覆われ、手は翼に変わり、脚は細くなり、つま先には鋭い爪が生え、口には嘴(くちばし)が。まさに同じことが「小脛」にも起こっていました。二人(二羽)はチラッと眼を合わせると、鋭い声をあげ、翼を羽ばたかせ、飛び去りました。
その日の午後、二羽の鳶(とび)が山の方に向かって飛んで行くの見た、と多くの民が話していました。
後に、この地に多胡碑が建てられました。人々は今でも多胡碑を「ひつじさま」と呼んであがめているということです。


◯羊神社

名古屋市北区辻町5丁目
『延喜式』の「神名帳」に山田郡羊神社とある式内社

辻町の名の由来は羊にあり、のちに火辻と書かれたが、火の字を嫌って辻町となった。
地図や本には「つじちょう」とありますが、地元では「つじまち」と読んでいます。

・社名の由来
群馬県多野郡にある「多胡碑」に関係ある 「羊太夫」(この地の領主)が奈良の都にあがるときに 立ち寄っていたゆかりの屋敷がこの地 現辻町にあり この地の人々が平和に暮らせるため 「人心を安らかに」という願いをこめて 羊太夫が火の神を祀ったといわれ、羊神社と呼び称えるようになったと伝えられている。

・地名の由来
鎮座地 辻町は、尾張志に 「今、村の名を辻といえるは、羊の省かりたるやとぞ」 尾張国地名に 「住昔 火辻村といひしを 後世 火の字を忌て単に辻村と書といふ」 と記されている。
里の名を辻というも御社の羊の名にし負へるとぞ聞く


◯法輪寺(ほうりんじ)

丑、寅、そして未にゆかりある嵐山の古刹 嵐電「嵐山」駅方面から渡月橋を渡った先にある「法輪寺」。
智恵・福徳・技芸上達のご利益があるといわれ、子どもたちの参拝でもにぎわう古刹です。
嵯峨の虚空蔵(こくぞう)さんと呼ばれるように、ご本尊は虚空蔵菩薩。丑・寅年生まれの守り本尊と知られており、境内には虎と丑の像が鎮座しています。
その斜め前方向には、立派な角を持つ「羊」の石像。なぜ境内に羊の像があるのかというと、虚空蔵菩薩の使いが羊と伝えられているからです。


◯玉川大師(玉真密院)

空海(弘法大師)は「十住心論」(真言密教の悟りを最高位のものとして、そこに到るまでの心<精神>のあり方を十段階に分けて示した)の中で、最下位の第一住心(人間以前、即ち倫理道徳以前の状態)を「異生羝羊心」として、「雄羊が、ただひたすら淫欲と草をむさぼり食べることしか念頭にない」のと同じ状態であると、羊を例に引いている。
これに因んで、先代の住職が境内に羊像を置いたという。 羊の顔は人面風に造られている。

東京都世田谷区瀬田4-13


◯羊と開運にまつわるエトセトラ。

あまりメジャーな方ではないと思いますが、全国には羊にまつわる神社というものが幾つか点在しています。 未年生まれの守り本尊、守護仏としては、 守り神:大国魂神
守護仏:大日如来
がありますね。 そんな大国魂神をお祭りしている主な神社としては、 北海道神宮 北海道札幌市
大國魂神社 東京都府中市
大国魂神社 福島県いわき市
羊神社 愛知県名古屋市
などがあります。

お寺では、嵐山の虚空蔵法輪寺、一乗寺の野仏庵に狛羊を見つけることができるそうです。 京都では目立った羊の神社はないようですが、十二支全部がある小倉神社や伏見稲荷の裏側のいなり大神などには羊の像があります。 また、像はありませんが下鴨神社にも十二支全てのお社がありますね。 こうした十二支全部がそろっている神社としてみれば、全国でもちらほら見つけることはできそうです。

しかしこうしてみても、羊のみにまつわる神社やお寺は意外と少ない方かもしれません。 そんな中で気になるのは、その名もズバリ羊神社!

例えば私が住む愛知県名古屋市には羊神社があります。 羊神社の由来はその昔、群馬県吉井町の羊太夫が都へ上る途中に立ち寄った屋敷が辻町にあり、この地の人々が平和に暮らせる為、羊太夫が”人心を安らかに”という願いをこめて火の神を祀ったとから「羊神社」と呼ばれるようになったということ。 辻町という地名も”ひつじ”からきているらしいのですが、来年は特に、御朱印やお守り、絵馬を手に入れる方々で年始早々から賑わいそうです。

で、そもそも羊太夫って誰?と思われますよね。 群馬県吉井町に伝わる伝説によると、羊太夫(宗勝)は脇羽の生えた家来と権田栗毛という名馬を持ち、都に毎日日帰りで参勤していたそうです。 そんなある日、いたずら心で家来の肩に生えている翼を抜いたところ走ることができなくなり、朝廷は参勤しなくなった羊太夫が悪事をたくらんでいると思って、大軍を差し向け攻め滅ぼしてしまったそうです。 その後、無実が明らかになり丁重に弔われ、群馬県・安中市に羊神社が建てられたとのことです。

これを機に神社やお寺を巡って、羊を含めた十二支を見つけてみてはいかがでしょうか。 自分の住む近くでも、新たな発見があるかもしれません。

小説の中でいえば、村上春樹の小説には羊男が登場します。 『羊をめぐる冒険』
『ダンス・ダンス・ダンス』
「図書館奇譚」 (『カンガルー日和』所収)
「シドニーのグリーン・ストリート」 (『中国行きのスロウ・ボート』所収)
「スパゲティー工場の秘密」 (『象工場のハッピーエンド』所収)
『羊男のクリスマス』
といった小説群を跨って登場する羊男は、異界の案内人であり死者との媒介の役割を担っていますが、一言でいえば死神に近い存在とでもいえばいいでしょうか。 本来の力をフルに発揮する訳ではないのですが、「根源的な悪」の象徴として描かれてることもあり、悪自体は人を媒介して継承されるということを表していたのではないかと思っています。

そういった意味では未年となる来年2015年は、新たな時代の萌芽は芽生えつつあるものの、もう少し次の時代のために耐え忍び、かつ善悪を試される年になるものとみています。 それは未年の未という字が、木の梢の成長途中の未熟な枝を示す象形文字からきていることからもわかります。 羊の悪に染まることは容易いのですが、安易な道に逸れては人としての本質を見失うだけ。 そういったことにも注意していきたいですね。

あと羊の性格からいえば、従順で温和、情に厚く親切、争いや対立を嫌うことから、対人関係においては良好な年になるでしょう。 反面、羊の優しい性格から、優柔不断になったり頼み事を断れずに却って面倒に巻き込まれたり、という事態に陥りがちです。 態度、言動をはっきりとし、曖昧にして物事を見失うようなことのないよう、後ろめたい行動や言動を慎み、公明正大に事を行っていけばよい年となるのではないでしょうか。

◯クヌム神

クヌムはエジプトの雄羊の神のなかで最も有力なもののひとつであり、ナイルと生命の誕生に関わりを持っていた。
クヌムがナイルやそれによって運ばれる肥沃な土壌と関わりを持っていたことはおそらく、この神がすべての生物を轆轤の上で成形した陶工として描かれるようになった一因と言えるだろう。 その創造の能力の結果、そして雄羊の擬声語―「バァ」―が生物の霊的側面を表す単語(バァ)に似ていたために、クヌムはラーのバァとみなされた。
クヌムは雄羊の頭部を持ち、短いキルトと3つの房に分かれた長い鬘をつける神という、なかば人間の姿で最も頻繁に表現された。
この神は本来、エジプトで飼育された羊の最初の種(Ovis longipes)の水平に波打つ角を持つ姿だったが、時が経つにつれて別の雄羊(Ovis platyra、「アムンの雄羊」)の短く湾曲した角を持つ姿でも表されるようになり、頭上にこれら二対の角を持つ場合もある。


◯アメン神

新王国時代の首都、テーベ(現在のルクソール)の主神で、他所で信仰されていた太陽神ラーと習合してアメン・ラーとなりました。
ファラオの名前で◯◯アメン、アメン◯◯という名前は、この神の名前を付けています(例:アメンヘテプ、ツタンカーメン、アメンエムハト)。頭上に2枚の鳥の羽を付けた冠をかぶっているのが特徴です。
時にはアモンと呼ばれることもあります。ルクソールのカルナック神殿はアメン神のために建設されました。
余談ですが、アメン神はギリシャ、ローマではアンモンと呼ばれていました。そう、アンモニアやアンモナイトの語源になっているのです。
なぜかと言うと、アメン神はしばしば羊の姿で描かれます。その角の形がアンモナイトの巻き方に似ているためだそうです。
また、アンモニアは羊の糞から作られていました。なんとなくこじ付けのような気もしますが…。
因みにアメンヘテプとは、「アメン神は満足する」という意味で、ツタンカーメンは「アメン神の生ける姿」、アメンエムハトは「支配者アメン神」という意味です。


◯アメン神の神獣・羊の頭をもつスフィンクス(カルナック神殿)

エジプトにおけるスフィンクスは、ネメスと呼ばれる頭巾を付けたファラオ(王)の顔とライオンの体を持つ、神聖な存在である。王者の象徴である顎鬚をつけ、敵を打破する力、あるいは王または神を守護するシンボルとされている。古王国時代には既に存在し、神格化したファラオと百獣の王であるライオンを重ね合わせたものと考えられている。 スフィンクスの種類には複数あり、男性も女性もいる。動物や鳥の頭部を持つものも見受けられる。 最も有名で大きなスフィンクス像は、古王国時代のギザの大スフィンクスである。中王国以降は、最高神アモンの聖獣である雄羊の頭部を持つスフィンクスが、神殿の守護者として神殿前面に置かれた。

未のことわざ

 

羊は偶蹄目ウシ科の哺乳類で、ヤギに似ていますが、先祖は別のものと考えられています。角は渦巻形で、角のない種類もあり、細く柔らかいちぢれた毛が全身に密生しています。草食性で、性質は温和。常に群れをつくる習性があります。  羊は、毛や乳、肉や皮を供給する家畜として、古くから世界各地で飼われていたそうです。そのため、ことわざにも弱いものの代名詞のように登場しますが、貨幣が普及する前の大陸では、貴重な財産として富の象徴でもありました。

◯牛羊(ごよう)の目をもって、他人を評量するなかれ

牛や羊のような目から見て他の者の悪口を言ってはいけない、自分の基準で他人を批判してはいけないという訓え。(出典:沙石集)

◯群羊を駆りて猛虎を攻む

力の弱い者も集合すれば強力になる。

◯千羊の皮は一狐の腋(えき)に如(し)かず

羊の毛皮を千枚そろえても高価な狐の脇から取れるひとつまみの毛に及ばないことから、多くの凡人が集まっても1人の賢者にはかなわないたとえ。

◯多岐亡羊(たきぼうよう)

=亡羊乃嘆

◯屠所(としょ)の羊

屠所とは屠殺場、自分の置かれている状況を知らない者のたとえ。

◯羊の皮をかぶった狼

外見は非常におとなしいが、本性はその逆である。

◯羊に虎の皮を着せたよう

弱い者が強がったり、愚かな者が利口ぶること。

◯羊の食い破り

相場の大波乱。

◯羊を以(も)って牛を易(か)う

小さいものを大きいものの代用にすること。

◯ひつじ雲が出ると翌日雨

低気圧が近づくと、ひつじ雲が出る。

◯亡羊乃嘆(ぼうようのたん)

枝分かれの多い道へ逃げこんだ羊を見失った故事から、選択肢が多いと迷いが多く目的を見失いやすい、また学問の道の複雑さや難しさたとえられる。(出典:列子)

◯羊頭狗肉(ようとうくにく)

羊の頭を看板にして実際には犬の肉を売っているということから、見かけと中身が一致しないこと。また見かけに騙されるなという訓え。

未のお話し

◯頭のいいヒツジ

モンゴルの昔話
むかしむかし、モンゴルのある草原に、頭は良いのですが、年を取って体が弱った為に捨てられたヒツジがいました。
 そこへ腹ぺこオオカミがやってきて、ヒツジにもったいぶった様子で尋ねました。 「やあ、こんにちは。ヒツジくん、今日はいい天気だね。・・・ところできみは、名前は何という名前だい?」
 するとヒツジは、少しもあわてた様子を見せずに、こう言いました。 「わたしは、大頭のトンジ王さ」
「ふーん、『大頭のトンジ王』とは、立派な名前だね。ところで君の頭に乗っている立派な角は、何に使うんだい?」
「これは天の神からさずかった武器で、悪いオオカミが来たら、この角で突き殺してしまうんだ」
「ええっ!」
 びっくりしたオオカミは、 (これは、逃げた方がいいかもしれないぞ) と、思いましたが、でも、相手はしょせんは年寄りのヒツジだと思って、他の質問をしました。 「ところで君は、なぜ、そんなにモコモコした毛をしているんだい? そこまでモコモコしていたら、邪魔だろう?」
 するとヒツジは、オオカミにニヤリと笑って、 「ああ、実はこの毛は、塩の固まりなのさ。オオカミの肉を食べる時に、この塩で味付けをするんだよ。・・・ああ、そろそろお腹が空いてきたな。ちょうど目の前にオオカミがいることだし、今からお昼ご飯にするかな」
 これを聞いたオオカミは、すっかり恐くなって逃げ出したという事です。


◯三匹の子ヒツジとオオカミ

フランスの昔話
むかしむかし、オオカミが歩いていると、向こうから黒い子ヒツジと赤い子ヒツジと白い子ヒツジが歩いてきました。
(しめしめ、うまそうな子ヒツジだ)  オオカミは、急いで道ばたのしげみに隠れました。
 そんな事とは知らない三匹は、オオカミの隠れているしげみに近づいてきました。
 そしてオオカミは、三匹の前に飛び出したのです。 「ジャジャーン! さあ、今からお前たちを食べてやるぞ。覚悟しろ!」
 子ヒツジたちはびっくりです。 「助けてー! ぼくを食べないで。食べるなら、白い子ヒツジを食べてよ」 と、黒い子ヒツジが、言いました。
「よし、わかった。白い子ヒツジ、お前から食べてやるぞ」
「助けてー! ぼくを食べないで。食べるなら、赤い子ヒツジを食べてよ」 と、白い子ヒツジが、言いました。
「よし、わかった。赤い子ヒツジ、お前から食べてやるぞ」
 すると赤い子ヒツジが、言いました。 「助けてー! ぼくたちは、これから町の市場へ行くの。おいしいおかしを、オオカミさんにも買ってくるから、ぼくたちを食べないで」
 それを聞いて、オオカミは考えました。 「うーん。おいしいおかしか。なるほど、それじゃ急いで行ってきな。だが、おれのおかしを忘れたら、三匹とも食べてしまうからな」
 命拾いした三匹の子ヒツジたちは、ほっとして町の市場へ行きました。
 市場で三匹は、お金がなくなるまでおかしを買って食べました。  そしてオオカミのために残しておいたおかしも、帰り道にみんな食べてしまったのです。
「おう、やっと帰ってきたか」  三匹の子ヒツジを見て、オオカミがかけてきました。
 でも、三匹ともおかしを持っていません。
「おい、おれのおかしはどうした?」  オオカミが、怖い顔で言いました。
「ごめんね。ちゃんと買ってきたけど、帰り道、みんなで食べちゃったんだ」  赤い子ヒツジが言いました。
「そうか。よし、それなら、お前たちを食べてやるからな」  オオカミが大きな口を開けると、黒い子ヒツジが言いました。
「ぼくたち、オオカミさんに食べられても仕方ないけど、食べる前に、はしばみの実をとってくるといいよ」
「そうだよ。はしばみの実と一緒に食べると、ぼくたち、とってもおいしいよ」  白い子ヒツジが言いました。
「そうか。それもそうだな」  オオカミは、急いではしばみの実を取りに行きました。
 その間に三匹は家に逃げ込んで、家のまわりをとげのいっぱいついた木で取り囲みました。  そして暖炉火をつけて、どんどんまきをくべました。
 しばらくすると、オオカミがやってきました。 「おい、早く戸を開けてくれ。はしばみの実を、どっさり取ってきたぞ」
「わかった。でも、戸のカギが壊れてしまったんだ。悪いけど、煙突から入ってくれない」
「そうか、煙突からだな」  オオカミは屋根に登ると、煙突に飛び込みました。
 そのとたん、暖炉の火が、どっと燃え上がりました。 「あっ、あつ、あつ、助けてくれー!」
 こうしてオオカミは大やけどをして、どこかへ逃げていきました。 「よかったね」
 三匹は顔を見合わせて、にっこり笑いました。


◯ヒツジの始まり

リビアの昔話
リビアでは、世界で最初に生まれた人間は、魔法を使う女の人だと言われています。  
この女の人が他の人間や家畜を作ったので、みんなは彼女の事を最初のお母さんと呼んで慕っていました。

 ある日の事、最初のお母さんが土を練って、四本足の新しい動物を作りました。
 形が出来上がると、最初のお母さんはその動物を麦のもみがらの中に入れました。
 すると動物の体にはもみがらがたくさんついて、それはやがて綿毛になりました。
 最初のお母さんは、同じ動物を全部で四匹作りました。
 二匹はオスで、二匹はメスです。  やがて魔法の力でその動物に魂が吹き込まれると、四匹の動物たちは『メエー、メエー』と、鳴き始めました。

「あの『メエー、メエー』と鳴くのは、いったい何だろう?」
 人間たちは最初のお母さんが何を作ったのかを知りたくて、頭の良いアリに調べてくれるように頼みました。
 最初のお母さんの家へ行ったアリは、その生き物がヒツジいう名前で、その肉はとても美味しく、その毛からは糸が出来ることを教えてくれました。 「美味しい肉に、糸が出来る毛か」
 人間たちはアリの話を聞いているうちに、そのヒツジがどうしても欲しくなりました。  そこで自分たちが畑をたがやして作った麦をたくさん持って行き、最初のお母さんに頼みました。 「最初のお母さん、どうかこの麦とヒツジと交換してください」
「ええ、いいですよ。大切に育ててくださいね」  こうして人間は、ヒツジを手に入れました。
 これが、物々交換の始まりです。

 ヒツジを手に入れた人間はヒツジを上手に育てて、その数をどんどん増やしていきました。
 おかげで人間は美味しいヒツジの肉をお腹いっぱい食べられるようになり、毛をつむいで糸にして美しい布を織る事も出来るようになりました。
 ところで、ヒツジたちは普通の動物と同じ様に、歳をとれば老いて死んでしまいますが、でも最初のお母さんが一番初めに作った一匹だけは、いつまでたっても若いままで決して死ぬ事がありませんでした。

 ある日、その初めの一匹は、高い山のてっぺんへ登っていきました。
 そして山のてっぺんでうろうろしていると、山の向こうから昇ってきた太陽が初めのヒツジの頭にぴたりとくっついてしまったのです。
 それから初めのヒツジは太陽を頭に乗せたまま、東から西へと散歩するようになりました。
 今でも太陽が東から昇って西に沈むのは、初めのヒツジが頭に太陽を乗せたまま散歩しているからだと言われています。


◯万里のヒツジ

中国の昔話
むかしむかし、中国にアイダンという、とてもとんちの出来る男がいました。
 アイダンは、ある事情から旦那のおかみさんを殺してしまいました。  そのおかみさんが、死んで天国行きか地獄行きかを決める閻魔庁へやって来ると、自分はアイダンに殺されたから、アイダンを罰して欲しいと閻魔大王に訴えたのです。
 閻魔大王が閻魔帳を調べてみると、確かにアイダンがおかみさんを殺した犯人でした。  そこで閻魔大王は部下の白鬼と黒鬼に、アイダンを連れて来るようにと命令したのです。
 二人の鬼が地上のアイダンの家までやってくると、アイダンは涼しい顔で言いました。 「これはこれは、閻魔さまのご命令とあらば、喜んでお供しましょう。ですが、ちょうどヒツジの舌を料理していたところです。行くのは、こいつを食べてからではいけませんかね?」
 ヒツジの舌の料理と言うば、地獄でもごちそうです。  鬼たちは、舌なめずりをしながら言いました。 「ヒツジの舌の料理か。それはうまそうだな。よし、待ってやってもいいが、おれたちにも食べさせてくれないか?」
 それを聞いたアイダンは、しめたとばかりにこう言いました。 「もちろん、ごちそういたしますよ。ただ、あなた方のような偉いお方と、わたしの様なただの人間が一緒に食事をするなんて、もったいないことです。・・・そうだ、あなた方は外へ出て、あの小窓から舌だけを出してくださいよ。わたしがこっち側から料理を食べさせてあげましょう」
 そこで鬼たちはアイダンの言うように、小窓から舌を突き出しました。  するとアイダンは大きなハサミを持ってきて、二人の鬼の舌を、チョキン、チョキンと切ってしまったのです。
「うぎゃーーーー!」 「あいたたたっー!」  舌を切られた鬼たちは、大声で泣きわめきながら、地獄へと帰って行きました。

 さて、鬼たちがひどい目にあって帰ってきたのを見て、閻魔大王は自分でアイダンを捕まえることにしました。
 千里の馬にまたがって地獄から地上のアイダンの家までやって来た閻魔大王は、恐ろしい声でこう言いました。
「大悪党のアイダンめ! 人殺しをした上に、よくもわしの家来どもをひどい目にあわせてくれたな! さあ、わしと一緒に閻魔庁へ来るのだ!」
 するとアイダンは、奥から一頭のヒツジを連れて出てきました。 「何だ? そのヒツジを、一体どういうつもりなのだ?」
 閻魔大王に聞かれて、アイダンは自慢げに言いました。 「はい。閻魔さまは千里の馬に乗っておいでなので、わたしはこの万里のヒツジに乗ってお供しようと思いまして」 「なに? 万里のヒツジだと?」
「そうです。閻魔さまの千里の馬よりも十倍速く走れる、万里のヒツジです」
 それを聞いた閻魔大王は、アイダンのヒツジが欲しくなって、自分の馬と取り替えてくれないかと言いました。
「まあ、閻魔さまのお願いとあれば、取り替えても構いませんよ。でもこの万里のヒツジは、主人のわたしの言う事しか聞きません。・・・でもまあ、ヒツジは頭が悪いので、閻魔さまがわたしの服を着れば、ヒツジも勘違いして言う事を聞くかもしれませんが」
「そうか、それなら服を取り替えてやるから、お前の着物をよこせ」
 こうして二人は着物を取り替えて、アイダンは閻魔大王の服を着て千里の馬に、閻魔大王はアイダンの服を着て万里のヒツジにまたがりました。
 そしてアイダンは千里の馬で飛ぶように閻魔庁へ向かいますが、ところが、閻魔大王の乗る万里のヒツジは、当然ながらちっとも速く走りません。
 閻魔大王の服を着て千里の馬に乗ったアイダンは、閻魔庁までやって来ると、出迎えに来た鬼たちにこう言いました。
「そのうち、極悪人のアイダンがヒツジに乗ってやって来るだろう。もし来たら捕まえてこらしめてやれ!」

 やがて、ヒツジに乗って本物の閻魔大王が閻魔庁にやって来ましたが、閻魔大王はアイダンの服を着ているので、鬼たちには本物の閻魔大王とわかりません。
「閻魔さまの言うように、アイダンがヒツジに乗ってやって来たぞ! それ、こらしめてしまえ!」
 こうして閻魔大王は自分の家来に半殺しの目にあわされて、二度と閻魔庁には帰ってきませんでした。
 そしてアイダンは、閻魔大王として閻魔で幸せに暮らしたと言うことです。


◯ヒツジに生まれ変わった娘

中国の昔話
 むかしむかし、中国の役人に、ケイソクという人がいました。
 彼には一人娘がいて、目に入れても痛くないほど可愛がっていたのですが、可哀想な事に、娘は十歳の時に死んでしまったのです。
 それから二年ほどが過ぎたある日、ケイソクがお客さんにふるまうために市場からヒツジを買ってきてつないでおくと、その夜、母親の夢枕に死んだ娘が現れたのです。
 娘が身につけている青い着物に青い玉のかんざしは、娘が死ぬ前に着ていた衣装です。
 娘は、母親に言いました。 「お母さん、お久しぶりです。  わたしはお父さんやお母さんに可愛がってもらって、本当に幸せでした。  でも、その思い上がりからか、わたしは親に黙って色々物を勝手に使ったり、人にあげたりしました。  盗みではありませんが、その罪を償う前にわたしは死んでしまいました。  そして神さまに、その罪は生きている間に償わなければならないと言われました。  わたしは今、ヒツジに生まれ変わっており、その時の罪を今日償うことになりました。  お客さんにふるまうために買ってこられたヒツジの中に、毛が青白いヒツジがいますが、それがわたしです。  寿命で死ぬのは仕方ありませんが、殺されるのは嫌です。  怖いです。  お母さん、どうか、わたしを助けてください」
 目を覚ました母親はびっくりして、さっそく調理場に行ってみると、白いヒツジに混じって毛の青白いヒツジが一頭いるではありませんか。

 毛の青白いヒツジは母親と目が合うと、悲しそうに涙をこぼしました。 (このヒツジが、娘なのだわ!)
 母親はあわてて、調理人を呼びつけて 「このヒツジを殺すのは待ってちょうだい! 主人は出かけて留守ですが、今から探しに行って、主人に事情を話して殺すのは許してやるつもりです」 と、言いました。
 やがて母親と入れ違いに父親が出先から帰ってくると、宴の料理が遅れているのに気が付きました。 「何をしている。料理が遅れているではないか!」
 叱られた調理人たちは、 「ですが、奥さまがヒツジを殺すなとおっしゃったのです。ご主人さまがお帰りになったら、事情を話して、殺すのは許すつもりだと」
と、言いましたが、父親はすっかり腹を立てて、 「ヒツジを許す? 何を馬鹿な事を。お客さまが待っているのだぞ。さあ、早く仕事をすすめるのだ」
と、言うので、調理人たちは仕方なく、ヒツジを料理するために天井から吊り下げました。  そこへ客人たちがやってきて、料理されようとしているヒツジを見てびっくりしました。  客人の目にはそれがヒツジではなく、十歳ばかりの可愛らしい女の子を、髪に縄をつけてぶら下げているように見えたからです。
 しかもその女の子は、悲しげな顔をして、 「わたしはこの家の主の娘でしたが、ヒツジに生まれかわり、殺されようとしています。どうか皆さま、命をお助けくださいませ」 と、言うではありませんか。
 そこで客人たちは口々に、 「何て事だ。料理人よ、決してヒツジを殺してはなりませんぞ。はやく主人に言って、やめさせなければ」 と、あわてて出ていきました。
 けれど調理人には、つるしているのがどう見てもヒツジにしか見えませんし、その声も、ただのヒツジの鳴き声に聞こえるのです。 「奥さまも、お客さまも、おかしな人たちだ。さあ、はやく料理をしないと、ご主人さまに叱られてしまう」
 料理人はそう言うと、涙を流すヒツジを殺して、さまざまな料理を作りました。
 やがて客人の前に美味しそうなヒツジ料理が並べられましたが、客人たちは一口も箸をつけずに帰ってしまいました。
「おや? どうして料理を食べないのだろう?」
 遅れてやって来た主人が、不思議に思って客人にわけを聞くと、 「あれほど探していたのに、あなたは今までどこへ行っていたのですか? あのヒツジは、あなたの娘さんの生まれ変わりなのですよ」 と、いうではありませんか。
 ちょうどそこへやってきた母親は、料理されたヒツジを見て泣き崩れました。
 やがて母親から事情を聞いた主人は、悲しみの余り病気になり、そのまま死んでしまったそうです。


◯毛をかられるヒツジ

ある人が、ヒツジの毛を下手くそに刈っていると、ヒツジが言いました。
「あなた、もしわたしの毛が欲しいのなら、もっと、浅く刈って下さい。もしわたしの肉が欲しいのなら、一気に殺して下さい。とにかく、チョコチョコと突いたり、引っ張ったりして、いじめるのは止めて下さいよ」

 このお話しは、仕事の下手くそな人に聞かせる話です。


◯不思議な白いヒツジたち

中国の昔話
むかしむかし、あるところに、とても貧しい農民の一家がいました。
 農民は地主から畑を借りて作物を育てていましたが、畑を貸してもらっている代わりに取れた作物の半分を地主に取られるので、いくら働いても貧乏なままです。

 そこで貧しい農民は地主に畑を返すと、山奥の荒地に自分たちの畑を作りました。
 山奥の荒地は地主の物ではないので取れた作物を地主に取られることはありませんが、でも山奥では獣たちに毎晩の様に畑を荒らされますし、人を襲うトラやオオカミもいるので毎日がおびえながらの生活でした。

 そんなある夜の事、家の娘が畑の見張りをしていると、どこからか真っ白なヒツジの群れがやって来て畑を荒らし始めたのです。
「大変! みんな起きて!」
 娘の言葉に家族が飛び起きると、今もたくさんのヒツジたちが畑を荒らしています。
「このままでは、せっかくの畑が台無しになってしまう」
 家族は手に棒を持ってヒツジたちを捕まえようとしましたが、ヒツジたちは畑を荒らすだけ荒らし回ると山の中へと消えてしまいました。

 翌朝、家族は荒らされた畑を少しでも直そうと畑へ行きました。
 すると不思議な事に、ヒツジたちに荒らされた畑の作物が、とても元気に育っていたのです。 「これは、どういう事だろう?」
 その次の夜も、そのまた次の夜も、どこからか白いヒツジたちが現れて畑を荒らしましたが、でもそのたびに作物は大きく育っていったのです。
 おかげで荒地を耕しただけの農民の畑からは、地主の立派な畑の何倍もの作物が取れたのです。

 さて、この不思議な話は農民たちの間で有名になり、意地悪な地主の耳にも届きました。
「よし、おれの畑もそのヒツジたちに荒らしてもらって、もっと作物が取れるようにしてやろう」
 地主は山奥の一家の畑を高い値段で買い取ると、その畑から自分の家の畑につながる長い柵を作りました。
 そして地主は夜になると、いつもの様に現れたヒツジたちを自分の畑へと追い込みました。 「それ! 不思議なヒツジたちよ。おれの畑を存分に荒らしてくれ!」
 地主はヒツジたちに荒らされていく自分の畑を見て、ニヤリと笑いました。 「これで明日になれば、おれの畑の作物はよく育っているだろう」
 翌日、地主がニコニコしながら畑にやって来ると畑は昨日の荒らされたままで、おまけにその年からその畑に何を植えても作物が育つ事はなかったのです。
 その後、地主から高い値段で畑を買い取ってもらった貧乏な農民は、そのお金で商売を始めてお金持ちになりました。  一方、ヒツジたちに畑を荒らされて作物が育たなくなった地主は貧乏になり、やがてその土地を捨ててどこか遠くへ行ってしまったそうです。


◯羊不爛山(ようふらんざん)

中国の昔話
むかしむかし、ある高い山に広成子という名前の仙人が住んでいて、遠くから訪ねて来る仲間のためにヒツジの肉の煮物を作って待っているという伝説がありました。

 ある日の事、都から偉い役人がやって来て、この伝説を耳にすると自分も山でヒツジの肉の煮物を作ってみたくなりました。
 そこで麓の村でヒツジの肉と薪(まき)を用意して、召使いと一緒に山へ登って行きました。
 そして料理の準備に持ってきた薪に火をつけましたが、薪はくすぶるだけで火はなかなかつきません。
「おかしいな。薪が湿っているのかな?」
 それでも頑張って火をつけると、鍋に入れたヒツジの肉をぐつぐつとゆで始めました。

 それから数時間後、煮込んだヒツジの肉を食べようと役人が鍋のふたを取ってみると、不思議な事にヒツジの肉は生のままでした。
「おかしいな。高い山の上だから、煮込むのに時間がかかるのかな?」
 そこで役人はさらに数時間煮込んでみましたが、鍋のふたを取ってみると、やっぱりヒツジの肉は生のままです。
「仕方ない。今日はあきらめよう」
 役人は近くのお寺に行くと、一晩泊めてもらうことにしました。
 そして役人がお坊さんに今日の事を話してみると、お坊さんはこう教えてくれたのです。 「この山でヒツジを煮るには、仙人が使う仙火と言う物が必要だそうです。
 しかし、仙火を使わずに運良く三日以内にヒツジが煮えて食べる事が出来たなら、その者は仙人と同じ不老の体になれると言われています」
「おおっ、不老の体に!」
 それを聞いた役人は召使いと頑張って、ヒツジの肉を三日の間、煮続けました。
 けれど三日後、役人が鍋のふたを取ってみると、やっぱりヒツジの肉は生のままだったのです。
「そう簡単には、不老の体にはなれぬか」
 役人はあきらめると、山を下りて都に帰って行きました。

 やがてこの話が広まり、人々はその山の事を『羊不爛山(ようふらんざん)』と呼ぶようになりました。
 羊不爛山とは、ヒツジが煮えない山という意味だそうです。


◯焼けただれた小ヒツジ

アイルランドの昔話
むかしむかし、アイルランドに下水道がなかった時代、アイルランドの人々は洗い物などに使った汚い水を、家の窓から家の外に投げ捨てていました。
 そして投げ捨てるときに、アイルランドの人々は、 「水に注意しろ!」 と、叫んでから、汚い水を投げ捨てるのです。
 これは、もちろん人にかからないようにする為ですが、実は人以外にも、辺りをうろついている亡霊たちに水をかけないようにする為だと言われています。
 この当時、亡霊たちに水をかけると、かけた人は必ず不幸になると言われていました。

 さて、暗い夜の事、ある女の人が、煮え湯を道に投げ捨てようとしました。
 本当なら『水に注意しろ!』と、言わなくてはいけないのですが、ま夜中だった事と、あたりに人の気配はなかったために、女の人は何も言わずに煮え湯を投げ捨てたのです。
 すると、暗闇から、 「ギャーーー!」 と、いう叫び声がして、誰かが苦しんでいるようなうめき声がしました。
「大変!」  女の人はあわてて外へ出ましたが、でも、そこには誰もいなくて、先ほどまいた煮え湯が水たまりになって湯気をあげていました。
「変ねえ? 気のせいかしら?」  女の人は首を傾げながら、家に帰っていきました。
 ところが次の日の夜、誰かが家の扉を叩きました。  トントン、トントン
「あら? こんな夜更けに、誰だろう?」  女の人が扉を開けてみると、何とそこには、背中が赤く焼けただれた子ヒツジが立っていたのです。
 子ヒツジはよろよろと家の中に入って来ると、暖炉の前でばったりと倒れて死んでしまいました。
(これはきっと、煮え湯で火傷をした亡霊が、ヒツジの姿で現れてきたのだわ!)  そう思った女の人は、子ヒツジをていねいに葬ってやりました。
 けれども、次の夜も、その次の夜も、火傷をした子ヒツジが現れて、苦しみながら死んでいくのです。
 怖くなった女の人は町の人々に相談して、都から司祭さまを呼んでお祈りをしてもらいました。
 するとお祈りが神さまに届いたのか、その日から子ヒツジが現れる事はなくなりました。
 その後、子ヒツジの墓を掘り返してみると、棺の中は空っぽだったそうです。


◯百匹のヒツジ

ドイツの昔話
むかしむかし、ある村に、ヒツジを百匹飼っている大金持ちと、ヒツジが三匹だけのまずしい家が、となり同士でくらしていました。
 ある日まずしい家の息子は、三匹のヒツジに草をたくさん食べさせてもらうために、大金持ちの牧場へ働きに出ました。
 そうして、何日かたったある日のこと。
 お城の王さまがヒツジの肉を食べたいので、村から連れてくるよう家来に命じました。
 王さまの命令でも、大金持ちの主人は自分の百匹のヒツジが一匹でもへるのをいやがって、まずしい家の息子のヒツジをさしだすように言いました。
 息子は一匹を、泣きながら王さまの家来に渡しました。
 すると王さまは一週間もたたないうちに、もう一匹ヒツジを連れてくるようにと命令したのです。
 今度もまた大金持ちの主人は、まずしい家のヒツジをさしだすように言いつけました。
 こうしてまずしい家では、ヒツジを二匹もとられたのです。
 息子は残った一匹のヒツジを連れて、旅に出ることにしました。
 そのことを知った息子のお父さんは、自分も息子を探しに旅に出ました。
 お父さんは、お日さまにたずねました。 「お日さま。あなたは私の息子を知りませんか?」
 お日さまは、気のどくそうにこう言いました。 「このところ雲(くも)にかくされていましたから、何も見ることができなかったんですよ。でも、もうすぐつむじ風が来るから、聞いてごらんなさい」
 お父さんは大きな木に登り、枝にしっかりつかまってつむじ風を待ちました。
 つむじ風が来ると、お父さんはさけびました。 「つむじ風さん、ヒツジを連れた息子を知りませんか?」
 つむじ風は、ピューピューふきあれながら、 「ああ、知ってるぜ。連れて行ってやろう」
 つむじ風はお父さんをつまみあげ、息子とヒツジがいる深い谷底へ連れて行きました。
 お父さんと息子は、また会えたことを抱き合って喜びました。
 そのようすを、神さまと弟子が見ていました。
 神さまと弟子は、お父さんと息子の心を見てみようと、旅人の姿になって近づいて行きました。
「もし、もし・・・」  ボロボロの服を着た二人の旅人が声をかけると、お父さんと息子はすぐに目をさましました。
「はい。なんでしょうか?」
「私たちは長いこと旅を続けてきて、おなかがペコペコでたおれそうです。そのヒツジの肉を食べさせてもらえないでしょうか?」
 旅人の言葉に、お父さんと息子はうなずきました。
 二人の旅人は、 「おいしい。おいしい」 と、ヒツジの肉をたくさん食べました。
 旅人の一人が、お父さんと息子に言いました。 「どうもごちそうさまでした。今夜ねる前に、私たちの食べ残した骨を、ヒツジの皮の中にいれておいてください」
 お父さんと息子は首をかしげながらも、言うとおりにしました。
 次の日の朝、二人が目を覚ますと昨日の旅人たちはおらず、かわりにヒツジが何百頭もいたのです。
 おまけに、ヒツジたちを守る立派な番犬が、三匹もいました。 「わあ、すごいや。お父さん、数えきれないくらいのヒツジがいるよ」
 お父さんも大喜びです。
 そして、一匹のヒツジの角に、 《昨日はごちそうさまでした。おれいに、このヒツジたちをあなた方にさしあげましょう》 と、書かれているではありませんか。
 お父さんと息子は、たくさんのヒツジを連れて家に帰りました。
 そして、広い広い牧場を買いました。
 それを見た大金持ちはすぐに飛んで来て、どうしてこうなれたのかたずねました。
 お父さんと息子が、ボロボロの服を着た旅人のことを話すと、大金持ちは町へ走って行きました。
 そして、ボロボロの服を着て、くらしにこまっていそうな人を見ると、 「ごちそうしてやる。うちへ来い!」 と、家に連れてきたのです。
 それから、牧場にいたヒツジを全部殺して、ボロボロの服を着た人たちに食べさせました。
 大金持ちは、それを見てニヤニヤ笑いながら、 「よしよし、これだけのヒツジを食べさせりゃあ、朝には千匹。いや一万匹のヒツジに変わっているだろう! わしは世界一のヒツジ持ちになれるぞ!」
 そうして、おなかいっぱいになったボロボロの服を着た人たちが次々に眠ると、大金持ちは大急ぎで何千本もの骨をひろい集め、どんどんヒツジの皮の中にいれました。
 さて、朝になってニワトリがないたので、大金持ちはいそいで牧場へ走って行きました。
「ウヒヒヒ。牧場には一万匹のヒツジがいるはずだ」
 ところが牧場にいるのは、大いびきのボロボロの服を着た人たちと、ヒツジの皮に入れられた骨だけです。
「・・・なんてこった! こんなはずでは・・・」
 あまりのショックに、大金持ちは気を失ってしまいました。


◯満腹したオオカミとヒツジ

 食べ物を充分食べて満腹したオオカミが、地面に倒れているヒツジを見ました。
「こいつは、オオカミが来たので、怖さのあまり倒れたのだな」 と、思ったオオカミは、側へ寄って、
「心配するな」 と、なぐさめてやりました。
 そして、 「もし、お前が本当の事を三つ言ったら、わたしはお前を見逃してやろう」 と、約束しました。
 するとヒツジは、 「まず第1に、わたしはあなたに会わずに済めば良かったと思っています。  2番目には、せめてあなたが目の見えないオオカミだったら良かったのにと思っています。  そして、3つ目の本当の事は……」
 ヒツジは深呼吸すると、、思い切り大きな声で、 「嫌なオオカミめ!  あんたたちなんか、みんなひどい目にあって死んでしまえばいい。  なぜって、わたしたちが何も悪い事をしないのに、あんたたちはわたしたちをいじめて、なぶり殺しにするのだもの」
「・・・・・・!」
 オオカミは少し腹が立ちましたが、ヒツジが言った事は本当だと認めて見逃してやりました。

 真実は、敵に対してさえも効き目があるという事を、このお話しは教えています。


◯青い煙のヒツジ

フランスの昔話
 むかしむかし、ピレネー山脈の山の中に、おじいさんのヒツジ飼いが住んでいました。
 おじいさんは夕方なると、あちこちで草を食べているヒツジたちを、みんな呼び集めなければならないので、とても大忙しです。
 もし、ヒツジを山に残したままにすると、夜の間にオオカミに襲われてしまうからです。
「さあ、早くこっちへ来るんだ」  おじいさんはムチを振り上げて命令しますが、ヒツジたちは、なかなか言う事をききません。
「何をしている! こっちへ来ないか」  いくらどなっても、ヒツジたちは知らん顔で草を食べています。

 すると、これを見ていた妖精が、おじいさんをこう言いました。
「おじいさん。この棒をかまどの火に入れて、立ち上る青い煙で好きな物の姿を描いてごらんなさい。それが、きっとヒツジを呼び集めてくれるでしょう。そうすれば、おじいさんは、のんびりと星空をながめていられるでしょう」
 おじいさんは、さっそく妖精がくれた棒をかまどに入れました。
 そして立ち上る青い煙の中で棒を動かして、若いヒツジ飼いを描きました。
 その若いヒツジ飼いは王子のように上品で、羽の付いたぼうしをかぶり、まっ赤なマントを着ています。
 おじいさんは、その若いヒツジ飼いに頼みました。 「どうか、ヒツジたちを呼んで来ておくれ」
 若いヒツジ飼いは角笛を吹くと、動かないヒツジたちにムチを振りましたが、ヒツジは草を食べるのに夢中で見向きもしません。 「・・・若い奴では駄目か」
 しょんぼりと戻ってきた若いヒツジ飼いを、おじいさんは棒の先でなでて消しました。 「よし。今度は番犬にしよう」
 おじいさんは青い煙で、今度は大きな犬を描きました。 「さあ番犬よ。ヒツジたちを呼んで来ておくれ」
「ワンワン!」  番犬は、風の様に走りまわりました。
「おっ、今度はうまく行くかな?」
 おじいさんが見ていると、番犬に吠えられたヒツジは草を食べるのを止めましたが、でも番犬を怖がって動こうとしません。
「・・・番犬では駄目か」
 おじいさんは、番犬も棒の先でなでて消しました。
「番犬が駄目なら、オオカミはどうだろう?」  おじいさんがオオカミを描くと、オオカミは鋭く、 「ウォーーーーン!」 と、吠えました。
 そのオオカミの声を聞いたヒツジたちは、びっくりして逃げ出しました。
「そうそう、その調子だ。そうやって、ヒツジを一頭残らず連れてきておくれ」
 おじさんは、今度こそはと期待しましたが、オオカミはヒツジを連れてくるどころか、逃げるヒツジを捕まえては食べ始めました。
「・・・オオカミでは駄目か」  おじいさんはがっかりして、オオカミも消しました。
「ああ、若いヒツジ飼いも、番犬も、オオカミも、どれも役に立たなかった」
 おじいさんは、もう一度かまどの前に座って考えました。
「これまでは、力ずくでヒツジを集めようとしたけど駄目だった。北風と太陽の話にあるように、力ずくではなく、相手の気持ちになって考えれば、うまく行くかもしれんぞ」
 おじいさんは、今度は年寄りのヒツジを一頭描きました。
「年寄りは話し上手なはず。年寄りのヒツジさんよ、どうかわしのヒツジたちに、面白い話をしてやってくれないか?」
「メェーー」  年寄りのヒツジは、静かにうなずきました。
 もう体が弱っているので、遠くまで歩く事が出来ません。  そこで近くの野原にうずくまると、ぽつりぽつりと話し始めました。
「これは、わしが若かった頃に聞いた話しだが・・・」
 すると、どうでしょう。  まもなく十頭、二十頭、三十頭と、ヒツジたちが残らず年寄りのヒツジのまわりに集まり、そのおもしろい話に耳を傾ける様になりました。

 その日から、夕暮れになるといつも年寄りヒツジのまわりにヒツジたちが集まってきます。
 おかげで、おじいさんは星空をのんびりながめていられるようになりました。

ヒツジのキャラクター

◯ひつじのショーン

イギリスのストップモーションアニメ。
羊たちのリーダー的存在。

◯マイスウィートピアノ

マイメロの友達

◯フィーフィー

キティちゃんの友達

◯こひつじのダニー

映画「わが心にかくも愛しき」に登場するこひつじ

◯トラウジー

スティッチのいとこ(試作品360号)

◯ライオンのランバートの母ひつじ

ディズニー短編アニメ【優しきライオン・ランバート】
ライオンのランバートの母ひつじ。 コウノトリの勘違いで育てることになった。

◯あんしんセエメエ

【安心生命】のキャラクター CMでもおなじみ。

◯ひつじのしつじくん

ドコモの「iコンシェル」と「しゃべってコンシェル」のキャラクター

◯らむりん

しまじろうの友達… 彼女はフランスに引っ越してしまったのでもう会えません。

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